ThinkPadワークステーションに込められた大和研究所エンジニアのこだわりを探る

使いやすさと快適さの徹底追求がもたらしたイノベーション

ThinkPadが誕生した場所の名前を連綿と受け継ぐ「レノボ大和研究所」。世界に4カ所あるレノボグループ研究開発拠点の一つであり、現在はThinkPadハイエンドモデルの開発を担当しています。

横浜・みなとみらいにある大和研究所を訪ね、開発現場で活躍するエンジニアの上村拓郎氏と長南勉氏に「製品へのこだわり」についてお伺いしました。

より迅速な導入。最適化された設計。インテル Xeon プロセッサー搭載

使用状況調査に基づく要件を最高レベルで満たす設計

大和研究所といえば、1992年にThinkPadシリーズを生み出した研究開発拠点として世界的に広く知られる存在です。2011年1月に神奈川県大和市から横浜市みなとみらい地区へ移転した後も、レノボ社内やパートナーの思い入れが強かったことから“YAMATO”の名称をそのまま踏襲し、主にモバイルワークステーション「ThinkPad P5x / P7xシリーズ」やハイエンドモデル「ThinkPad X1シリーズ」の開発を担当しています。

そんなモバイルワークステーションの開発現場では、どのようなこだわりを持って製品の研究開発に取り組んでいるのでしょうか。

モバイルワークステーションの研究開発を担当する上村拓郎(Thermal & Performance Design担当マネージャー)は、最も重視しているのはお客様のあらゆる要件を満たす製品を開発することだといいます。

「働き方改革の取り組みが進む中、モバイルワークステーションにもフレキシブルなワークスタイルに対応するように、さまざまな要件が求められています。大和研究所では、そうした全ての要件を満たすことを目指すために、お客様の使用状況を徹底的に調査しています。

調査結果により判明したモバイルワークステーションに求められる要件を、ハードウェア/ソフトウェアの設計に最高のレベルで反映させることが、私たちエンジニアが最も重視しているポイントです」(上村)。

常に最高レベルのモバイルワークステーションを提供するという目的の下、大和研究所では一貫した設計ポリシーに基づいてThinkPadの開発を続けてきました。しかし、かつてのモバイルワークステーションでは、必ずしも要件を満たせていなかったと長南勉(Thermal & Performance Design)は振り返ります。

「これまでのThinkPadモバイルワークステーションは、現行製品に比べるとサイズが大きく重量も倍近くあり、持ち運びの用途に適したものではありませんでした。しかし現在は、プロセッサーやグラフィックスの技術革新が急速に進んだこともあって、私たちが『やりたいこと』を実現しやすくなりました。デスクトップのハイエンドワークステーションには及ばないものの、持ち運べる利便性と3D CADが稼働するパワーを両立させた製品を提供できていると考えています」(長南)

独自のインテリジェントクーリング機能が最大の差別化ポイント

そんな最新のThinkPadモバイルワークステーションには、大和研究所ならではのさまざまな独自技術が詰め込まれている。特に速性能とトレードオフの関係にある熱対策・温度制御のデザインに関しては、数多くの先進技術を取り入れてきました。

「プロセッサーの性能を上限まで引き出すには、本体の熱処理設計が非常に重要です。現在のインテルプロセッサーはプロセッサー自体が高度な電力管理機能を備え、モバイルワークステーションのバッテリー駆動時間を伸ばしたり、本体からの発熱を抑制したりできます。

私たちはこうしたプロセッサーによる電力管理機能を活用するだけでなく、快適な操作と優れた処理能力を両立させる独自のインテリジェントクーリング機能を開発しました」(上村)。

モバイルワークステーションに搭載されているインテリジェントクーリング機能の特徴は、ユーザーの利用状況に合わせる形で本体の温度管理と制御を行えるという点です。本体内部のシステムボード上に複数の温度センサーが配置されていて、それらを独自アルゴリズムで制御しながら利用状況をすばやく検知。異常な発熱があれば、プロセッサーの消費電力を落として本体内部の温度を下げるという働きをします。

