Inventorを使いながら追加コストなしで品質向上につなげるには?

2020年12月21日

製造業

今回はAutodesk Product Design & Manufacturing Collectionに搭載されている構造解析ソリューションであるAutodesk Inventor Nastran(以下Inventor Nastran)をご紹介します。

Inventor Nastranとは?

Inventor Nastranは、NASAのプロジェクトから開発された有限要素法構造解析プログラムNastran(NASA STRactural ANalysis)を起源としています。1990年にNei Software社が独自のブランドとしてリリースしたNei Nastanを2014年にAutodesk社が買収し、Inventor上で起動するようにしたものがInventor Nastranになります。

Inventorと同じく使い慣れたインターフェイスから操作し、構造解析の代名詞となっているNastranのソルバーにより高機能、高精度な解析を実行できることが特長です。

Inventor Nastranが必要な背景

Autodesk Product Design & Manufacturing CollectionはInventor Professionalを有しており、その中で構造解析を実行できます。

それでは、なぜInventor Nastranが必要になるのでしょうか? 確かにInventor Professionalは、静解析および固有値解析の機能を有していますが、製品に求められる性能要求が高まる昨今、これだけでは本当に製品に必要な評価ができないことがあります。

  • 軽量化
  • 金属疲労
  • 衝撃問題
  • ゴムなどの大変形
  • 座屈現象
  • 熱による変形
  • 振動問題 など。

表にInventor ProfessionalとInventor Nastranの解析機能を示します。表よりInventor Nastranは、さまざまな視点から製品の強度上の課題を解決できるソリューションを持っていることが分かります。

解析機能Inventor ProfessionalInventor Nastran
線形静解析
固有値解析
シェイプジェネレータ(トポロジー最適化)×
機構解析×
線形・非線形座屈解析×
非線形静解析×
線形・非線形動解析×
衝撃解析析×
疲労解析×
定常・非定常熱伝導解析×
熱応力解析×

例えば、図1に示す加工機について、アームに繰り返しかかる反力による金属疲労、薄肉形状のベース部品の座屈の有無、加工機が急停止したことによる振動挙動など広範囲にわたるシミュレーションが可能となります。また、Inventor Professionalのシェイプジェネレータも合わせて活用することで製品の軽量化も可能となります。

図1:加工機の構造解析

Autodesk Inventor Nastran 繰り返し荷重を受けるアームの疲労解析:アームが荷重を受けた際の応力分布、およびその荷重が繰り返された際に壊れるまでの回数の分布(疲労寿命)になります。疲労解析により、アームが設計仕様で決められている繰り返しの荷重に耐えられるか確認できます。

Inventor Nastranは設計者でも使えるか?

普段CAEをあまり使用しない設計者が専門の構造解析ソフトを使用することは、なかなかハードルが高いという問題がありました。しかも解析専任者向けのNastranを使うのはちょっと、と思われるかもしれません。

ところが、Inventor Nastranは図2に示すようにInventorのリボンパネルおよびブラウザーから構成され、リボンパネルから各種コマンドにアクセスする使い慣れたUIで操作することができます。また、CADモデルと統合されているため、設計作業の必要なときに解析を実行し、その結果を設計変更に反映し再度解析を実行するという一連の作業をスムーズに行えます。

図2:Inventorの表示画面

しかし、強力な解析機能を持ち操作性もよいInventor Nastranですが、Autodesk Product Design & Manufacturing Collectionをお持ちのユーザー様でも活用できないケースが多々あります。

それは、Nastran特有の解析条件の設定方法、各種解析の基礎理論、入力項目の意味、解析結果の評価方法などの知識が必要となるためです。これらは、設計者にとって独学で習得するのは時間がかかるものとなります。そのため、大塚商会でご用意しているトレーニングなどを受講いただくことをお勧めします。

解析(製造業向け)コース コース一覧

導入費用は?

Inventor Nastranを使用するためには、Autodesk Product Design & Manufacturing Collectionのライセンスが必要です。ほかの構造解析ソフトウェアと比較し、Autodesk Product Design & Manufacturing Collectionはサブスクリプションでの販売となっているため、費用を抑えて導入することができ、年度ごとにライセンスの増減も容易にできます。

最後に

以上のように、Inventor Nastranは多機能、簡単操作、低価格といった利点を合わせ持つ構造解析ソフトウェアです。これから構造解析ソフトのご導入を考えられている方は、比較検討としてInventor Nastranの紹介ページをぜひご覧ください。

Autodesk Inventor Nastran 製品情報

既に導入済みの方は、大塚商会のトレーニングをご活用いただき、さらなる製品品質の向上、開発工数の削減を目指し、一歩踏み込んだ強度検討の運用環境を構築してみてはいかがでしょうか。