シンプルなモデリング操作と解析時間の大幅な短縮により、環境エンジニアリングの付加価値を向上

パナソニック環境エンジニアリング株式会社

業種
建設業
事業内容
空調システム、クリーンシステム、大気浄化・脱臭・除塵、水処理・給排水システム、半導体・キーデバイス関連プラント、廃棄物処理設備、土壌地下水汚染対策、エネルギー、環境建築、道路換気、農畜産関連の調査・分析・提案・設計・施工・監理・メンテナンス
従業員数
510名(2013年3月現在)
サイト
http://panasonic.co.jp/es/peseseng/

導入事例の概要

各種建築物や工場・プラントの環境エンジニアリングを行うパナソニック環境エンジニアリング株式会社。同社のファサード設計セクションでは、建物の外壁に太陽光発電や壁面緑化、ガラスファサードなどの幅広い商材を提案し、地球にやさしく快適な室内環境の創造を実現している。そこで重要になるのが設置効果を事前に解析することだ。しかし、従来の解析ソフトには操作性、処理時間、3次元化、可視化における課題が山積していた。そこで長年の取引がある大塚商会を通じて解析ソフトを導入し、高付加価値な環境エンジニアリングを実現した。

幅広い商材を組み合わせ解析結果付きでトータル提案

1976年に松下精工株式会社から分離独立し、数回の事業統合の末、現在のパナソニック環境エンジニアリング株式会社(以下、パナソニック環境エンジニアリング)となった同社は「地球環境とお客様の生産環境を護る」という創業以来の信念のもと「水・空気・土」の浄化・供給・リサイクル対策や創エネ、省エネを軸とした「エネルギーマネジメント」などトータルに環境対策を支援している。

現在、建設業の市場は東京五輪開催に向けて着々とプロジェクトが動き始めており、一時の不況を脱して活気を取り戻している。一方で地球温暖化や異常気象の問題、東日本大震災後に日本中が直面したエネルギー不足の経験から社会全体が環境保全やエネルギー問題への関心を急速に高めている。そのため、建物のエネルギーマネジメントの提案設計を担うパナソニック環境エンジニアリングが果たす役割はますます大きくなっている。

パナソニック環境エンジニアリングの特徴はパナソニックというメーカーでありながらも、自社に工場を持たないエンジニアリング企業であることだ。例えば、今回システムを導入したファサード設計セクションでは太陽光発電、壁面緑化、ガラスファサード、トップライト、テラコッタルーバーなどメーカーを問わずさまざまな商材を組み合わせて、病院や駅などの各種建築物や工場・プラントなどに向けて提供している。これにより、建物の外観を構成する主要な立面に対して最適なエネルギーマネジメントをトータルにワンストップで提案設計することができる。

設計グループ ファサード設計セクション 設計チーフの後藤浩之氏は「さまざまな商材をトータルに提案できることに加えて、シミュレーションまで行うのが当社のPRポイントです。普通は解析の専門会社に依頼すべきところですが、当社ではサービスとしてシミュレーションを行い、この商材を組み合わせれば室内環境がこう良くなるといった提案を行っています。」と語る。

パナソニック環境エンジニアリングでは、設計事務所やゼネコンから依頼を受けると建物の立面のどの位置に窓を付けた方がよいかといった提案設計から始める。「トップライトへの気流を考えると空気はここで流した方がいいですよとか、ルーバーがあるから熱還流率の高いLow-E複層ガラスでなく、コストの安いノーマルな複層ガラスが適正ですよといった提案から基本設計、実施設計へと進めさせてもらっています。」シミュレーションに基づいた確かな提案力はパナソニック環境エンジニアリングの大きなアドバンテージとなっている。

設計グループ ファサード設計セクション 設計チーフ 後藤浩之氏 「『解析結果を使用することで施主に設計内容を説明しやすくなった。』というお客様の声が嬉しいですね。モデリングするのが楽しく、部下とモデリングの取り合いになっています。」

設計グループ ファサード設計セクション 設計チーフ 後藤浩之氏

「『解析結果を使用することで施主に設計内容を説明しやすくなった。』というお客様の声が嬉しいですね。モデリングするのが楽しく、部下とモデリングの取り合いになっています。」

解析ソフトの操作性、処理時間、3次元化、可視化が課題に

パナソニック環境エンジニアリングでは、こうしたシミュレーションを行うために従来は座標を数値入力するタイプの解析ソフトを利用していた。ここで問題となっていたのが操作技術の専門知識があるオペレーターしか解析ソフトを使用できないことだった。後藤氏は「操作には専任のオペレーターが必要でモデリングと解析を行うために、およそ1週間もの時間がかかっていました。」と語る。初代の専任オペレーターが退社した際には、操作技術の専門知識が多く引き継ぎがなかなか上手くいかなかったという経緯があるそうだ。

また、解析に時間がかかり一度実行すると終了するまで確認ができず、やり直しが発生するたびに膨大な時間を費やしていた。「このシステムでは2次元でも座標データを入力するのが大変なのに、3次元になるとさらに困難を極めます。また、出力データが数値のためビジュアルに可視化できず、チェックしづらいという難点がありました。」

