3D化率100%を目標にAutodesk製品の活用を推進フロントローディングを実現する

2026年 5月14日

製造業

株式会社シギヤ精機製作所

円筒研削盤専業メーカー株式会社シギヤ精機製作所は、3D設計および設計データと部品構成データの一元管理を目的に、「Autodesk Inventor」と「Autodesk Vault Professional」を導入。90%以上の3D化率を実現し、フロントローディングを実践しやすい環境が整い、手戻りの減少や短納期化などの成果を得ている。

事業内容工作機械類の製造及び販売業、工作機械の改造修理業
従業員数277名
サイトhttps://www.shigiya.co.jp/

真円度0を目指して高精度の円筒研削盤を開発する

広島県福山市に本社を置く株式会社シギヤ精機製作所(以下、シギヤ精機製作所)は、工作機械の一種である円筒研削盤の専業メーカーだ。創業は1911年。織機メーカーとして産声を上げたが、戦後から高度経済成長期へと移行しつつあった1958年、工業化の波に乗って工作機械メーカーに転身。同業他社がさまざまな工作機械の製造に乗り出す中、あえて円筒研削盤作り一筋に取り組んできた。

円筒研削盤とは、文字どおり砥石などを使って、金属をはじめとするさまざまな材質の部品を円筒状に研削する精密加工機械だ。削り出された部品は、車軸やローターなどの「回転する部品」として用いられることが多く、航空機や船舶、自動車、家電など、さまざまな機械を動かすために欠かせない。

技術部 開発課 課長 松本耕氏

「小さなものは数十グラム、大きなものは数トンと削り出す部品の大きさもさまざまです。回転させる部品は、きれいな丸になっていなければ滑らかに回らないので、非常に精密な研削技術が要求されます」

シギヤ精機製作所では、削り出される円筒が限りなく真円(ゆがみのない完全な円)に近づくようにするため、研削技術を磨き続けている。

「完全な状態である真円度0を目指す『0への挑戦』です。現実には実現不可能な目標ですが、極限まで迫れるよう日々努力を重ねています」と松本氏は語る。専業メーカーとして取り組んでいるからこそ、この領域にかけては同業他社に負けない圧倒的な技術の蓄積と実績がある。それが、極めて高い精度をもたらし、顧客企業からの絶大な信頼につながっているのだろう。

もう一つ、シギヤ精機製作所の信頼を支えているのは営業体制である。全国に五つの営業拠点を展開し、販売だけでなく納入した機器のメンテナンスなども行っている。何かあればすぐにエンジニアが駆け付けて対応してくれる頼もしさも、多くの顧客から支持される理由となっている。

シギヤ精機製作所本社外観。1984年に精密加工業に適した堅固な岩盤層から成る福山市箕島町に本社工場を建設・移転し、現在は敷地77,000m2、延べ床面積15,000m2を誇る

設計データとE-BOMの一元管理を目的にAutodesk社製品を採用

シギヤ精機製作所は、2011年に大塚商会を通じて3D CAD「Autodesk Inventor」(以下、Inventor)と製品データ管理(PDM)ソフトウェア「Autodesk Vault Professional」(以下、Vault)を導入した。長年、製品設計には2D CADを使用してきたが、「設計の3D化」という時代の流れに沿って、設計のあり方を刷新することにしたのだ。

さらに、同社が3D化を目指したのには、もう一つ大きな狙いがある。それは、設計データと設計した製品の部品・ユニット構成データ(E-BOM)を一元管理できるようにし、生産の効率化を図ることであった。

「以前は、2D CADで作成した設計データとその設計図から拾い出してExcelにまとめた部品・ユニットの構成表が別々に管理されていました。生産現場の担当者は複数の情報元から必要なデータを参照し、照らし合わせながら組み立て作業を行っており、非常に手間がかかっていました。構成表を間違えると部品の手配漏れなどのミスが起こりやすいという課題もありました。そこで、設計データとE-BOMをひも付けて管理できる仕組みを実現したいと考えたのです」(松本氏)

ノンカスタマイズでデータベースが構築できる

データの一元管理という目的に沿って、同社は2008年から3年がかりでベンダー3社とメーカー3社の製品を入念に検討。最終的に選んだのが、Autodesk社製品だった。

高品質の円筒研削盤をつくるために、部品一つ一つを最先端の機械設備と人の技と工夫で、高精度・高品質生産を実現

選定の決め手となったのは、「データの管理と連携が最もしっかりできる点でした」と松本氏は振り返る。

「製品データ管理ソフトウェアのVaultを使うことで、私たちが求めていた設計データとE-BOMの連携が理想に近い状態で実現できると評価しました。他社製品は、カスタマイズしないとデータベースを構築できないものが多く、Autodesk製品は唯一ノンカスタマイズで構築できることが魅力でした」と松本氏は明かす。

3D CADに関する知識が豊富で高いサポート力の大塚商会を選定

また、導入支援ベンダーとして大塚商会を選んだのは、3D CADに関する圧倒的な知識力や、万全のサポート体制を評価したからであった。

技術部は3D CADを活用した設計作業を行い、構造解析や干渉チェック機能により新規設計における初期完成度向上に加え、加工から組み立てまでの総合的コストダウンを図る

