SolidWorks Enterprise PDMを導入することで、BCPを運用できる設計環境が実現しました

株式会社サキコーポレーション

株式会社サキコーポレーション

株式会社サキコーポレーションは、2006年のSolidWorksの試験導入を皮切りに設計の3D化を推進、2011年8月にはSolidWorks Enterprise PDMを導入、さらなる業務効率の向上を図っている。技術部設計課 牛田 靖彦氏に、SolidWorks製品の活用方法と導入効果を伺った。

株式会社サキコーポレーション

サキコーポレーションについて教えてください。

株式会社サキコーポレーションは実装基板自動外観検査装置およびX線自動検査装置の開発/製造/販売を行う会社です。
実装基板の外観検査装置において、それまでの常識を覆す検査スピードを実現し、創業1994年ながら世界各地で多くのお客様にご活用いただいております。

従来の2次元検査装置では検査が不可能であった部品下部、内部の自動検査を可能とする3次元X線検査装置「BF-X1」を2010年に開発し、顧客の高い要求にこたえる企業です。

インライン3次元X線検査装置写真

インライン3次元X線検査装置
「BF-X2」(BF-X1の後継機)

設計から製造、マニュアルでSolidWorks製品をフル活用

サキコーポレーションのSolidWorks製品の導入状況、活用状況を教えてください。

2006年秋にSolidWorks 2007を3本試験導入し、現在、8本保有しています。SolidWorks Enterprise PDMは2011年8月から本格稼働をさせ、 CAD Editor8本と承認用にContributorを1本導入しています。弊社では設計から製造、マニュアルの挿し絵までフルに活用しています。

3DCADの中でSolidWorksを選定された理由を教えてください。

2DCADと違い、フィーチャーエラーの解決にスキルが必要とのことでしたので、エラーを解決支援してくれる「フィーチャーエキスパート」という機能が決め手でした。また普及率の高い3DCADですので、購入品の3DCADデータの入手に困らないというのも一つの理由です。

  • 3次元X線検査装置 「BF-X2」のSolidWorksデータ画面

    3次元X線検査装置「BF-X2」のSolidWorksデータ

  • SolidWorksで作成した「BF-X2」マニュアルの挿し絵

    SolidWorksで作成した「BF-X2」マニュアルの挿し絵

SolidWorksとの親和性の良さにさまざまなメリットを感じ、
SolidWorks Enterprise PDMを導入

次にSolidWorks Enterprise PDM(以後、Enterprise PDMと表記)について伺います。選定された理由を詳しく教えてください。

実はEnterprise PDMを導入する前に他社製のPDMを4年間使用していました。当時PDMを導入する際にはEnterprise PDMも検討したのですが、当時のバージョンでは当社のやりたいことが実現できなかったこともあり、結局、その時は別のPDMを選びました。

数年前に海外で設計する機会があり、その際に問題になったのがデータの管理です。海外からPDMにアクセスすることも試しましたが、実用に耐えられるスピードではなかったため、ローカルで作業せざるを得ない状況でした。
それによりPDMの外で作られ、更新されていったデータを電子データとして管理する場合、どうしても設計者任せになり、 PDM内に全てのデータがないといったことや、ファイルが見つからず合致エラーが発生することがありました。また共通パーツを参照したくても別のファイルを参照してしまうなど、同じ物が複数存在といったことが発生してしまいました。

そこで将来を見据え、情報収集を行っていた中、Enterprise PDMが複数拠点での設計ソリューションを提供していることが分かり、また機能的にも使えそうだということで入れ替えを決めました。

他社PDMシステムから乗り換えるにあたり、ポイントは何だったのでしょうか?

以前のPDMはLAN内でしかパフォーマンスを発揮できていませんでした。一度データセンターにPDMサーバを置いたことがあるのですが、とても使えるスピードではありませんでした。

結果、社内にサーバを置いて運用していたのですが、2011年3月に東日本大震災が起きたことで、停電などの電力の不安定な状況への対応、物理的なデータの安全性から、データを管理・運用する仕組みを見直しなさい、という指示が会社としてありました。また、本社以外の拠点でPDMサーバをバックアップから再度立ち上げ、設計を継続していくには数日かかることが、バージョンアップした際に既に分かっていたので、BCPの観点から、以前より調査をしていたEnterprise PDMを検証することになったわけです。

検証にはどれくらいの時間がかかりましたか?

大塚商会様のご協力もあり、検証バージョンをすぐにご用意していただきました。
以前のPDMで使用している用語とEnterprise PDMの用語が違うことで戸惑うことはありましたが、こちらからの質問に対し迅速な対応など、きめ細やかなサポートをしていただき、同じことが実現できるかどうかの検証には2週間もかかりませんでした。

Enterprise PDM選定にあたり、どのあたりを重視しましたか?

第一は複数拠点での設計環境の実現です。Enterprise PDMには複数拠点間でデータの同期が取れる機能がありますし、DBサーバが遠隔地にあっても、速度的には不満が出ないであろうと判断しました。第二に、SolidWorks純正のシステムですので、バージョンの追従性がよいことが挙げられます。第三に各種設定、例えば属性項目の変更といった設定がGUIでできるため、使う上で非常に敷居が低いことです。プログラミングの知識がなくても、習得する時間があまり取れずとも、設計者自身で構築することができる点は優れているポイントです。

最後にもう一つ、実現できていなかった図面の電子化や電子承認が可能である、と判断できたことです。これら詳細な機能検討と、経費削減や効率化といった、考えられるメリットを明確にしたことで、約1か月半という短い期間で導入を実行できました。

Enterprise PDMの導入により、BCPを実行できる設計環境を実現

Enterprise PDM導入の効果を教えてください。

1.東日本大震災後に会社として掲げたBCPを実行できる設計環境の実現

まずSolidWorksについてはノート型のワークステーションで運用しており、災害発生など有事の際にはノートを持ち出すことで事業継続が可能となります。またEnterprise PDMでは各事業所間(東京・京都)で設計データの同期を図ることができ、外出時でもノートPCからサーバにアクセスが可能になりました。

2.以前のPDMでの課題が解消され、業務効率が向上

DXF・PDFファイルの自動生成により、承認業務のシステム化を実現できました。またLAN内でしかできなかった設計データの一元管理については、WAN環境においても実現できました。技術部ではEnterprise PDMの導入により、操作性・データの同期・承認作業での効率が上がり、資材部では図面のファイリング、スキャニングにて効率が上がっています。
まだ「○%効率が上がった」「コストが○%削減できた」という詳細な効果測定まではできていませんが、何よりも設計者が日常の作業で感じていた煩わしさが解消されたということが、一番大きかったのではないかと思っています。

DXF・PDFファイルの自動生成画面

DXF・PDFファイルの自動生成により承認業務のシステム化を実現

今後のビジョン

今後のビジョンをお聞かせください。

現在、複数の拠点にサーバを置き、Enterprise PDMを運用しておりますが、海外にも拠点を展開し、生産を行っているため、ゆくゆくは海外の拠点にもサーバを置き、EnterprisePDMを運用していくことを考えています。
また製品の品質向上のため、構造解析の活用についても考えています。

サキコーポレーションの複数拠点間でのSolidWorks Enterprise PDMの運用イメージ

サキコーポレーションの複数拠点間でのSolidWorks Enterprise PDMの運用イメージ

アーカイブサーバ=物理ファイル(モデル/図面/ドキュメント)
DBサーバ=メタデータ(部品名/部品番号/材料/リビジョン)