3D CADのモビリティでエンジニアの働き方に革新のうねりを

「ThinkPad P14s+AutoCAD」のタッグが設計の現場にもたらす変革とは

左からオートデスク株式会社 技術営業本部 建設ソリューション クラウドスペシャリスト 大浦誠氏、レノボ・ジャパン合同会社 WS & クライアントAI事業部 SMBビジネス開発部 部長 小林涼介氏

重量1.47kgと軽量ながら「第11世代インテル Core i7 / i5 G7 プロセッサー」と「NVIDIA Quadro T500」を搭載し、高い処理能力を発揮するレノボの14インチ型モバイルワークステーション「ThinkPad P14s Gen2」。

同製品と「AutoCAD」のコンビネーションは、エンジニアの働き方にどのようなインパクトをもたらすのでしょうか。両製品の相乗効果について、オートデスクとレノボのキーパーソンが語り合います。

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インテル Xeon プロセッサー搭載のワークステーションは、高負荷な用途向けに設計され、広範囲のワークロードに対応するプロフェッショナル向けのアプリケーションを実行させるのに最適です。

AutoCADの実行性能で「旧世代のハイパフォーマンスモデル」に迫る性能を発揮する「P14s Gen2」

オートデスクの技術営業本部では先ごろ、レノボの新世代エントリーモバイルワークステーション「ThinkPad P14s Gen2」の性能を検証すべく、ベンチマークテストを実施しました。

使用したベンチマークプログラムは、AutoCADを稼働させるシステムのパフォーマンス計測に広く使われている「CADALYST Systems Benchmark (2015 v5.5b)」で、使用したAutoCADのバージョンは「AutoCAD 2022.1(S.113.0.0)」。

この環境のもと、ThinkPad P14s Gen2と「同社の旧世代ハイパフォーマンスモデル(以下、旧パフォーマンスモデル)」との性能比較が実施されました。結果は、下図のとおりです。

「ThinkPad P14s Gen2」と「旧パフォーマンスモデル」のAutoCADベンチマーク結果

備考:テスト環境

ThinkPad P14s Gen2
CPU第11世代インテル Core i7-1185G7 / 3.00MHz
メモリー32GB
グラフィックスカードNVIDIA T500(ドライバー471.41)
OSMicrosoft Windows 10 Pro 64bit
ディスプレイ解像度1,920x1,080
旧パフォーマンスモデル
CPUインテル Xeon E 2176M / 2.70MHz
メモリー32GB
グラフィックスカードNVIDIA Quadro P2000(ドライバー452.66)
OSMicrosoft Windows 10 Pro 64bit
ディスプレイ解像度1,920x1,080

この結果について、オートデスク技術営業本部の大浦誠氏は次のように評価します。

「今回のベンチマーク結果で特に注目すべきは、ThinkPad P14s Gen2における3Dデータの処理能力が総じて旧パフォーマンスモデルよりも高いことです。これならば、AutoCADを使った3D設計もストレスなく行えるでしょう。また、そのほかの項目についてもP14s Gen2は旧パフォーマンスモデルに匹敵するような性能を記録しており、さらに、当社のBIMソフトウェア『Revit』を使ったベンチマークでもThinkPad P14s Gen2と旧パフォーマンスモデルにそれほど大きな性能差は見ることができていません。軽量・コンパクトでコストパフォーマンスにも優れたThinkPad P14s Gen2の性能がここまで高いというのは驚きですし、この製品によってCADエンジニアの働き方改革の流れが一層加速するのではないかと感じます」。

オートデスク株式会社 技術営業本部 建設ソリューション クラウドスペシャリスト 大浦誠氏

オートデスクは一方で、最新版のAutoCADにおいて価格体系を変更しています。使用可能な機能が2D作図やドキュメント作成などに限定されていた従来の「AutoCAD LT」の新規販売を終了し、AutoCAD LTと同等の価格で、3D モデリングやカスタマイズ機能を利用できる「AutoCAD」の提供を開始しました。

「これまで、多くのお客様が『価格が高い』ことを理由にAutoCADの活用に踏み切れず、AutoCAD LTを使ってきました。今回の新しいAutoCADの提供により、そうしたお客様にも3D設計をはじめとするAutoCADの高度な機能を広くお使いいただきたいと考えています。そうした私たちの取り組みを、コストパフォーマンスに優れたThinkPad P14sが後押ししてくれると期待しています」(大浦氏)。

こう語る大浦氏は今回、レノボの呼びかけに応じてレノボ・ジャパンでSMBビジネス開発部の部長を務める小林涼介氏との対談に臨みました。

テーマは、ThinkPad P14s Gen2などのレノボ製品とAutoCADのコンビネーションによって、エンジニアの働く環境にどのような変革のうねりをもたらすかです。以下、対談のエッセンスを一問一答の形式で報告します。

