3次元CADで設計のクオリティが改善。設計と製造現場との対話もスムーズにPDMで生産管理との連携強化へ

株式会社東京自働機械製作所

株式会社東京自働機械製作所は、たばこ包装機をはじめ、菓子用、電子メディア用など多彩な包装機械を中心に開発・製造・販売する専門メーカーである。優れた開発技術により高効率かつ環境にも優しい包装機、充填機などを生み出してきた。同社の設計部門は2005年に大塚商会を通じて3次元CADを導入。今では新規開発機種の100%を3次元で設計する。2次元CADに比べて計画図から部品図を作成する際のミスと工数が激減し、また製造現場との対話向上にも一役かっている。3次元CADと生産管理システムの情報連携も視野に入れている。

本ページは大塚商会が発行している「成功事例集2010(製造業編)」から転載したものです。

包装サイズ・包装スピード・包材など顧客のあらゆるニーズに対応した付加価値の高い上包機を製造している

導入事例の概要

導入の狙い

  • 設計品質の改善
  • 顧客に提供するデータ形式に対応した3次元CADシステムの導入
  • 設計部門と製造部門のデータ共有

導入システム

  • 3次元CAD『Autodesk Inventor』
  • 電気CAD『AutoCAD Electrical』
  • PDM『ENOVIA SmarTeam』
  • HP SANストレージシステム『EVA』

導入効果

  • 3次元CAD導入をきっかけに作業効率向上となるようなルールに刷新
  • 新規3次元で作成した加工図面にアイソメ図を載せたことで製造現場の理解が深まった
  • ストレージの冗長化によって安定したシステム運用を実現

包装機械の専門メーカー安全や環境対策にも積極的

株式会社東京自働機械製作所(以下、東京自働機械製作所)は、包装機械を中心に、充填機、箱詰機、ベーラー(圧縮梱包機)などの幅広い機械を 開発・製造・販売する専門メーカーだ。

1944年に島根工業株式会社として創業。1949年に現社名に変更し、1963年には東証2部上場を果たしている。

同社の主力製品は、たばこ包装機をはじめとする包装機械。たばこやお菓子の箱の表面を包むセロファン(透明フィルム)や包み紙などを自動的に包装する機械である。1952年に「W2セロファン包装機」の第1号を完成し、翌々年の東京発明展において東京都知事賞・通産大臣賞を受賞するなど、早くから優れた技術開発力を発揮してきた。日本専売公社(現JT)と共同でたばこ包装機を開発し、現在でも全国のたばこ工場で同社の機械が活躍している。

その技術を多彩な分野に展開し、現在ではキャラメルやチョコレートなどを包むフィルム、菓子折りなど名産品・贈答品の紙包み、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどのポリエチレン包装、さらにはCD、DVDなどのフィルム包装にいたるまで、同社の包装機はさまざまな分野で利用されている。

このほか、コーヒーや洗剤などの粉体を容器に詰める充填機や商品を自動的に箱詰めするカートナー(箱詰機)など、包装機で培ったテクノロジを応用して、幅広い機械を開発している。

海外メーカーとの技術提携を通じて世界の先進技術を積極的に取り入れ、包装品質やコスト効率、稼働スピードなど、日本のユーザの厳しい要求に適 合する技術にカスタマイズして提供。たゆまぬ努力が実を結び、1996年には日本の包装機メーカーとしていち早くISO9001(品質マネジメントの国 際規格)の認証を取得した。国内だけでなく、海外への製品供給にも力を入れている。

東京自働機械製作所は、社会的責任のある企業として、早くから環境問題にも積極的に取り組んでいる。古紙やアルミを圧縮梱包するベーラーは、す でに30年以上も製造しており、資源リサイクル分野で貢献。

また、コーヒーやココア、粉ミルクなどの食品に直接触れる充填機は、製品の安全性を確保するために、HACCP(ハサップ、食品の安全性の確保と品 質管理の高度化に資する手法)に対応した機種を設計している。

「店頭陳列品へのいたずら防止など食品メーカー様のニ-ズに応え、虫などの混入を防ぐ密封技術など、当社の包装機械にはさまざまな最先端テクノ ロジが盛り込まれています」と語るのは、常務取締役 柏工場 工場長 兼 設計開発部 部長の成田 行生氏。

