WindowsXPからWindows7への移行により、CAD用ワークステーションでは64bitOSが以前にも増して普及してきています。
最近、「同じ仕様のワークステーションで32bitOSから64bitOSのWindowsに変えることにより処理速度が向上しますか?」という質問がよくありますが、基本的に処理速度はCPUの処理能力やHDD、各ソフトウェアに起因するものですので速くなるケースもありますし、遅くなるケースもあります。
ワークステーションパフォーマンステスト~Win7 32bitと64bitの比較~
HP Z210ワークステーションとSolidWorks2011を使ったパフォーマンス比較をレポート!
では、ミッドレンジ3DCADであるSolidWorksで実際にどのくらいパフォーマンスに差があるのか検証した結果をレポートいたします。
テストに使用したワークステーション
今回の検証では、同じマシンを使用し、OSだけWindows 7 64bit版と32bit版を入れ替えて検証しました。その他のスペック詳細は以下の通りです。
モデル | HP Z210 Workstation |
---|---|
CPU | Intel Xeon CPU E3-1270 3.40GHz |
消費電力 | 400W 80PLUS GOLD対応電源(90%電源効率) |
OS | Windows 7 Professional SP1 32bit Windows 7 Professional SP1 64bit |
キャッシュ | L1(256KB)L2(1024MB)L3(8192KB) |
メモリ | 16GB ※32bitOS時、4GB |
最大仮想メモリ | 49152MB |
グラフィックス | NVIDIA Quadro 2000 |
グラフィックスドライバver | 8.17.12.6710 |
テストに使用したモデルデータ
モデルデータは以下の通りです。
構成部品の合計数 | 1042 |
---|---|
部品 | 872 |
ユニークな部品 | 55 |
サブアセンブリ | 170 |
ユニークなサブアセンブリ | 15 |
パフォーマンステスト結果(バックグラウンドで何も実行しない場合)
(mm:ss)
Z210 Workstation | ||
---|---|---|
計測項目 | 32bit | 64bit |
ソフトウェア起動(1回目) | 00:23 | 00:47 |
ソフトウェア起動(2回目) | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイルを開く | 00:18 | 00:19 |
部品ファイルを選択 | 00:01 | 00:01 |
部品ファイルを開く | 00:02 | 00:02 |
部品ファイル編集 | 00:08 | 00:08 |
フィーチャ再構築 | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイル再構築 | 00:03 | 00:03 |
アセンブリファイル保存 | 00:06 | 00:05 |
干渉チェック | 02:10 | 02:50 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
標準3図面+アイソメ図作成 | 00:12 | 00:12 |
平面図削除 | 00:01 | 00:01 |
作図スケール変更 | 00:05 | 00:05 |
断面図作成 | 00:10 | 00:10 |
アセンブリファイル編集 | 00:02 | 00:02 |
図面ファイル更新 | 00:17 | 00:17 |
図面ファイル保存 | 00:06 | 00:06 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
すべてのファイルを閉じる | 00:02 | 00:02 |
ソフトウェア終了 | 00:01 | 00:01 |
合計 | 04:27 | 05:31 |
バックグラウンドで何も実行しない場合の計測結果を棒グラフで表しました。
パフォーマンステスト結果(バックグラウンドで解析を実行した場合)
Z210 Workstation 32bit
(mm:ss)
計測項目 | 通常の一連 | バックグラウンドでシミュレー ションを実行させた一連作業 |
---|---|---|
ソフトウェア起動(1回目) | 00:23 | 00:23 |
ソフトウェア起動(2回目) | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイルを開く | 00:18 | 00:08 |
部品ファイルを選択 | 00:01 | 00:01 |
部品ファイルを開く | 00:02 | 00:02 |
部品ファイル編集 | 00:08 | 00:07 |
フィーチャ再構築 | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイル再構築 | 00:03 | 00:03 |
アセンブリファイル保存 | 00:06 | 00:07 |
干渉チェック | 02:10 | 02:17 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
標準3図面+アイソメ図作成 | 00:12 | 00:12 |
平面図削除 | 00:01 | 00:01 |