本体内部の温度制御に欠かせないファンにも工夫が凝らされています。

レノボ・ジャパン株式会社
マネージャー
Thermal & Performance Design
上村 拓郎

例えば、静かな羽音で飛ぶフクロウの翼からヒントを得たThinkPad独自の「フクロウファンブレード」は、2005年に実用化されてから現在まで、改良を重ねながら使われ続けています。静音で冷却能力に優れたファンには大和研究所が開発した特殊なファン・ベアリングが用いられ、薄型と高信頼性の両立が実現されているのです。

「ファンは温度を下げるために不可欠な存在ですが、私たちが特に気に掛けているのは『音』の部分です。人は不連続な動き方による音、予期しない場面で発せられる音を不快に感じます。このような音を発生させないように、こだわりを持って取り組んでいます」(上村)。

ファンの回転数を制御し、音の発生を抑えてながら温度管理を行うインテリジェントクーリング機能により、ThinkPadワークステーションは静粛性と熱処理・省電力を最適な状態に調整できるというわけです。

レノボ独自のクーリング機能は大和研究所の開発者によって生み出された。

「インテリジェントクーリング機能も日々改善に取り組んでいます。これまでの製品の場合、全て自動制御といういわば“お仕着せ”の機能でしたが、最新製品ではプロファイルを設定し、利用状況に合わせてモードをオンデマンドで切り替えられるようにしました。

例えば、設計以外のパフォーマンスを必要としない業務(ドキュメント作成やeメールなど)では、必要以上のパワーを消費し、温度や騒音でユーザーエクスペリエンスを損なうようなことがありません。このような温度管理デザインは、業界最高レベルにあると自負しています」(上村)。

続けて、音や温度制御だけではなく、設計者の生産性の観点にも意識されていることに開発者のアイデンティティを感じます。

「ダウンタイムの最小化による生産性の持続は最も考慮しなければなりません。通常、片方のファンに不具合が発生した状況においてはワークステーション本体が使用不可、もしくは著しい使用制限を受けますが、ThinkPad の場合、ファンの不具合発生を検出する機構を備え、片方のファンの不具合を検出すると最適化された温度設定プロファイルが適用され使用継続できるように設計されています」(上村)。

日々活発なコミュニケーションとディスカッションが行われている。

パーツメーカーとの密接な協業体制が製品競争力を高める

適切な温度管理には、本体内部の空気の流れ(エアフロー)を最適化することも不可欠です。大和研究所では、熱流体シミュレーションを使ってエアフローを徹底的に検証しています。

「エアフローについては、基本的に出来る限りシンプルにすることが重要だと考えています。そのうえでSSDや各種I / Oポート、バッテリーなどを配置する位置も含め、シミュレーションの結果を参考にデザインを決めています」(長南)。

レノボのモバイルワークステーションには、もう一つ、大きな強みがあります。それは、プロセッサーメーカーのインテル、およびグラフィックスメーカーのNVIDIAとの密接なパートナーシップです。

プロセッサーやグラフィックスのコモディティ化が進んだ現在、ハードウェアだけで差別化することは困難です。だからこそ、製品の競争力を高めるには、パーツメーカーとの強い結びつきが大切になります。

「モバイルワークステーションのパフォーマンスを最大限引き出すためには、CPU / GPUをいかにマネージしていくかが極めて重要です。各メーカーの開発拠点には、レノボのエンジニアが打ち合わせや電話会議を通して、積極的にチューニングやソフトウェア開発に参加しています」(長南)。

レノボ・ジャパン株式会社
Thermal & Performance Design
長南勉

大和研究所ではそうしたエンジニアと密に情報を共有しながら、製品の研究開発に取り入れています。

「私たちはお客様の声に耳を傾け、お客様が望む要件を満たすモバイルワークステーションを提供することこそが、製品競争力を高めために一番重要なことだと考えています。

今後も熱・温度管理をはじめ、電源マネジメントなどの独自技術に工夫を凝らしていくと共に、モバイルワークステーションの重量やコストパフォーマンスなど使いやすさ・求めやすさも意識しながら、こだわりを持って大和研究所らしい製品の研究開発に引き続き取り組んでいきます。パフォーマンスを決して落とさず、連続して使えることが、お客様の業務生産性向上に役立つものと信じています」(上村)。

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  • ThinkPad P1
  • ThinkPad P72
  • ThinkPad P52
  • ThinkPad P52s

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