SolidWorksでマクロを組むことにより設計が半自動化し、年間700万のコスト削減をすることができました

株式会社今西製作所

株式会社今西製作所

広島市の今西製作所は、自動車メーカーの組立用溶接治具製造が主力。業務上、ハイエンド3次元CADはほとんどの種類を導入しているという同社だが、メインツールはSolidWorksだという。ハイエンドCADとSolidWorksをうまく組み合わせ、自動車メーカーからの高い品質水準を満たしながらもコストダウンを図る同社を訪問、詳しく伺った。(写真中央:代表取締役社長 今西寛文氏 左:装置技術部 設計グループ 担当次長 小野和義氏 右:型技術部 設計グループ 課長 下野光博氏)

今西製作所について ~自動車生産ラインの溶接治具メーカー

今西製作所の業態をお聞かせください。

今西製作所は主に車体組立用溶接治具・装置、鋳造用金型、試作用プレス金型、樹脂成形用金型、各種鋳造品などを製造する設備用具メーカーです。

自動車ボディーのASSY(組立)ラインの溶接治具が売上げの5割を占めます。地元広島のマツダ株式会社様を始め、主要自動車メーカーと取引を行っています。売上高は33億円(2008年3月期)、社員は132名です。

創業は1921年で、もともとは鋳造用木型のメーカーでした。近年は型と鋳物技術に最新のデジタル技術を取り入れ、関連技術分野で独自の技術を開発しています。

ボディー製造ラインの溶接治具

ボディー製造ラインの溶接治具

例えば、3次元CADデータから紙を積層し立体モデルを成形するLOM (Laminated Object Manufacturing) 技術と独自の精密鋳造技術を組合わせることにより、複雑形状の精密鋳造品をわずか数日で完成させています。この技術は、中空で複雑形状のマニホールドなどの自動車部品をはじめ、産業機械、医療分野など幅広く活用されています。

ハイエンドCADとSolidWorksを併用

今西製作所ではSolidWorksをどのように活用していますか。

各自動車メーカーとの取引の関係上、当社ではほとんどのハイエンドCADを保有しており、合わせて40台以上あります。しかしメインツールにしているのはハイエンドCADではなくSolidWorksで、27ライセンスを製品設計に活用しています。先ほどご紹介したLOMのデータ作成も SolidWorksで行います。また、SolidWorks Simulation1本を治具の強度解析に使っています。

なぜハイエンドCADではなく、SolidWorksのようなミドルレンジCADを設計のメインツールとして使うのでしょうか。

たしかに、主要取引先の使用するハイエンドCADに自社のツールを合わせるという選択肢もありますが、高額なハイエンドCADの台数を揃えれば大きな負担になってしまいます。

そこで、今西製作所ではメインツールとしてSolidWorksを使い、必要に応じてハイエンドCADで補完するという「使い分け」を行っています。

溶接治具は、一から自由曲面を書き起こすというわけではなく、ボディのほんの一部だけを固定するための器具ですから、ハイエンドの機能は必ずしも全て必要ではなく、SolidWorksの機能で十分に満たすことが出来ます。ただし、ボディーの面データは、大きなものは2メートル以上ありますので SolidWorksでは取り込みが困難な場合もあります。そこでハイエンドCADを使って取り込みを行い、SolidWorksのデータに変換して設計作業を行っています。

このように使い分けをすることにより、ハイエンドCADをメインツールにした場合に比べて、ランニングコスト(保守料)は半分から3分の1以下に圧縮できています。

「複数のCADの使い分けによってランニングコストを下げることができます」今西社長

今西社長

「複数のCADの使い分けによってランニングコストを下げることができます」

溶接治具の製造の流れ

溶接治具の受注から製造までの流れを教えてください。

受注後はまずお客様(自動車メーカー)からIGES形式のデータを受け取ります。お客様によって仕様や加工基準が決まっているので、データと合わせてそれらの情報の提供も受けます。

受け取ったIGESデータをSolidWorksのデータに変換し、モデリングを開始します。ボディー部分は車の品質に大きく影響するところですから、治具の部品の位置指定など、かなり詳細な指示になります。

仕様通りにモデリングを行った後はお客様に仮承認を取ります。出来上がったSolidWorksデータをIGES形式に再度変換し、紙図と共にお渡しします。確認後、修正が必要な場合はここで行います。完成後は分解図を作成、チェックして出図し、CAM用データにして工場に送り、部品加工を行います。

(左)SolidWorksによるモデリング (右)完成した治具

(左)SolidWorksによるモデリング (右)完成した治具

SolidWorksを導入した理由

今西製作所が3次元CADを使い始めたのはいつですか。

1988年です。最初に導入したのはマツダ株式会社様が開発したCADでした、それ以来約20年以上にわたり、あらゆる種類のCADを使ってきました。SolidWorks導入の直前にはそれぞれの部署で違う種類のCADを使っていました。

