設計・製造のDX推進に不可欠なワークステーション

現場で効果的に3D CAD / CAMを活用するために

左:金型・部品加工工業専門コンサルティング 中小企業診断士・社会保険労務士 村上英樹氏,中央:株式会社日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋秀樹氏,右:日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 部長 楊博光氏

少子高齢化が進む中、人材不足が激しい製造業では、少ない人員で生産性向上、業務効率化を果たすためにDXの推進が求められている。製造現場におけるCAD/CAMについてもDXを進めることで、作業の効率化を図ることが可能だが「難易度が高い」、「2D設計のままで十分」といった理由から、なかなか進んでいないのが現状だ。

多くの課題がある製造業のDX化について、コンサルタントの村上 英樹氏、日本HPの大橋 秀樹氏、日本AMDの楊 博光氏らに集まっていただき、課題解決について対談を実施したので紹介しよう。

聞き手:株式会社大塚商会 CADプロモーション部 戦略推進課 吉川達郎

製造業における課題とは?

吉川
製造業ではDXを進める動きはありますものの、実際には達成されていないという企業が多いと聞いています。コンサルタントの村上様からみて、実際はどのような課題があるのでしょうか。

村上
厳しい言い方をしますと、思ったように進めることができていない企業が多いと思います。私は中小企業からのご相談をお受けすることが多いのですが、例えば、情報共有のためのファイルサーバーの設置などはほとんどの企業でできています。しかし、保管場所が個人によって違ってしまったり、ファイルの世代管理がされずに修正を加えることが難しかったりと、無管理状態にあるようなケースも見受けられます。

また、機械加工の現場では、ベテラン職人によるアナログ加工が多いのですが、人によって品質が異なるために大量生産ができないこともあります。3D CAD / CAMを導入しようとしても高齢のベテランは操作を覚えることが難しく、整備が進んでいないような現場もありました。

属人化を防ぐためにマニュアル化も進められていますが、その多くは頓挫しています。製造部門以外の部署でもいまだに紙が多く使われ、誰かが紙に書いたデータを誰かがエクセルへ入力するといった手作業に忙殺される企業も多いのが実情です。

3D CAD / CAMが与えるインパクトとは

吉川
属人化といった課題の解決策として、3D CAD / CAMの導入が挙げられるかと思いますが、導入によるメリットはどのようなものが考えられるでしょうか。

村上
例えばプレス加工では、プラスマイナス0.1ミリといった精密部品の微調整をするには、最後の金型調整の段階で、熟練職人のノウハウに頼るしかないと考えられていましたが、現状は 3D CADとシミュレーションソフトを活用し、設計段階で事前に対処していこうという流れです。企業によっては、逆に肥大化する設計作業の負荷をテンプレート化、マクロ化で効率化しようと取り組んでいます。

また、平面図から立体をイメージするのは、大学で設計を学んだ新卒社員でも難しいのですが、3D CADで設計しておけば、現場を見ることがほとんどない営業職でも形はイメージできます。設計の時間としては2D CADと比較して長くはなりますが、問題点の発見や手戻りを考えれば、3D CADの方が効率的ではないでしょうか。延々と地味な作業を続けるのは若い世代にも好まれませんので、ワークフローをデジタル化し、3D CAMで解決する方がより効率的だということを広めていければと考えています。

吉川
3D CAD / CAMの活用にあたってワークステーションの導入は必須かと思います。現場ではどのようなコンピューターが使われているのでしょうか?

村上
現場で3D CAMを活用する場合、ある程度性能が良いコンピューターが必要となるのですが、実際は設計部門から回ってきた型落ちのモデルが多いように見受けられます。設計部門とは違い、製造部門では演算が速ければ問題はないため、常に最新モデルを投入する必要性はあまりないという解釈もある程度理解はできますが、3D CAD / CAMソフトのバージョンが上がった際に、型落ちモデルだとソフトウェアの起動までに多くの時間が必要になるケースをよく見かけます。大規模設計モデルを扱うときにも同じ事象が起こりますので、快適性を求めるのであれば、やはり最新スペックのワークステーションがあれば現場の仕事にも好影響があると考えられます。

また、製造現場で高性能なワークステーションを採用する理由は演算リソースの高さです。もっとも高さが求められるのはCAEですが、その次が3D CAMとなるでしょう。

吉川
村上様から製造業の課題感などをお話しいただきましたが、AMD様、HP様からみたご意見はありますか?


私たちAMDも実際にコンピューターを動かしている現場に合わせた機能を追加していく形でプロセッサーの設計や製品づくりを進めています。CPU、GPU、それに最近追加されたNPUもそれぞれの役割を持っていますので、それらをうまく使って業務に生かしていただければと考えています。

大橋
CAEやCAMに必要なモデルのスペックを上げることで業務効率化につながるという点にはわれわれも同意見です。どちらも大容量データの演算が必須になるため、高性能なマルチコアCPUの導入が鍵になるという認識です。

3D CAD / CAMに最適なパフォーマンスで業務効率化

吉川
製造業において、ワークステーションのパフォーマンスが重要だということが分かってきましたが、AMDプロセッサーはどのようにニーズに応えていただけますか?