東京自働機械製作所のもう一つの大きな特長として、製造工程は製品の組立だけでなく、部品製作も自社工場で行っていること。設計開発部 次長の信田 清氏は、「コストを考慮して購入品(調達部品)も使用していますが、お客様の要求に合わせた特注部品を自社製造できる一貫受注体制は、当社の 大きな強みです」と強調する。

常務取締役 柏工場 工場長 兼 設計開発部 部長 成田 行生氏

「2次元から3次元CADへの転換という時代の要請に応え、全社的な入れ替えを決断しました。3次元は工数が多く、使いこな すのは大変ですが、より精度の高い図面を2次元並みの速さで描き上げられるように、効率化を推進しています」

設計開発部 次長 信田 清氏

「3次元CADの普及を目指しても、自社だけではどうにもならない部分が多いものです。そこを補ってくれる大塚商会さんのサポートには本当に感謝しています」

過去の3次元CAD導入の失敗を踏まえ、再度3次元への転換を図る

包装機械が包む商品は、たばこから菓子折り、CD、DVDのパッケージまで大きさも形状もさまざまだ。そのため、顧客ごと、製品ごとの仕様に合わせて ベースマシンをカスタマイズする受注生産が大半である

しかも、機械1台当たりの部品構成は平均2,000~3,000点、多いものは10,000点にも及ぶ。設計図面も1台当たり1,000~2,000枚と膨大だ。

東京自働機械製作所では、メカニカル設計も電気設計も全て自社の設計部門が行い、合わせて約80人の設計者が活躍。従業員294人の約3割 が設計者という強力な布陣だ。

従来、同社は2次元CADで設計を行っていたが、2005年に3次元に移行することを決定した。そもそものきっかけは、ある大口顧客から『Autodesk Inventor』(以下、『Inventor』)のフォーマットによるデータ納品を求められたことにあった。

しかも従来使用していた2次元CADの開発もメーカー側の都合で終了目前となっていたため、これを機に全社の設計システムを『Inventor』に刷新 することにした。

「実は、2001年ごろにも3次元CADへの移行を試みたのですが、設計者が使い方に慣れず、とん挫した経緯がありました。しかし、2次元から3 次元への転換が時代の流れでもあったことを踏まえ、全ての設計者が3次元を使いこなす体制作りに再チャレンジしたのです」と信田氏は振り返る。

そこで2005年に『Inventor』導入に向けての準備委員会を設立。同7月にプロジェクトチームを発足し、導入から社内普及までのプログラムやルール 作りを行った。

同チームは、ベンダーとして長年取引関係にある大塚商会を選定。大塚商会を通じて『Inventor』と『ACE』ライセンスを一気に導入した。

運用ルールの変さらによって作業効率を飛躍的に改善

設計開発部は、かつての失敗の反省を踏まえ、今度こそ3次元CADを定着させるべく変革を試みた。

まず、社内の設計者から3次元CADの教育担当者として10名任命し、教育用の部屋を準備。新機種を設計する際には3次元設計で行うことが義務付け られた。もともと新機種設計には設計者がローテーションで取り組む体制を取っているため、時間の経過と共に3次元設計者が増加。今では新規開発機 種は全て『Autodesk Inventor』で行い、設計者全員が3次元CADを使いこなせるまでになった。また、従来機種の型替え部品設計の約50%も3次元設計に移行している。設計開発部 設計1課 課長の前田 啓一氏は、「設計者の中には、3次元CADに慣れてしまうと2次元CADには戻れないという人もいます」と語る。

前田氏は続けて、「3次元CADを使いこなすには、設計手法を大きく変えなければなりません。しかも工数は2次元よりも3次元のほうが格段に多く なります。いかに3次元CADを使って、効率的な設計をするかについて試行錯誤を重ねました」と語る。

特に大掛かりに変更したのが、設計データの運用ルールだ。従来、東京自働機械製作所では、図面を各包装機、充填機など機種系列ごとに縦割りで管理していた。

そのため、同じ調達部品でも機種ごとに品番が異なるといった不合理が生じていた。そこで、機種の垣根を取り払って部品を共通化することに決定。  また、かつては機種や設計者ごとに図面番号を振り、同じ番号の図面が重複することがあったが、自動採番方式の導入によって問題を回避し、図番による図面検索をスピードアップした。