SolidWorksを選んだ理由を教えてください。

大きな受注に対応したり業務の効率化を図るためにCADを統一する必要性が出てきました。本来ならば当時使っていた二つのCADのどちらかに統一するのが合理的ですが、あいにく両CADとも開発が終了してしまっていたため今後使い続けることができず、新たにメインツールを選び直すことになりました。

ミッドレンジCAD3種類が候補に挙がり、熟考した結果、以下の理由でSolidWorksに決定しました。

1.操作性がよいこと。

他のCADは英語が中心で分かりにくかったのに対し、SolidWorksは日本語メニューがあり、操作のやり方も平易でした。

2.コストパフォーマンスが良いこと。

特に、同価格帯の製品と比べて、サーフェス機能が優れていました。

3.将来性があること。

途中で開発が止まって使えなくなってしまうのでは困るので、将来性の見極めは大事でした。その点SolidWorksは当時からどんどんシェアが大きくなっていて将来性があると感じました。

SolidWorksの導入で大変だったことはありますか。

当社にとっては全く新たなCADで、基本のデータベースが何もなかったため、一から作り上げていくことが大変でした。また、取りこんでみて初めて、思った以上にデータが重くて動かなかったということが分かりました。そこで部分的に分けて何回も取りこんだり、他のハイエンドCADに一度取りこんでまた変換するなど業務に最も合った方法を確立するまでには試行錯誤して多くの時間を使いました。実際に業務ができるようになるまでに半年ぐらいかかりました。

「CADの開発が終了してしまうと困るので、将来性を見極めて製品選びをしました」下野氏

下野氏

「CADの開発が終了してしまうと困るので、将来性を見極めて製品選びをしました」

SolidWorksの導入効果~マクロプログラムで700万のコスト削減を実現

SolidWorksの導入効果をお聞かせください。

SolidWorksを導入しての主な効果は以下二つです。

1.マクロプログラムによる設計作業の半自動化が実現したこと。

当社では現在、「2倍の効率化」を目標にさまざまな業務効率化の施策を行っています。その一環が機械操作の無人化です。自社のプログラマーが SolidWorksでマクロプログラムを組み、既に50あまりのプログラムが完成しています。これにより昨年度は稼働時間を1700時間(全体の約5%)短縮、金額にして700万以上のコストカットが実現しました。旧CADではマクロは組めませんでしたので、SolidWorksならではの大きな導入効果と言えると思います。

2.強度解析による仕様の最適化が可能になったこと。

SolidWorks Simulationの強度解析によって、治具が最適な仕様になっているかどうかを解析できるので、過剰品質にならずにコストダウンにつながっています。また、装置の安全率についてもお客様に数値で報告ができるので信頼性も上がりました。解析ソフトはいろいろありますが、SolidWorks Simulationのようなアドインツールはインターフェイスも共通で、操作も同じであるところがよいと思います。

「マクロプログラムによって大きなコスト削減をすることができます」 小野氏

小野氏

「マクロプログラムによって大きなコスト削減をすることができます」

大塚商会への評価

大塚商会への評価をお聞かせください。

大塚商会とのご縁は、営業訪問から始まったと記憶しています。そのうち「こういう良いツールがあります」とSolidWorksを紹介してもらいました。その後ソリューション展に行ってみて、いろんな商品を扱っているのに驚きました。豊富な知識でいろんな提案をしてくれるのがよいと思います。現在は SolidWorksに加えてセキュリティや社内LANなどについても相談しています。

大塚商会のサポートの「たよれーる」は非常に便利です。これまで使っていたハイエンドCADでは、電話は朝10時から夕方5時まで、昼は休憩でつながらないなどサポート時間が短かったのですが、「たよれーる」は夜7時までで、さらに土曜も対応してくれます。私たちの仕事は土日の工事が多いので、土曜に作業をしていて操作が分からないときに電話してすぐにつながるのはとても助かります。

また、リモートサポートもいいですね。オペレーターの方にこちらの画面を見てもらいながらやっていただけるので、口で説明したり、データを送ったりすることもせず、どこがトラブルなのかを正確に見てもらうことができます。

今後の展望

今後の展望をお聞かせください。

今西製作所では、今後さらに「2倍の生産効率」が実現する基盤作りをし、その上でお客様により満足していただける提案をしていく「提案型企業」を目指しています。そのためには設計のメインツールもさらに使いこなしていく必要があるでしょう。SolidWorksおよび大塚商会には今後もお世話になることと思いますが、どうぞよろしくお願いします。