GMとしての課題は、ジェネレーティブ デザインやアディティブ マニュファクチャリングをその以外のどういう用途に応用できるのかを見いだすことであり、GMは既に自社車両のその他多数の部品の最適化に取り組んでいる。軽量化により、燃費や電気自動車の走行距離を伸ばせれば、GMとして競争力の大きな強みとなることは自明である。
ゼネラルモーターズ (GM)が牽引する、より軽量かつ効率的な自動車部品設計の未来
2018年10月 1日
製造業
製造業において3Dプリンターの導入が進み、いつでもどこでもデザイン検証・機構検証ができる今までにないものづくり環境が整う中、実部品の3Dプリンターによる造形が動き出している。
金属積層3Dプリンターとオートデスクの最新テクノロジーが開くものづくりの未来を「Redshift 日本版」からご紹介する。
3Dプリントによるカーデザインへの取り組みは、スタートアップ企業や実験的な目的によるものだけではない。従来の自動車メーカーは、注目を集めるための概念実証でなく、各社とも漸次的な改良や具体的な改善に注力している。ゼネラルモーターズ(以下、GM)は、そうしたアプローチを具体化して、性能向上やカスタマイゼーション、パーソナライゼーションを提供する3Dプリント製のコンポーネントをデザインしている。
GMとして1台の自動車を構成する30,000点の部品を全て3Dプリントするつもりはなく、非常に現実的なアプローチを採り、GMとお客様に価値を提供できることに注力している。GMにとって重要なのは、何が「できる」のかではなく、何を「すべき」かなのである。
破壊的なデザイン
アディティブ マニュファクチャリング(金属3Dプリンティング)が自動車業界の未来への扉とすると、その扉を開くカギはジェネレーティブ デザイン(編注:コンピューターが自己生成的にデザインを生み出す技術)だ。
「私たちにとってジェネレーティブ デザインは、クラウドやAIを活用してエンジニアとコンピューターを組み合わせ、自動車のパーツやコンポーネントのさまざまなデザインソリューションを模索する手法の一つです」と、製造部門のケヴィン・クイン氏。「コンピューターやエンジニアが単独で取り組むのでは生成不可能なパーツデザインが、コラボレーションによって得られます」。
エンジニアはコンポーネントのデザイン目標や材料と製造手法、予算などの制約要因を含めた制約情報をジェネレーティブ デザイン ソフトウェアに入力すると、ソフトウェアはアルゴリズムを使い、想像し得る全デザインの組み合わせを分析、評価して、計算に基づいて最適なソリューションを提供する。
「ジェネレーティブ デザインとアディティブ マニュファクチャリングの組み合わせは、業界にディスラプティブな(創造性を伴う破壊的な)変化をもたらすかもしれません」と話すクイン氏は、自動車業界は圧延機や射出成形金型など従来ある製造ツールの制約によって、伝統的にハンデを負っていると付け加える。例えば、そうしたツールでは極めてシンプルな形状しか製造できない。
また、従来のツールは高価であるうえに融通が利かず、アイデアの有効性を調べる試行に法外なコストがかかる。ジェネレーティブ デザインとアディティブ マニュファクチャリングは、最小限の設備投資で無限のデザインソリューションを提供可能だ。
単体のソフトウェアを単体の3Dプリンターと組み合わせることで、アディティブ マニュファクチャリングを使用しなければ実行不可能な有機的形状や内部格子を含めた、無数の部品と無限の形状を生成できる。
より優れたブラケット?
GMのエンジニアたちは先日、Fusion 360のジェネレーティブ テクノロジーを活用したオートデスクとのコラボレーションを行い、機能的に最適化された新しいシートブラケットをデザインした。これは、シートベルトのバックルをシートや床にしっかりと固定するための標準的なカーパーツだ。
一般的なブラケットは8点で構成される四角いパーツだが、ソフトウェアが提示したのは、宇宙からやって来た金属性物体のようにも見える、150種以上ものデザインの選択肢だった。GMが選択したデザインは、8点で構成されるのでなく単体のステンレス鋼製のもので、従来のブラケットに比べると重量は40%軽いが、その強度は20%高くなっている。
8点からなる部品を一体化しようと考えたのは、質量を最適化するためと、副次的に多数の異なるサプライヤーが製造する多数の異なる部品(とその後の組み立て)に関連するサプライチェーンのコストを削減するためであった。
これを数百、数千ものパーツに応用することで、自動車をどれほど低価格で軽量かつ低燃費なものにできるのかは、容易に理解できる。
流行よりもメリット
性能の向上は、最初の段階にすぎない。GMは今後アディティブ マニュファクチャリングを活用し、ディーラーの各店舗で、より低価格かつ効率的な保守部品の製造や車両のカスタマイズを行うことを計画している。
本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift 日本版」の記事を、許可を得て転載したものです。
この記事の提供者
Matt Alderton
ビジネスやデザイン、フード、トラベル、テクノロジーを得意とするシカゴ在住のフリーライター。