図面の枠に機種名を記入するルールをなくし、どの機種でも同じ図面を利用できるようにするなど、さまざまな工夫を凝らしている。

共通化によって、同じ部品を設計する無駄が削減された。

柏工場 課長 新生産管理プロジェクト リーダー 佐藤 聖司氏

「大塚商会さんには、CADに限らず、あらゆるシステムについて有益な提案をしていただき、非常に助かっています。今後もさまざまな提案やアフターメンテナンスの充実を期待しています」

設計開発部 設計1課 課長 前田 啓一氏

「デザインレビュー時に構想図が立体的に表現されるため、誰にでも理解しやすくなったのは大きな効果です。おかげで製造現場や営業からの設計に対する意見も活発になりました」

デザインレビューで製造現場からの意見も活発化

『Inventor』の導入は、設計と製造現場とのコミュニケーション強化にも一役かっている。

「デザインレビュー時に設計イメージが誰にでも把握しやすくなったお陰で、製造現場や営業からの意見も多くなりました」と設計開発部の前田氏はその効果を語る。

また、柏工場 課長 新生産管理プロジェクトリーダーの佐藤 聖司氏は、「『Inventor』で作成された図面のアイソメ図を載せたことで、部品形状のイメージが分かりやすくなりました。試験的に、製造現場の大画面プロジェクタに3次元モデルを投影してみたこともありますが、製造現場のスタッフからは『非常に分かりやすい』と評判でした」と語る。一方、営業サイドからも、顧客に対して営業活動の際に機械の説明がしやすくなったと好評だ。

現在では『Autodesk Inventor』のライセンスを増やし、設計者全員が3次元設計をできるようになっている

今後は、設計データを生産管理システムと連携させることも大きなテーマだ。3次元モデルの強力な管理と設計情報の管理及び『Inventor』と『ACE』 からの部品表作成など設計効率向上のために、東京自働機械製作所は2008年2月、大塚商会を通じてPDM(製品データ管理)システム『ENOVIA SmarTeam 』を導入した。同社は2010年6月に生産管理システムの刷新を予定しており、その時点でPDMによる設計業務と生産管理業務のデータ 連携が実現する予定である。

また、設計および設計データ管理システムのより安全な運用を目指して、HP SANストレージシステム『EVA』も大塚商会を通じて導入した。

「従来はサーバ一体型システムでデータ管理を行っていたのですが、バックアップをより確実に行い、作動停止のトラブルを抑えるためにはストレージによる冗長化が不可欠だと考えました」と信田氏は説明する。

3次元CADの導入によって、今後新たな試みに取り組む可能性も広がっている。

佐藤氏は、「一つのアイデアですが、お客様が補修部品を注文しやすいように、パーツリストで使用していた写真を3次元モデルに変更するこ ともできるかもしれません。写真に比べて形状が分かりやすく、特定しやすいので、納品ミスを減らせるはずです」と語る。

また前田氏は、「部品の原価データを『ENOVIA SmarTeam』に蓄積しておけば、設計をしながら自動的に積算することも可能になるはずです」と指 摘。将来、自動積算システムを実現する道筋も見えてきた。

現在導入している電気CAD『AutoCAD Electrical』にて電気制御設計の効率化をさらに進め、今後は、課題である「エレメカ連携」も推進する考えだ。

設計・製造向けのエンジニアソリューションで定評のある大塚商会の万全のサポートによって、東京自働機械製作所のものづくりの底力と合理性は着実に向上しているようだ。

信田氏は、「3次元CADだけでなく、当社のさまざまなシステムの構築・運用に対して、大塚商会さんから力強い支援をいただいています。今後も、お 互いにメリットが感じられるお付き合いを続けていきたいですね」と期待を込めた。

株式会社東京自働機械製作所

業種生産設備製造
事業内容一般各種自動包装機械、たばこ製造・包装機械、圧縮梱包機、組立機などの開発・設計・製造・販売
従業員294名(2009年3月現在)
サイトhttp://www.tam-tokyo.co.jp/