急速に進むCADエンジニアのテレワーク

オートデスク・大浦氏(以下、敬称略):今回のAutoCADベンチマークでThinkPad P14sの性能が相当のレベルにあることが確認できましたが、同製品の市場性はどうなのでしょう。モバイルワークステーションに対する需要は堅調に伸びているのですか。

レノボ・小林:勢いよく伸びています。とりわけ、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)が流行して以降の伸びは急速です。コロナ禍以前、ワークステーション市場におけるデスクトップとモバイルの比率はおおよそ9対1で、デストップをお使いのお客様が圧倒的に多かったのですが、コロナ禍以降、企業の設計部門や映像制作の現場などでも働く場所の自由度を高めようという動きが活発化し、モバイルワークステーションの需要が一気に拡大しました。

結果として、今日におけるデスクトップとモバイルの比率はおおよそ6対4へと変化しています。要するに、ワークステーションの市場はコロナ禍を経て大幅にモバイルにシフトしているわけです。

AutoCADの可搬性を高める理想的なプラットフォーム

レノボ・小林:設計現場における働き方の変化は、オートデスクでも実感しておられると思いますが。

オートデスク・大浦:おっしゃるとおりです。設計現場における働き方の変化は当社も感じていて、例えば、コロナ禍を境に設計部門にテレワークを導入されたお客様は多くありますし、中には、テレワークの採用とあわせてオフィスをフリーアドレス化し、オフィスの中でも働く場所の自由度を確保しているお客様もあります。そのお客様は大手設計事務所ですが、社用の端末としてThinkPad Pシリーズをお使いです。

レノボ・ジャパン合同会社 WS & クライアントAI事業部 SMBビジネス開発部 部長 小林涼介氏

レノボ・小林:その事例については存じ上げています。AutoCADを使った3D設計がストレスなく行える処理性能を持ちながら、携帯性とコストパフォーマンスに優れているという理由から、数ある選択肢の中からレノボのモバイルワークステーションを採用いただきました。

オートデスク・大浦:ThinkPad P14s Gen2は、コンパクトでありながら高い処理性能を持っていますので、テレワークやフリーアドレスを志向するCADエンジニアにとってより魅力的な製品と言えるかもしれません。

特に、CADエンジニアの場合、オフィスワーク用とテレワーク用にデスクトップとモバイルワークステーションの2台をお持ちの方もいます。ThinkPad 14s Gen2はそうしたユーザーがテレワーク用の端末として使ううえでも、オフィスワークとモバイルワークの兼用で使ううえでも、理想に近いワークステーションと言えるのではないでしょうか。製品の堅固性も高いとお聞きしましたが。

レノボ・小林:おっしゃるとおりです。ThinkPad P14s Gen2を含むレノボのThinkPad Pシリーズは、全てが米国軍用規格のMIL規格に準拠した高い堅固性を備えています。さらに、日本の大和研究所で人間工学に基づくキータッチをはじめ、排熱処理・静音の設計・開発が行われ、モバイルワークステーションとしての使い勝手や信頼性は業界最高水準にあると自負しています。

オートデスク・大浦:だからこそ、AutoCADのお客様の間でもThinkPad Pシリーズの評価は高いと言えますし、当社としても安心してお客様にお勧めできます。

例えば、当社内に導入した他社製のモバイルワークステーションの場合、AutoCADで大きなワークロードをかけ続けた結果、CPU・GPUの発した熱によってハードウェアに支障をきたすことが過去にありました。それに対してThinkPad Pシリーズについては、そうした障害を引き起こしたという話を聞いたことがありません。しかも、静音性にも優れていますので、その点でもリモートワークに適した端末であると見ています。

レノボ・小林:そう言っていただけるとうれしいかぎりです。

オートデスク・大浦:また、CADエンジニアは1日中、ワークステーションと向き合って仕事をしていますので、静音性やキータッチを含めた使い勝手の快適性は非常に大切なポイントです。

特にモバイルワークステーションの場合、薄くなればなるほど、あるいは、サイズが小さくなればなるほど、キーボードの使い勝手が悪化するのが通常です。そして、キーボードの使い勝手が悪ければ、仕事におけるエンジニアの疲労の蓄積は早くなります。それに対して、ThinkPadのキータッチは絶妙で使用にストレスを感じません。その辺りにレノボの使い勝手に対する強いこだわりを感じます。

BIMでの活用に適した発色の美しさも魅力

オートデスク・大浦:もう一つ、ThinkPad 14s Gen2を使わせていただいて気付いたのですが、ディスプレイの発色が非常に美しい。これも使用の快適さに大きく影響してくる部分だと思いますが。

