【製造DX】設計・製造・保全部門をつなぐ「3Dデータ活用ルール」徹底解説

2026年 2月20日

製造業

製造DXでは、単にツールを導入することではなく、3Dデータを「正(マスター)」として全工程が同期する仕組みを作ることを目指すべきです。部門をまたいでデータが活用されない最大の原因は「誰が、いつ、どこまでの情報をデータに盛り込むか」という運用の共通言語(ルール)が決まっていないことにあります。

そこで本記事では、設計・製造・保全の3部門をシームレスにつなぎ、手戻りゼロ・工数削減を実現するための「3Dデータ活用ルール」作成の具体的手順を徹底解説します。

製造DXに「3Dデータ活用ルール」が必要な理由

3Dデータをルールなしに共有しても、使いにくいという声が上がるだけです。まずは、製造DXに「3Dデータ活用ルール」が必要な理由について解説します。

「情報の分断」による莫大な手戻りコスト

ルールがない現場では、設計変更の通知が製造に届く前に、古い2D図面で加工が始まってしまうことも少なくありません。3Dモデルと2D図面が二重管理されている状態では、どちらが最新かを確認する作業だけで、エンジニアの工数の20%が奪われているというデータもあります。

「解釈の揺れ」が招く品質のバラツキ

2D図面は「三面図から形状を読み解く」というスキルが必要です。そして、複雑な形状になればなるほど、人によって解釈が分かれ、それが加工ミスや組み付け不良につながっています。そのため、誰が見ても同じ形状を認識できる環境を整える必要があります。

デジタルツイン・AI活用への足掛かり

将来的にAIによる自動検図や、工場の稼働状況を仮想空間で再現する「デジタルツイン」を目指すなら、機械が読み取れる形式で情報が整理されていることが絶対条件です。ルール化は、単なる効率化ではなく、AIを活用するための事前準備でもあるのです。

【部門別】現場が抱える「3Dデータへの不満」と本音

ルールを決める前に、部門ごとに「3Dデータにどのような不満を抱きがちなのか」を理解しておきましょう。

まず、設計部門は「工数超過」がないかどうかを常に考えています。「どこまで作り込めば正解なのか」という指針がないままでは、設計者の負担だけが際限なく増え続け、士気の低下を招きます。

一方で、データを受け取る側の製造部門には「情報の不透明さ」への強い不満があります。画面上の3Dモデルは形状こそ直感的に把握できますが、加工に不可欠な公差や仕上げの指示がどこにあるか判別しにくいのが実情です。結局、正確な情報を求めて手元の2D図面を開き直すことになり、デジタル化がかえって非効率を生んでしまいます。

さらに、設備の維持を担う保全・サービス部門にとっては「アクセシビリティ」が大きな壁となります。工場の生産ラインや現場のタブレット端末では、数GBにも及ぶ巨大なアセンブリデータは重すぎて開けないこともあり、それだと3Dデータを使う方が業務に支障が出るといった状況になりがちです。

失敗しない「3Dデータ活用ルール」

ルールの作成において最も大切なのは、設計から保全までが1本のバトンでつながるような、無理のない流れを設計することです。ここでは、DXを成功に導くための五つのステップを具体的に説明します。

Step1:情報の粒度(LOD)を工程別に定義する

最初のステップは、データの「作り込みの深さ」を定義することです。これを専門用語でLOD(Level of Detail)と呼びます。

例えば、最初のアイデアを形にする構想設計の段階では、部品の細かいネジ穴まで描く必要はありません。外側のサイズ感が分かれば十分です。一方で、製造や保全の段階になれば、消耗品の交換に必要なスペースが確保されているかなどを確認するために、より詳細な情報が必要になります。このように「このフェーズではここまで描く、それ以上は描かない」というルールを明確に決めることで、設計者の負担を減らせます。

Step2:3D注記(PMI)の標準化と「見せ方」の統一

次に、3Dモデルの中に「寸法」や「表面のなめらかさ」といった加工指示を書き込むルールを整えます。これをPMIと呼びますが、ただ闇雲に数値を書き込めばいいわけではありません。画面上のあちこちに数値が散らばっていると、製造現場の担当者はどこを見ていいか迷ってしまいます。

そこで「寸法はこの向きの画面(ビュー)にまとめて表示する」「重要な公差は特定のレイヤーに書き込む」といった見せ方のルールを統一します。これにより、誰がモデルを開いても、まるで紙の図面を読むように迷いなく情報を読み取れるようになります。

Step3:用途に応じたデータフォーマットの最適化

3D CADのデータは、専用のソフトがなければ開けません。そこで、設計以外の部門には、目的に合わせた「軽いデータ」を自動で配る仕組みを作ります。例えば、製造現場や協力会社には、専用ソフトがなくてもブラウザーや無料ビューアーでサクサク動く「JT (Jupiter Tessellation)」や「3D PDF」といった形式で共有します。

これにより「データが重くて開けない」「ライセンスがないから中身が見られない」といった現場の不満を解消できます。

Step4:属性情報(メタデータ)のひも付け

3Dデータに持たせるのは、形(形状)の情報だけではありません。「その部品はどこのメーカーからいくらで買ったのか」「材質は何か」「次にいつ交換すべきか」といった「文字の情報(属性情報)」をデータの中に埋め込み、部品管理システム(BOM)とリンクさせます。

これができていると、保全現場でトラブルが起きた際、目の前にある部品をタブレットでタップするだけで、発注先やメンテナンス履歴が表示されるようになります。現場の調査時間削減につながることが大きなメリットです。

Step5:版管理(リビジョン)の自動化

最後に、データの「鮮度」を保つための仕組みづくりを行いましょう。設計変更が頻繁に起こる現場では、どれが最新のデータなのか分からなくなることがよくあります。

そこで、システム上で上長が承認ボタンを押した瞬間に、古いデータがアーカイブ(保管)され、現場に最新の「正」のデータだけが自動で配信されるワークフローを構築することがおすすめです。人間が手作業でフォルダーを移動させるのではなく、システムが自動で管理することで「古い図面で加工してしまった」というミスを根本的に防げます。

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