【Autodesk Inventor】テクニカルイラストを描く方法 ~分解・断面・詳細図などが手軽に作れる~

2024年 7月16日

製造業

Autodesk Inventorを使って、分解図などのテクニカルイラストを描く方法をご紹介します。あらかじめ設定しておけば、元データの拘束を解除することなく、さまざまな状態を表示できます。描くというよりは「作る」感覚で、手軽に扱えます。

  • * この記事の環境は、Inventor Professional 2025 / Windows 10です。

完成図

この記事では、下図の簡易的なジャッキを完成図として操作の説明を進めていきます。

プレゼンテーション環境を使う

ここからの作業は、「プレゼンテーション環境」で進めます。これは分解図作成に特化した環境で、拡張子は.ipnです。この機能のメリットは、アセンブリの拘束には影響しないこと。通常のアセンブリファイルだと、分解図的表現にするには部品間の拘束を編集する必要があり、元データへの影響が懸念されます。

しかし、プレゼンテーション環境では心配はいりません。

1. プレゼンテーション環境に入る

新規作成からプレゼンテーションを選択します。

2. アセンブリを読み込む

環境に入ると、対象となるアセンブリファイル(.iam)を選択するウィンドウが出ます。適宜指示し、開きます。

アセンブリを読み込んだら、「ファイル」→「名前を付けて保存」で、とりあえず適当な場所に保存しておいてください。

3. 好きに分解する(ツイーク機能)

アセンブリを読み込んだら、動かしたい部品を選択します。そして右クリックし、「コンポーネントをツイーク」をクリックします。

動かす方向の軸線(矢印)をドラッグして、好きに動かして見た目を整えます。位置が決まったら「チェックマーク」をクリックして、ツイークを終了します。

4. スナップショットビューを作る

調整が終わったら、表示状態を保存します。右側の「スナップショットビュー」タブの中で右クリックし、「新規スナップショットビュー」を選択します。

スナップショットビューには、任意の名前を付けられます。また、複数作れます。ここでは、「分解図1」と名前を付けます。

5. 図面環境で.ipnファイルを配置する

あとは、図面環境で先ほど作ったプレゼンテーションファイル(.ipn)を配置すれば完成です。

図面環境(.idw)上で、「ファイル」→「ベース」をクリック。ファイルにプレゼンテーションファイル(.ipt)を指定すると、先ほど作った「分解図1」というビューが選べるようになっています。

「ファイル」→「エクスポート」→「DWGへエクスポート」でdwgファイルに出力すれば、他ソフトに受け渡すことができ、さらに編集が可能です。

6. 部分断面を使うと、さらに中身も図示できる

さらに「特定のパーツだけ、中身を見せる」ということも可能です。その場合は、部分断面を使います。

図面環境で先ほど配置したビューをダブルクリックし、ViewCubeで「前」をクリックして2次元表示にします。

ビューを配置→部分断面をクリックし、部分断面にしたい部分だけをスケッチで囲みます。スケッチが終わったら終了をクリックします。

深さを適宜調整します。今回は「開始点」を選び、「基準点」をクリックし、OKで閉じます。

すると囲んだ部分が断面表示されました。そのビューを選択したうえで、今度は左上の「投影」をクリックします。

斜め上に引き出すると、アイソメ図として図示できます。

7. ビューも便利です

分解図まではいらないけど、不要な部品を非表示にしたりして、状態別に構造を見せたい。……ということがあるかもしれません。

例えば、以下の3パターンを図示したいとします。

  • Default:全部を表示
  • 表示A:本体のみを表示
  • 表示B:送りねじを上げた状態で表示

この場合は、アセンブリ環境内でビューを作成すればOKです。

ビューとは、「表示状態を記憶させることができる機能」で、一度設定しておけば、以後は素早く切り替えられるのでとても便利です。

それでは、ビューを作成していきましょう。

1. アセンブリファイル(.iam)を開く

対象となるアセンブリファイルを開きます。

2. 新しいビューを作る

左側のモデルブラウザー内の「リプレゼンテーション」→「ビュー」を右クリック。
「新規作成」をクリックすると、新しいビューが作られます。名前は任意に決められます。ここでは、表示Aとしておきます。

3. ビュー「表示A(本体のみを表示)」を作る

ビューを作ったら、そのビューをダブルクリックしてアクティブにしてから、表示状態を編集していきます。アクティブなビューには、ビュー名の左側にチェックマークが入っています。

この課題では、「表示A」は本体のみを見せたいということですので、送りねじとロックナットを非表示にします。モデルブラウザーでパーツ名を選択し、Alt+Vキーで非表示にできます。

なお、アクティブな状態のビューで設定した内容は、自動的にそのビューに保存されています。

4. ビュー「表示B(送りねじを上げた状態で表示)」を作る

次に、ビュー「表示B(送りねじを上げた状態で表示)」を作ります。
ビューのツリーから「プライマリ」をダブルクリックしアクティブにして、デフォルト状態に切り替えます。

そして、ビューの次に連なっている「位置」という項目を右クリックし、新規作成をクリックします。これは、アセンブリの位置を制御するためのビューです。

作った位置のビューには、任意に名前を付けられます。

ここからは、作った位置のビューがアクティブな状態で作業を行います。

拘束をオーバーライド

送りねじの位置に影響する拘束を見つけます。ここでは、メイト6がそれにあたります。

メイト6のうえで右クリックし、「オーバーライド」を選択します。

開いたウィンドウの関係タブ→「入力」にチェックのうえ、任意の数値を入力します。

OKボタンを押すと、送りねじの位置が変わりました。

なお、位置のツリーで「プライマリ」をアクティブにすると、デフォルト状態に戻ります。

5. 図面環境で配置する

あとは、図面環境に配置すればOKです。配置時に先ほど作ったビューを選択できます。

デフォルト状態は、リプレゼンテーションのビュー選択時に全て「プライマリ」にすれば表示可能です。これで完成です。

手順は以上です。

モデルブラウザーから都度表示と非表示を切り替えるのは大変です。ビューを設定しておくと切り替えが数クリックで済みますので、手数が減ります。ぜひ活用してみてください。