AutoCAD 3Dモデル

レノボ・小林:ご指摘のとおりです。ディスプレイ発色の美しさはThinkPad 14s Gen2の大きな特長の一つです。しかも、この製品にはカラーキャリブレーション機能が実装されており(UHDパネル選択時)、液晶の発色が経年によって変化した際も工場出荷のデフォルト値に戻せるような仕組みが実装されています。

オートデスク・大浦:例えば、設計のエンジニアがBIMの3Dモデルを使って建物の内装を施主にプレゼンテーションを行う際、実際の内装の色合いと3Dモデルのそれとが一致しているかどうかが重要になります。

故に、実物どおりの発色がコンピューター上で再現できるかどうかは大きなポイントで、ThinkPad 14s Gen2はその大切な要件も満たせていると言えます。

AutoCADの進化の方向性にフィットする理想のプラットフォーム

レノボ・小林:ワークステーションのメーカーとしては、AutoCADの機能強化、あるいは進化の方向性が気になるところです。その点について全体感をご教示ください。

オートデスク・大浦:製品強化の大きな方向性は、設計業務における生産性の向上です。ご存じのように、当社にとってメインの市場である日本の建設、製造業界は共に人手不足・人材不足に悩まされており、技術者の高齢化も進んでいます。

その課題解決の一手として、設計プロセスの自動化・効率化を徹底して推し進めるというのが、AutoCADにおける強化の大きな方向性です。AutoCAD LTと同等の価格でAutoCADの提供に乗り出した最大の理由もそこにあり、コンサルタントに依頼した調査では、AutoCAD LTからAutoCADに切り替えていただくことで、全体の生産性が86%向上したという結果がでています。

レノボ・小林:そこまでの生産性向上が実現される理由について教えてください。

オートデスク・大浦:例えば、設計の中で相当の時間を要する作業は、作成した図面の内容が自社の仕様に適合しているかどうかを点検する作業です。しかし、その作業を自動化する機能はAutoCADにしかなく、AutoCAD LTには備わっていません。また、AutoCADを使用することで、カスタマイズ(プログラムの作成)を行い、これまで相当の工数をかけていた定常的な設計業務の多くを自動化することが可能になります。

レノボ・小林:AutoCADではAI(人工知能)/機械学習技術による効率化も実現されているとお聞きしましたが。

オートデスク・大浦:そのとおりです。機械学習を用いて、お客様のAutoCADの製品使用データを分析して、そのお客様の利用内容に応じた作業を支援する機能のレコメンデーションを行ったり、AutoCADの学習を支援したりといった仕組みがAutoCADに実装されています。これによってユーザーは、設計の実務を極めて効率的に進めることが可能になります。

巨大化するデータを快適に、どこからでも扱える世界を目指して

レノボ・小林:3D設計やBIMの普及に伴い、今後、CADエンジニアが扱うデータは増大の一途をたどっていくことになるはずです。レノボはシステムベンダーとしてその状況にワークステーションの高性能化で対応していく考えですが、オートデスクではどのような対策を講じる計画なのでしょうか。

オートデスク・大浦:対策の一つはクラウドによるデータ管理を推進することです。クラウドを使ったデータ管理は、人材不足の解消に向けて海外人材を広範に活用するうえでも有効な手だてとなり得ます。

加えて、データの活用で大切なのは、設計データをいかに関係者と効率的にやり取りするかです。その点において、オートデスクでは標準的なデータフォーマットであるDWGを有していますので、その活用によって、設計にかかわる各種データをクラウドにより、関係者間でスムーズに、かつセキュアにやり取りすることが可能になります。

さらに将来的には、AutoCADを含む多様なアプリケーションからアクセスし、必要なデータがどこからでも取り出せるようなデータプラットフォームをクラウド上に築き上げていく計画です。

レノボ・小林:そうした構想の中でレノボに期待している貢献とは何なのでしょうか。

オートデスク・大浦:図面にしても、BIMモデルにしても、ファイルサイズは従来とは比べものにならないほど大きくなっており、これからも増大の一途をたどるはずです。故に、CADデータを扱う端末は、ThinkPad P14 Gen2のように高性能なCPU、GPU、そして大容量のメモリーを備えたワークステーションであることが望ましいと言えます。レノボには、優れたハードウェアの提供によって、これからもAutoCADの構想を後押ししてくれることを期待しています。

レノボ・小林:承知しました。レノボとしてもオートデスクとともにCADエンジニアの働き方改革や生産性の向上に全力を尽くして取り組みたいと考えています。本日はありがとうございました。

オートデスク・大浦:こちらこそ、ありがとうございました。