BIM未来図 施工図作成会社のいま(上)「BIMの価値」最大限に発揮

手軽な支援ツールを提供

ゼネコンのBIM導入が進展する中、施工図作成会社がBIMを足がかりに、業容拡大へと向かう流れが出てきた。創業22年目のM&Ftecnica(東京都江東区)は、その象徴的な動きの一つだ。BIMを経営の軸に置き、活動の幅を広げる同社の守屋正規代表取締役は「ゼネコンの現場でもっとBIMデータを有効活用してもらいたい」と、自社の施工図作成ノウハウを詰め込んだ施工BIM支援ツールの提供を始めた。

中堅ゼネコンに所属していた守屋代表は2000年に独立した。当初は1人で施工図作成を請け負っていたが、今ではグループ会社を含め70人体制にまで組織を拡大している。転機は16年に訪れた。取引先のゼネコンからBIM対応について問われ、調べるうちに「BIMの奥深さやモデル活用への可能性」を強く感じた。

ゼネコン在籍時代に嫌いだった配筋写真撮影の経験から、独立後にiPad配筋検査写真システムを開発するなど、生産性を向上させるツールの開発に取り組んできた。「BIMをやるなら本気でやりたい」と、経営方針として『建設デジタル、マジで、やる』を掲げた。当時は会社運営が軌道に乗りつつあり、規模も30人体制を超え、成長戦略を模索しているころでもあった。「次のステージに進むためにも徹底してBIMを研究しよう」と、守屋代表自ら先頭に立った。

守屋代表

販売代理店として出入りしていた大塚商会から提案された主要BIMソフトの中から、オートデスクの『Revit』の導入を決めた。Revitは施工段階のBIMツールとして定着しつつあり、独自のツールをつくりやすいシステム開発の柔軟性も採用の決め手となった。しかし、施工図作成業務でRevitを浸透させるまでには試行錯誤が続いた。「現場が使うのは図面であり、Revitから従来と同じような表現の図面をきちんと出力できるようにすることが前提だった。その部分に時間と労力を費やしてきた」と振り返る。ファミリの整備も着実に進めながら、今では施工図作成の業務ツールとしてRevitが定着している。

業務の売り上げもBIMの割合が従来の2次元対応を逆転し、現在は全体の7割近くにまで達している。建築プロジェクトへのBIM導入は、先行した大手ゼネコンに続き、現在は準大手クラスにとどまらず、中堅や地場大手クラスでも社を挙げて取り組み始めた。各社はBIMを生産性向上の手段として位置付け、施工段階のBIM活用を積極的に進めている。

BIMの割合は全体の7割

同社はBIM対応を足がかりに、施工BIMの導入コンサルティング事業にも乗り出した。現場向けのBIM教育やファミリ整備、ワークフロー構築など幅広く対応している。「われわれの役割は施工BIMの導入環境を整え、現場にBIMの価値を最大限に発揮してもらうことだ」と照準を合わせる。

拡大基調にあるゼネコンの施工BIMだが、守屋代表は現場がBIMデータを十分に使い切れていない状況に歯がゆさを感じている。「より手軽に使える施工BIMの支援ツールを提供したい」。同社は19年から開発に着手し、22年1月にRevitアドオンツール『MFTools』の提供を始めた。

「BIMデータの中にはさまざまな情報が詰まっている。それを作業ごとに切り分け、使いやすいように自動化すれば、現場の有効な武器になる」。既に建築市場では複数のBIM支援ツールが存在する。MFToolsは後発になるが、現場作業のより細かな部分に手が届くツールとして注目を集めている。

MFToolsで期待できる効果

  • * 本ページは、株式会社日刊建設通信新聞社様が2023年2月7日に掲載された記事をご提供いただき、掲載しています。

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