【Autodesk Inventor】Inventorことはじめ。ファイルの種類やプロジェクトについて把握しよう

2025年 9月 2日

製造業

この記事では、Inventorを扱うための考え方を説明します。まずはファイルの種類や扱い方などの大枠を理解することで、その後のモデリング学習もスムーズに進められます。

今回は、Inventorを扱ううえでの基本となる三つのポイントに絞って説明します。

  1. Inventorのファイルの種類
  2. プロジェクトについて
  3. パックアンドゴーについて

動作環境

この記事の環境は、下記のとおりです。

  • Inventor Professional 2025
  • Windows 10

1.Inventorのファイルは4種類

Inventorで作るファイルの種類は、主に4種類あります。

  1. パーツファイル(拡張子ipt)
  2. アセンブリファイル(拡張子iam)
  3. プレゼンテーションファイル(拡張子ipn)
  4. 図面ファイル(拡張子idw)

ざっと見ていきましょう。それぞれのファイルは、新規作成から専用の環境に入って作業します。

パーツファイル(拡張子ipt)

部品を描く際は、こちらの環境を使います。基本的に単一部品ですが、モデリング時に複数のボディーに分けて、マルチボディーパーツとして表現することもできます。

アセンブリファイル(拡張子iam)

こちらは、装置の組み立て状態を表現する際に使います。複数のパーツファイルやアセンブリファイルを配置できます。配置されているファイルは、左側のブラウザーにツリー表示されています。

例:下図のアセンブリファイルには、「jackscrew」などのパーツファイルが構成部品として配置されています。

プレゼンテーションファイル(拡張子ipn)

こちらは分解図を作成できる環境です。アセンブリファイルの拘束には影響しないため、取扱説明書などの作成に役立ちます。

詳しい使い方は、過去の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。

【Autodesk Inventor】テクニカルイラストを描く方法 ~分解・断面・詳細図などが手軽に作れる~

図面ファイル(拡張子idw)

こちらの環境は、2次元図面を作成する際に使います。作ったアセンブリやパーツファイルを配置したり、寸法を入れられたりします。

2.プロジェクトの切り替えを、意識して作業する

Inventorには「プロジェクト」というシステムがあり、作業フォルダーや使うライブラリの参照先を設定できます。

Inventorでの作業時は「現在どのプロジェクトで作業しているのか?」を意識するようにしてください。プロジェクトを意識しない場合、意図せず別の取引先の設定を使ってしまう可能性があります。

取引先別にプロジェクトを用意しておきますと、作業場所や図枠のテンプレートの場所などを素早く切り替えられるようになります。活用すれば、取引先固有のコンテンツや設定を毎回探し回る……といった二度手間がなくなります。また、プロジェクトは.ipjという拡張子のファイルですので、受け渡しも可能です。

プロジェクトの設定画面は、何もファイルを開いていない状態で、ファイル→管理→プロジェクトをクリックすると表示されます。

プロジェクトの簡単な使用例を紹介します。

TEST-PJ プロジェクトでの新規作成画面

下図は「TEST-PJ」というプロジェクトを作った状態で、新規作成画面を開いています。また、以下のように調整しています。

  • 使う環境だけを表示(デフォルトでは、DINやANSIなどのテンプレートも表示されている)
  • 図面欄には、取引先の図枠を適用したカスタムテンプレートを表示

参考:デフォルトの新規作成画面
複数のテンプレートが表示されており、限られた環境しか使わない場合、分かりづらい。

このプロジェクトの設定は、下図のようになっています。テンプレートの格納場所は、下部のツリーのフォルダーオプション→テンプレートで指定できます。

テンプレート格納場所には、下図のようにテンプレートファイルを格納しています。

すると、新規作成画面で下図のように表示されるようになります。

ここで、図面欄の「template-a3.idw」「テンプレートを使用」を選択のうえ、作成をクリックしてみます。

すると、用意しているテンプレートを使った図面環境が立ち上がります。

3.Pack and Goで必要データを環境ごとひとまとめ。プロジェクトとして渡せる

データの受け渡しに必須なのが「Pack and Go」という機能です。3D CADのデータは、見かけ上一つのファイルを開いているだけに見えても、さまざまな場所のファイルで構成されていることが多いです。

そんな状況で問題が起きるタイミングが、外部へのデータの受け渡しです。作業しているファイル単体だけを渡しますと、当然参照先が存在せず、受け取った側で開きますとリンク切れのエラーが出てしまいます。

そこでPack and Goを使いますと、プロジェクトファイルや参照コンテンツなどをひとまとめにできます。Pack and Goを行うには、ファイル→名前を付けて保存→Pack and Goをクリックします。

一つのフォルダーに集約できる

例として、以下のような構造のファイルをPack and Goで、一つのフォルダーにまとめてみます。
Part1という名前のパーツファイルと、その図面ファイルが対象です。

  • part1.ipt
  • フォルダー1
    └Part1.idw

ファイル→名前を付けて保存→Pack and Goから設定画面を立ち上げます。元のファイルや宛先フォルダー、オプションを下図のように指定のうえ、1、2の順に検索ボタンをクリックします。

上図の2の検索ボタンをクリックしますと、対象のファイルを参照している図面ファイルが呼び出されますので、追加ボタンをクリックします。

ファイル数や必要なディスク容量を確認のうえ、開始ボタンをクリックします。

処理が終わったら、完了ボタンで閉じます。

終了後、宛先フォルダーを開きますと、以下のように全てのファイルが格納されています。

環境ごと受け渡せる

下図の宛先フォルダーを見ると分かりますが、パーツや図面データだけではなく、テンプレートなども格納されています。

そして、それらの設定をまとめたプロジェクトファイル(今回の例だとPart.ipj)も生成されています。このフォルダーを丸ごと渡し、受け渡し先のPCでPart.ipjをダブルクリックして実行します。

すると、フォルダーの中身がプロジェクトとして立ち上がりますので、相手のPCでも元の環境を再現できます。

下図は、Pack and Goで生成された宛先フォルダーのPart1.ipjをダブルクリックで実行し、新規作成画面を立ち上げた状態です。Parts1というプロジェクトが自動的にセットされており、テンプレートも表示されているのが分かります。

最後に

Inventorは多機能なため、初めて使う際は全容が分からず迷われることがあるかもしれません。まずは今回の記事のように扱うファイルの種類、受け渡し方法を理解し、環境設定から進めてみてください。受け渡しなどのファイル管理がスムーズになりますと、ソフトウェア習得のストレスも減り、設計効率が向上します。ぜひご活用ください。