BIMの推進に対する偏った考え方を切り替える三つの方法

2018年11月20日

建設業

メキシコのトゥルムに建設中の Naku Zamaリゾートなどのプロジェクトにかかわってきた建築家のエディ・スリム氏は、建築事務所にBIMの活用方法を紹介している[提供: Eddy Slim]

日本の建築業界において、BIM(Building Information Modeling)への取り組みが加速し始めている。とはいえ、乗り越えるべき障害が多岐にわたる状況の中、BIMに対して取り組む考え方のヒントを「Redshift 日本版」からご紹介する。

柔軟性や透明性を求めて変化を受け入れることの重要性

「失敗や変化、批判を怖れる気持ちは、自己保護の原始的な衝動として、人間の脳に組み込まれている。だが柔軟性や透明性を求めて変化を受け入れることで、人類は素晴らしいことを達成可能なのだ」とエディ・スリム氏は語る。

エディ・スリム氏は、そうした怖れに直面する気持ちに精通している。建築家として訓練を受けた氏は、メキシコシティの印象的なソウヤマ美術館(Museo Soumaya)など、メキシコの注目を集める文化的な建物の設計にBIMを活用してきた。このところは、自身のキャリアと自らの会社ConstruBIMを、設計事務所や建設会社、政府機関におけるBIMの推進とディスラプション(現状の破壊・崩壊)に付きまとう変化や不安への対処にささげている。

スリム氏はBIMの導入は技術的な熟練度だけの問題ではないと述べている。職場風土における感情的な恐怖ともなり得る変化を管理することでもあり、専門のセラピストの仕事とそれほど変わらないと言うのだ。BIMをワークフローに不可欠なものするため、以下で紹介する三つのヒントを適用してみよう。

1. 早い段階から皆を参加させ、BIMの導入は後から

BIMの採用を成功させるための最も重要な要因は、従来の部門の壁を超えてコラボレーションを行おうというチームの熱意だ。スリム氏は早い段階で、協働に対するスタッフの熱意を確認する。組織の上層部に紹介されたら、それ以外の全員をできるだけ会話に参加させよう(スリム氏はその会社の上層部に3回目のミーティングまでにスタッフ全員に会う許可を得る)。「内部からの抵抗があったら成功させられないので、話す必要があります」とスリム氏。

メキシコ・エカテペックの 1,001 戸からなるベンダバール低所得者向け団地の公共スペースの最適化にBIMが活躍[提供: Eddy Slim]

2. 語るな、描写せよ

BIMの採用に対する抵抗に直面した際には、プレゼンテーションや約束では解決しないこともある。その場合は、BIMの入門者たちに少し苦労してもらって、BIMのメリットをデモしてみよう。

ベンダバールの住宅構造のモデル[提供: Eddy Slim]

3. 聞いて、不安を解消

スリム氏は、会社へのBIMの導入をマネージメントすることは「まさに駆け引き」であり、主にディスラプション(現状の破壊・崩壊)に関する駆け引きだと述べている。そして、プロの縄張りを喪失することの怖れ、より効率的なテクノロジーにより職が奪われることへの怖れ、そして未知のものに対する怖れをどう受け流すかについて取り組む。BIMを定着させるのに重要なのは、そうした心配への先を読んだ対応なのだ。

皆に理解させるべきことは、BIMは労働費でなく時間的な非効率を削減することで、最も効果的にコストを抑えられるという部分だ。「BIM推進の検討が、労働力削減の検討だと誤解されることもあります」と、スリム氏。「そう考えてしまうのは理解できますが、結論が間違っています。BIMによる節約は現場に反映され、建設がより効率的で、うまく調整されたものになります。BIMによって、より多くのデータへアクセス可能となり、材料の無駄や時間をかけた失敗を回避できるのです」。

トレーニングに関しては、その事務所におけるBIM活用の管理をリードするための、最高のスタッフを選出することが重要だ。トップレベルのマネージャーに、新たなシステム運用の役割を果たす時間や技術的な能力がなく、より下の者がBIMマネージャーに最適な場合もある。

「BIM活用は、効率やスピード、より多くの情報の活用による建設前段階での問題分析や解決などにメリットがあると理解することが重要です」とスリム氏。「つまり、強くて大きなチームが必要なことに変わりはないが、建設において減らすことができるのは、労働力でなく材料の無駄だということなのです」。

重要なのは、BIMを巨大なビルなど、大規模プロジェクトのより高度なコントロールを提供するものとして提示することだ。このアプローチは、時間の節約につながる効率を相殺するより多くの労働投入を実際に要求するが、それゆえ、より良い顧客サービスを提供することになる。より多くの変数をトラッキングし、トラッキングの方法が増えれば、モデルないにより多くの労働が投資され、そこから誰もより多くを生み出せるようになる。

「こうした方法で行うことが、役に立つのです」とスリム氏。「皆がBIMを推進したがるようになります」。これもまた、不安を解消するBIMの提示方法となる。設計者に対する新たなチャレンジ(や援助)ではなく、クライアントへのメリットとして。

本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift 日本版」の記事を、許可を得て転載したものです。

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