「他のベンダーは、3D CADは扱っていてもサポートに不安があるところがほとんどでした。その点、大塚商会は3D CAD関連で何か困り事が起こってもすぐに解決してくれるだけでなくデータ管理のために必要なサーバーの運用まで任せることができます。これは、社内に情報システムの専門部署がない当社にとって、非常にありがたいことでした」と松本氏。

工場内の組み立てエリアは四つのエリアで構成され、小型機から大型機の組み立てを行う。精密に加工された部品が高品質な機械へと作り上げられていく

松本氏が所属する技術部 開発課は、本来、新製品の開発・設計を担当する部署であるが、社員数が限られていることから、全社で使用するシステムやCADなどの導入・運用業務も担っていた。大塚商会にその業務の一部を肩代わりしてもらえれば、開発課は「本業」である製品の開発・設計に専念できる。その点が松本氏にとっては大きな魅力だったようだ。

今回大塚商会は本導入プロジェクトにおいて、アセンブリ構造の構築方法、原点位置などモデル作成方法の3D CAD運用支援、3DモデルからE-BOM生成、管理ができるPDM(製品データ管理)運用支援を実施した。

フロントローディングと手戻りの最小化を実現

こうして、2011年にInventorとVaultは導入された。今では新製品の100%が3Dで設計されており、既存製品のカスタマイズ設計も90%以上が3D化率を達成している。しかし、そこに至るまでの道は平たんではなかった。

「2Dから3Dへの移行を促すため、手順書の作成やルール作りなど、環境整備には多くの時間と手間を費やしました。おかげでカスタマイズ設計も含めて3D化率100%とする目標に近づきつつあります」と語るのは、技術部 開発課 主任の小谷拓也氏だ。

Vaultの活用によって、目標としていた設計データとE-BOMの一元管理を実現。大塚商会を通して開発したアドインでE-BOMを生産管理システムに連携できるようにし、BOM活用によって生産までの一貫性を保たれるようにした。

生産現場の効率をさらに高めるため、2020年以降は組み立ても3Dモデルを見ながらできるようにした。

技術部 開発課 小谷拓也氏

「従来は、3Dで行った設計とは別に、2Dで組立図を作っていましたが、設計者の作業負担を減らし、生産現場にはでき上がりをイメージしてもらいやすいように、あえて2Dで組立図は作らず、3Dモデルに注記を付けた設計データ、3D組立図を社内共有することにしたのです」

3DモデルからAutodeskのビューアーソフトである「Navisworks」と「Designreview」を利用して、ビューアーデータを閲覧しながら図面レスで組み立て作業ができるように取り組み、現在では組立図を2D図面で作成することがなくなっているのだ。

「モデル原点をルール化したことで、仕様の異なる製品の3Dデータの自動生成が可能になりました。今後は自動生成した3Dデータを営業の打合せや設計作業の効率化などに活用していく予定です」と小谷氏は語る。

移動可能な作業台車に設置されたモニターで、組み立て作業を行うための3Dモデルを確認する様子。組立図はなく注記が付いた設計データで情報を確認する

さらなるQCD向上を目指す

社内とはいえ、重要な設計データを異なる部門間でやり取りする必要性が生じたことから、同社はデータ暗号化システム「DataClasys」を導入。また、営業担当者に同行した設計者が顧客に製品のプレゼンテーションを行う際、社内のデータベースから3DモデルをPCに呼び出して提示することがあるが、その際のセキュリティを担保するために、大塚商会のリモートアクセスツール「たよれーるどこでもコネクト」も導入した。

大塚商会は、ハードウェアの導入支援に関しても定評がある。2026年には、シギヤ精機製作所の社内で約50台稼働している3D CAD用のHP製ワークステーションのうち、数十台を最新鋭モデルに刷新した。

「3D CADへの移行が進むにつれて、PCの立ち上がりや設計データの呼び出しに時間がかかるようになっていました。製品の肝となる設計作業において、これが設計者の思考を止めてしまう作業環境となっていたのです。刷新後はモデルの動作や編集操作のレスポンスが改善され、3Dデータを開く時間が大幅に短くなりました」(小谷氏)

設計から生産、営業までの全てが同じ3Dモデルを共有できるようになったことで、フロントローディングや手戻りの最小化が実現したことは最大の成果となった。「これからもAutodesk製品のメリットをさらに生かしながら、製品のQCD(品質・コスト・納期)を改善していきたい」と松本氏は今後の抱負を語った。

Otsuka & Autodesk Collaboration Day 2026で語られる成功の秘訣

3D化率 90%を実現したシギヤ精機製作所様の事例をもとに、立ち上げの支援を行ったエンジニアがその秘訣を語ります。
3D化に関しては多くの企業にて実現し成果を表していますが、BOMの構築と運用に関しては苦戦される企業が多いのが実情かと思います。今回その立ち上げの秘訣に迫ります。

【PM-S2】シギヤ精機製作所様事例から語る 3D化率向上とBOMの構築方法

Otsuka & Autodesk Collaboration Day 2026