作図スケール変更 | 00:05 | 00:05 |
断面図作成 | 00:10 | 00:10 |
アセンブリファイル編集 | 00:02 | 00:02 |
図面ファイル更新 | 00:17 | 00:17 |
図面ファイル保存 | 00:06 | 00:05 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
すべてのファイルを閉じる | 00:02 | 00:03 |
ソフトウェア終了 | 00:01 | 00:01 |
合計 | 04:27 | 04:24 |
バックグラウンドで解析を実行した場合(32bit)の計測結果を棒グラフで表しました。
Z210 Workstation 64bit
(mm:ss)
計測項目 | 通常の一連 | バックグラウンドでシミュレー ションを実行させた一連作業 |
---|---|---|
ソフトウェア起動(1回目) | 00:47 | 00:47 |
ソフトウェア起動(2回目) | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイルを開く | 00:19 | 00:08 |
部品ファイルを選択 | 00:01 | 00:01 |
部品ファイルを開く | 00:02 | 00:02 |
部品ファイル編集 | 00:08 | 00:07 |
フィーチャ再構築 | 00:08 | 00:08 |
アセンブリファイル再構築 | 00:03 | 00:03 |
アセンブリファイル保存 | 00:05 | 00:06 |
干渉チェック | 02:50 | 03:03 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
標準3図面+アイソメ図作成 | 00:12 | 00:12 |
平面図削除 | 00:01 | 00:01 |
作図スケール変更 | 00:05 | 00:05 |
断面図作成 | 00:10 | 00:10 |
アセンブリファイル編集 | 00:02 | 00:02 |
図面ファイル更新 | 00:17 | 00:17 |
図面ファイル保存 | 00:06 | 00:05 |
アセンブリファイル保存 | 00:02 | 00:02 |
すべてのファイルを閉じる | 00:02 | 00:02 |
ソフトウェア終了 | 00:01 | 00:01 |
合計 | 05:31 | 05:32 |
バックグラウンドで解析を実行した場合(64bit)の計測結果を棒グラフで表しました。
32bitと64bitのパフォーマンス比較結果
バックグラウンドで何も実行しない単体プログラムでの検証
- 64bitよりも32bitのほうが約20%パフォーマンスが優れている結果となった。
- 特に、32bitでパフォーマンスが良かった「起動」と「干渉チェック」を除くと、32bitと64bitは同等のパフォーマンス結果だった。
バックグラウンドでシミュレーションを実行したときの検証
32bitと64bitのどちらも、CPUがマルチスレッド処理のため、シミュレーションと同時並列作業をしても、単体プログラムのみ実行時と比較しても同等のパフォーマンス結果だった。
64bitにするメリットは?
今回の検証結果では、メモリ使用量が最大でも2GB程度だったため、顕著な差はできませんでしたが、やはり、64bitにする最大のメリットは大容量のメモリを搭載することができることです。大容量メモリを搭載することで以下のメリットが考えられます。
大規模データの処理が高速になる
部品点数が今回の検証モデルよりも多いデータや大量のファイルをCADで操作すると32bit搭載のメモリ容量では不足することがあります。この場合、32bitは、メモリ上に格納できない分のデータをディスクに一時的に退避したり、必要に応じてロードしたりするなどの処理を行っていますが、64bitのアプリケーションでは十分なメモリを搭載することができますのですべてオンメモリで保持、操作できるので、32bit搭載のメモリ容量で不足するような大規模データを取り扱う場合は、高速な処理が期待できます。
より多くのアプリの同時実行ができる
64bitでは利用可能なメモリ・サイズが多くなるため(システムに搭載したメモリをすべて利用できる)、同時に実行できるプロセスの総数が増えます。
例えば1つ当たり512Mのメモリを必要とするプログラムがある場合、4Gのメモリを搭載した32bit上では単純計算で6つ実行できます(利用可能なユーザー・メモリを3Gとした場合)。これが例えば8Gのメモリを搭載した64bitであれば、利用可能なユーザー・メモリは7G以上あるはずなので、14プロセス以上を同時に実行できます。もっとメモリが多ければ、さらに実行数を増やすことも可能となります。
一度使ったファイルの読み出しが高速になる
利用可能なメモリ・サイズが増えるため、システム・キャッシュとして使えるサイズも増加します。物理メモリはOSやアプリケーションのプログラムやデータなどを置くために使われますが、未使用の部分(空きメモリ)はシステム・キャッシュなどとしても利用することができるので、ここに、一度使ったファイルを残しておき、後で必要となった場合にディスクからではなくメモリから読み出すことができるため、高速に読み出しできます。
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