気流・流体シミュレーションソフト FlowDesignerはシンプルな操作でモデリング操作がしやすく、解析速度も非常に速い

気流・流体シミュレーションソフト FlowDesignerはシンプルな操作でモデリング操作がしやすく、解析速度も非常に速い

このように従来の解析システムには、操作性、処理時間、3次元化、可視化などさまざまな課題を抱えており、これらの課題を解決することで、より付加価値の高い情報を顧客に提供し、関係を深めていきたいという狙いがあった。そこで、同社のCADソフトを全面刷新したときから取引のある大塚商会に相談したところ、シンプルな操作で気流解析や温熱解析が行える気流・流体シミュレーションソフト「FlowDesigner」を紹介された。

「最初のデモンストレーションで画面を見せてもらい、作業の内容を教えてもらった上ですごく扱いやすいと実感しました。」と第一印象を語る。FlowDesignerはこれまで専門家にしかできなかった本格的な気流シミュレーションを一般の設計技術者が日常業務の中で活用することを可能にした純国産のソフトだ。目視できない風の流れや温度分布を科学技術解析により可視化できる。マウス操作を中心としたモデリング操作は初めての人でも半日程度の実習で操作を取得できるという特徴を持つ。

パナソニック環境エンジニアリングでは、製品の選定にあたってさまざまな解析ソフトを比較検討。その中でも圧倒的な操作性を有し次の世代への引き継ぎやすさ、営業サービスの一環として活用可能なコストパフォーマンスがあるFlowDesignerの採用を決定。大塚商会から2011年3月に2ライセンスを導入した。長年の取引で技術的に困ったことがあれば何でも相談できる信頼関係を築けていたことも大塚商会を選んだポイントとなった。

高付加価値なシミュレーションで受注につながる確率アップ

FlowDesignerのモデリング操作の習得は初回講習と初級・中級講習を受けたほかは、全て実地のみで操作を身につけていくことができた。日射の設定や物性登録などの初期設定以外にはほとんどサポートに問い合わせることもなかったという。「操作の習得に苦労したという感覚はありません。それよりもモデリングが面白くて仕方がありません。パーツを組み合わせて線を引っ張ると立体になり、まるでプラモデルを作っているかのように夢中になってしまいます。つい詳細部分にまで凝ってしまいモデル規模が大きくなり過ぎて、PCが動かなった経験があるほどです。」と後藤氏は笑う。

気流の流れを時間軸のアニメーションで分かりやすく表現。高付加価値なシミュレーションの提供が可能になった

気流の流れを時間軸のアニメーションで分かりやすく表現。高付加価値なシミュレーションの提供が可能になった

FlowDesignerの導入により、モデリングおよび解析にかかる時間は従来の1週間から1、2日へと大幅に短縮できた。「モデリングのしやすさはもちろん、解析速度がこれまでと全然違います。従来は座標を数値入力していたので、数字を読み取りながら解析していたのに対し、今回はモデルの中で解析するので非常に速いです。また、定常と非定常に解析モードが分かれていて、時間に応じて解析の粒度を変えられるのが素晴らしい。時間がないときは定常モードで解析すれば10分で済むこともあり、ルーバーを付け足すとどうなるかといったシミュレーションも3次元で素早く行えます」。条件変更も容易にできるため、複数の解析モデルの比較・検討がスピーディーかつ容易に実現できるようになった。

「設計事務所のお客様には現状の設計に対して、西日対策や輻射熱対策のメリットをルーバーの有無など3次元によるシミュレーションで比較表を作成し提出しています。すると施主に対して設計のメリットを説明しやすくなったと非常に喜ばれました。この結果、受注につながったり当社のリピーターになってもらえたり、別の担当の方からもどんどん話が舞い込んでくるようにもなりました。」とその波及効果を語る。

FlowDesignerの非定常モードでは、気流の流れを時間軸のアニメーションで分かりやすく表現でき、PCの画面で見せるとその表現力に驚かれることも多いそうだ。解析結果は決して100%の精度ではないが、設計の指針となったりステークホルダーの理解を得やすくなったりするのは大きい。パナソニック環境エンジニアリングでは、高付加価値なシミュレーションを提供できるようになったことで設計コンペなどの案件数が急激に増加すると共に、商材の受注につながる確度も着実に向上しているそうだ。

機能バージョンアップ、技術的なサポートに期待

設計段階はもちろんのこと、竣工済み物件に対してのシミュレーションを行うこともある。「竣工済み物件を解析し、その結果を建築事務所に提供することもあります。解析結果は『環境に配慮している物件です』というPRにもなるのです。」また、FlowDesignerに関してバージョンアップサポートを大塚商会と結んでおり、年に2、3回のバージョンアップにも対応している。導入時のバージョン8から、現在はバージョン11に上がり機能面での拡充もされている。「しかし、立面に斜面やRが入ってくるとデータ量の問題からメッシュを細かく切れず、まだ弱いと感じる部分があるので今後の機能バージョンアップに期待しています。」と後藤氏。

今後の同社の課題としては、内装部分を含めたシミュレーションを行うことだ。「ブラインドやカーテン、ファンコイルの有無などで換気や採光が変わり、気流や輻射熱に影響してきます。内装部分も加味してシミュレーションしていかないと本当の意味で正確な解析結果は得られないのです。」ファサードの外部環境だけでなく、内部環境を含めて解析ソフトで対応可能な範囲は無限に広がっている。そんなとき、技術的な相談に対応してくれる大塚商会の存在は大きい。「大塚商会さんは『急いでいるが何とかならないだろうか』と相談しても好意的に対応してくれたりと、通常のサポートの枠を超えた人間関係ができています。これから私たちが新しいことを始めようとするときも、ITパートナーとしてぜひお力添えをいただきたいです。」と後藤氏は大塚商会への厚い信頼を語る。