3D CAD / CAMのタスクに最適なモデルとして、まずは「AMD Ryzen Threadripper PRO」をご紹介したいですね。このモデルは1ソケットで最大96コアのプロセッサーをワークステーションに搭載することができます。周波数も最大で5.3GHzとなるため、コアが必要な演算も、高周波数が必要な演算も高次元で処理することが可能です。ベンチマークでもこれまでのプロセッサーと比較し、1.3~1.5倍の結果が出ていますので、確実な性能アップを見込んでいただけると確信しています。

また、最近ニーズが特に高まっている製品として、ノート型のワークステーションであるモバイルワークステーションがあります。こちらの方が業務に向いているという方には、最新の「Zen 4」アーキテクチャを採用した、「AMD Ryzen PRO 8040シリーズ」を提供しています。

こちらはCPUとGPUをワンチップにまとめた「APU」を内蔵しているため、ディスクリートグラフィックスなしでも、2D、3DどちらのCADも問題なく使用できます。同等の社外プロセッサーと比較しても同率か、それを上回るベンチマーク結果も出ていますので、性能面でもご期待いただける内容になっていると思います。

そして、製造業においてはとても大切なことですが、私たちのプロセッサーは、ソフトウェアメーカー様との連携を深めており、ISV認証においても常に更新を続けています。主要な業務アプリケーションのほとんどが認証済みとなっていますので、リストもご確認いただければさらに安心してもらえるかと思います。

吉川
素晴らしいプロセッサーですね。製造業の皆様も安心してご活用いただけると思います。続いて大橋様、HPワークステーションのAMDプロセッサー搭載モデルについて教えてください。

大橋
HPではモバイルワークステーションで2機種、デスクトップワークステーションで1機種のAMDモデルをラインアップしています。まず、「HP ZBook Firefly 14inch G11 A Mobile Workstation」は、モバイルワークステーションの中でも薄型軽量デザインと長時間バッテリーによる高い機動性の中に、AI機能を搭載した「AMD Ryzen PRO 8040」シリーズを採用している製品です。メモリーも最大で64GB、ストレージも最大2TB SSDと、プロフェッショナル用途にも十分耐えるモバイルワークステーションとなっています。

もう一つは「HP ZBook Power 16inch G11 A Mobile Workstation」となります。こちらも「AMD Ryzen PRO 8040」シリーズを採用している点では同じですが、ディスクリートグラフィックスである「NVIDIA RTX 3000 Ada」まで搭載可能です。そのため、3D CAD / CAMユーザーの本流となっており、設計者だけでなく、本日も話題になった現場でも使えるモデルと考えています。

両モデルにいえますが、NPUを持つことで将来的に生成AIを使った業務や、アプリケーションのAI機能がより快適に使えるようになります。また、厳しいMIL規格(米軍調達基準)に準拠しているので堅固性が非常に高く、ほこりなどにも強いため、工場での使用にも向いています。

最後にご紹介するのは、デスクトップモデルとなる「HP Z6 G5 A Workstation」です。こちらも先ほど楊様にご説明いただいた「AMD Ryzen Threadripper PRO」を採用した製品で、最大96コア、メモリーも1TBまで増設可能です。さらに、ハイエンドグラフィックスを3基搭載できることから、CAEやCAMだけでなく、デジタルエンジニアリングに必要なハイエンド3Dソフトウェアや意匠に使われるレンダリングソフトウェアを含め、これ1台で十分対応が可能です。まさにDXをけん引するのにふさわしいパフォーマンスを提供できるワークステーションとなっています。

吉川
DXを進めるにあたり、セキュリティも重要なポイントになると思いますが、そのあたりはいかがですか?


AMDプロセッサーの中には専用のセキュリティチップが搭載されています。これによりシステム内のデータを全て暗号化できます。特にメモリー領域のデータ暗号化はAMDだけが実現しています。また、これからはWindows 11が主流になってきますが、OSのセキュリティ機能とのコラボレーションも強化されているので安心してご利用いただけます。

大橋
HPワークステーションにはセキュリティソフトウェア「HP Wolf Security」が搭載されています。ハードウェア機能と組み合わせれば、エンドポイントセキュリティの強化が実現できますので、安心安全な環境づくりが可能になります。

吉川
村上様、楊様、大橋様、ありがとうございました。課題を抱えているお客様に、より的確なご提案ができるだけのノウハウをお聞きすることができました。大塚商会ではオリジナルモデルとして各製品を取りそろえていますので、ソフトウェアも含めて最適な製品のご提案やご導入お手伝いができればと考えています。お困りごとやご相談がありましたら、大塚商会までお問い合わせください。

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