加速する火星移住プロジェクト

2018年12月19日

建設業

2020年代に向かって、月そして火星へ人類が足を伸ばすための計画が各国宇宙機関で本格化します。観測データは火星や太陽系のほかの惑星たちの生い立ちを知るだけでなく、将来赤い惑星に向かう飛行士たちにも重要な情報をもたらすかもしれません。いよいよミッションが始まります。

インサイトが無事着陸

日本時間2018年11月27日未明、NASAの探査機「インサイト」が火星に無事着陸しました。インサイトは火星内部を調査するために作られた探査機で、2012年より火星上で活動し続ける宇宙船キュリオシティのようなローバーとは異なり、その場にとどまって高感度の地震計による地中の動きや隕石の衝突、砂じん嵐の観測、そして熱流出を測定する熱伝導プローブを用いた地中の熱伝導の調査などを行います。

一方、現地で両輪として活躍することになった「キュリオシティ」。2016年に、火星には地球と同じように酸素が豊富な大気があったことを示す、酸化した地層を発見した立役者です。火星は磁場を失い、大気と共に酸素の大部分が宇宙へ放出されてしまったものの、この発見はまだ地下には酸素が存在する可能性があると、NASAジェット推進研究所(JPL)の研究チームの推測に大いに役立ちました。

インサイトでの観測期間は2年間を予定しており、その間には観測によって火星内部がどのようにして現在の状態になったか、内部物質や深い部分の構造なども明らかになることが期待されます。

火星移住シミュレーション

今、火星移住を目的にしたバーチャル設計が世界中の建築家の中で進められています。

アメリカでのMars Cityプロジェクトは、火星に関するSTEM(科学、技術、工学、数学)学習プログラムを作成すべく、NASAの助成を受けて2000年代にスタートしました。その助成を元に、アメリカの教育支援サービス企業であるTLRIが立ち上げた「Mars Facility Ops Challenge」プロジェクト(学生グループが火星上の建物における力学的な問題に取り組む)は、初めはダッシュボードをベースとするシステムだったものの、これを光と自然環境、機械系、居住空間などを含み、完全にリアライズしたBIMモデル(Autodesk Revitを使用)へとアップグレード。結果、地球とは異なる惑星の厳しい生活環境における、建物への考慮を加えることができたのです。

Autodesk Revit 製品情報

Autodesk Revitで火星上の建築物を設計するMars City

現在は中高校生を中心に1,200人を超えるメンバーがゲーム感覚で参加しています。建築家研究チームはNASAと提携して仮想基盤を開発し、彼らは火星基地(いわば火星市)に住み基盤の維持を担当するいわば施設管理者になるという仮想現実(VR)シミュレーションです。この仮想現実シミュレーションの実現には、Autodesk Revit Live、3ds Max、Stingray(現在は3ds Maxに組み込み)を組み合わせて使用しています。

Autodesk 3ds Max 製品情報

2017年11月には、ラスベガスで開催されたAutodesk Universityのカンファレンスで、Mars Cityプロジェクトのデモを実施しました。聴衆から伝わる熱意は、学生だけでなくフィールドの最先端を維持しようとするプロフェッショナルの育成にも役立つ、インタラクティブな学習環境の創造の価値がますます高まってきていることを証明しています

Autodesk University Las Vegas

日本でも、学生参加型のプロジェクトが始まりました。火星で生活するうえで必要な建物や乗り物などインフラをデザインすることをミッションにした、世界各地域で開催するHP Mars Home Planetがそれです。優秀作品はオートデスク製品を用いてのモデリングとVR化、そして世界各地域代表が集結し最終フェーズに進みます。

BIMデータ×VRを活用したプレゼンが生む、さらなる説得力

Inventorのジェネレーティブデザイン機能で軽量化に成功

インサイトにより、今後の調査結果が期待され、地球上では次代を担う学生たちが生活拠点としての興味を持ち始めています。火星移住に真剣に取り組む企業の一例として、バドワイザーがほぼ無重力の宇宙ロケットに大麦が発芽するかを実験したそうです。

そしてオートデスクは、ラスベガスで先月に開催されたAutodesk Universityにて、NASAジェット推進研究所(JPL)の協力で惑星着陸機のデザインを発表しました。Autodesk Inventorのジェネレーティブデザイン機能を用いて、軽量化に成功させたことが大きな特長です。私たちが火星に手が届くのは、案外そう遅くないのかもしれません。

画像出典:NASA