製造業にも求められる「CDE(共通データ環境)」:Autodesk Docs活用による情報共有の最適化
2026年 2月13日
製造業

製造業の現場で設計のデジタル化(3D CAD化)は着実に進んでいますが、「最新の図面がどれか分からない」「設計変更が現場に伝わらず加工ミスが発生した」「Vaultで管理しているのは設計部だけで、他部署とはメールや紙でやり取りしている」などの課題を抱えている企業も多くいます。どれほど優れた設計データを作っても、それが関係者に正しく素早く伝わらなければ意味がありません。この課題を解決できるのが「CDE(Common Data Environment:共通データ環境)」です。
本記事では、CDEの概要と、Autodesk Docsを活用してエンジニアリング・チェーンを最適化する具体的な手法、そして既存のVault環境をどう拡張すべきかを解説します。
CDE(共通データ環境)とは?
CDEは、プロジェクトに関わる全ての関係者が「一つの信頼できる情報源(Single Source of Truth:SSOT)」にアクセスできるデジタル基盤です。
多くの企業がBoxやGoogle Drive、OneDriveなどの汎用ストレージを利用していますが、これらは「ファイルの箱」に過ぎません。製造業のデータには、CADの参照関係、属性情報、変更の経緯といった「コンテキスト」が含まれています。CDEはこれらを正しく保持し、誰でも理解できる形で確認できます。
「Autodesk Docs」を導入するメリット
設計部門以外でもCADデータを気軽に確認できる
Autodesk Docsなら、Webブラウザーさえあれば、現場のタブレットやスマホからCADデータを直接閲覧できます。「断面表示」「計測」「分解表示」などの操作を現場が自分で行えるようになることで、設計者への「これどうなってるの?」という確認にかかる工数を削減できるようになります。
変更箇所を自分で探す時間の削減
前の図面と「どこが変わったのか」を見比べる時間も、Autodesk Docsの導入で削減できます。Autodesk Docsを導入すれば、新旧バージョンを重ね合わせ、変更箇所を色分けしてハイライト表示されるため、誰でも瞬時に設計変更のポイントを把握できることが大きなメリットです。
作業指示が埋もれない
メールやチャットで幾つも作業依頼を出していると、必ず抜け漏れが発生します。Autodesk Docsを活用すれば、図面に直接「指摘事項(Issue)」を記載できます。「未完了、レビュー中、保留中、完了」のステータスで状況を管理できるので、修正漏れもなくなります。
また、関係者や責任者は指摘事項が更新されたときにメール通知を受け取ることができるため、都度状況確認の連絡をする必要もありません。
Autodesk Docsでエンジニアリング・チェーンを効率化
Autodesk Docsを活用すれば、「エンジニアリング・チェーン」を最適化することができます。具体的な手法について解説します。

Vaultの図面データ出力まわりの効率化
設計部門でVaultを活用している方はジョブプロセッサ(Job Processor)と呼ばれる自動化の仕組みを活用しているかと思いますが、この機能とAutodesk Docsを連携させることで、Vault上で図面のステータスを「承認(Released)」に変更したタイミングで、最新のスタンプ入りPDFが自動生成され、Docsの製造閲覧用フォルダーへ自動転送できます。
作成されたPDFをメールに添付したり、他社製クラウドストレージにアップロードしたりする作業を手作業でやっていた場合には、その業務を効率化することができます。
なお、Vault上のリビジョン(例:Rev.A)と、Docs上のバージョン(例:V5)は別物です。Docs側の「指摘事項」や「比較」を使う際、混乱しないように「PDFファイル名の中にVaultのリビジョンを自動で含める」設定にしておくと、現場とのコミュニケーションもさらに円滑になるので、ぜひ試してみてください。
- * Docsのバージョンは保存(上書き)のたびにカウントアップされるため、管理図面としては「リビジョン」を属性として表示させる運用が推奨されます。
指摘事項(Issue)の「カスタム属性」による不具合の見える化
標準のチャット機能だけでは、不具合情報の蓄積や分析はできません。Autodesk Docsの「指摘事項」機能に、独自のカスタム属性(例:加工不可、組付不良、コスト増加など)を追加しましょう。
現場や調達が気づいた懸念点を図面上にプロットし、属性を選んで発行。設計側はダッシュボードを確認するだけで、どのプロジェクトで、どのような不具合が何件起きているかをデータに基づいて把握できます。
半年後や1年後に「うちは設計ミスよりも加工現場から加工ができないといったクレームの方が3倍多い」といった統計を出すこともでき、「設計ミスを減らす努力(検図の強化)よりも、設計段階で加工のしやすさを考える(DFM:製造性を考慮した設計)仕組みを作るほうが、会社としてのリターンが大きい」と言った判断も可能となります。
協力会社とのやり取りを効率化
協力会社ごとに「共有フォルダー」を作成し、Vaultからの自動同期先に設定しましょう。変更が入った際は、Autodesk Docs上で「新旧バージョンの比較結果」を確認できるため、「どこを直したか」を説明するためにかかっていた工数を削減できます。
Vaultユーザーにこそ必要な「CDEとのハイブリッド戦略」
社内データの統制にVaultを使い込んでいる企業ほど、「なぜ今さらクラウド(Autodesk Docs)が必要なのか? 二重管理になるだけではないか?」と疑問を抱きます。ここからは、なぜAutodesk Docsを導入するべきなのかについても解説します。
Vaultで承認されたデータのみをAutodesk Docsへ
Vaultのデータを全てAutodesk Docsに移す必要はありません。Vault内で「承認(Released)」の印がついた成果物だけを、Autodesk Docsにコピーしてみてください。
Project Syncで自動同期し、ヒューマンエラーをゼロに
Vault Professionalの「Project Sync」機能を活用すれば、同期を手動でやる必要もありません。
Vaultで承認ステータスをクリックした数分後には、Autodesk DocsにPDFや閲覧用のモデルが反映されます。更新された時に事前に設定した方にメール通知を送ることもできるため、「メールで送るのを忘れた」「古い図面が現場に残っていた」というヒューマンエラーも防げます。
まとめ:製造業のDXは「データの置き場所」で決まる
本記事では、CDEの概要と、Autodesk Docsを活用してエンジニアリング・チェーンを最適化する具体的な手法、そして既存のVault環境をどう拡張すべきかを解説しました。
しかし、ツールの導入はゴールではありません。本記事を読んで、Autodesk Docsが自社にどのようなメリットをもたらしてくれるかが気になった方は、ぜひお問い合わせください。