早くから3次元設計の必要性を感じてきた同社が、3次元CAD Autodesk Inventorを初めて導入したのは2010年のことだった。その経緯を技術部の坂根氏はこう説明する。
「特に、干渉チェックによる設計段階での不具合の発見、手戻りの削減の取り組みは不可欠であると早くから感じていました。強度解析によって設計の最適化が図れることも3次元設計に魅力を感じた理由の一つです。搬送機械の設計では強度が常に大きな課題になるため、得てして強度に必要以上の余裕を持たせ過剰設計になりがちです。強度解析による最適化によって、製造原価の削減も可能になるはずだと考えました。そこで、Autodesk Inventorを1ライセンス導入し、検証を進めることにしました」
検証を進める中で浮かび上がったのは、流用設計に向けた取り組みの必要性だった。モデリング工数という新たな負荷が設計部門に生じる3次元CADの運用では、設計データの流用による工数削減が大きな意味を持つ。これまで一設計者が一案件を担当してきた同社にとって、設計資産の共有化は高いハードルだった。
「流用設計にあたっては、部品、組み立て品の親子関係を把握し、設計変更の影響がどこまで及ぶのか見通せることが求められます。また、ファイル上書きによる設計データ改変の防止など、リビジョン管理を厳密に行うことも必要になります。3次元設計の全社的な展開を図るうえで、こうした課題に対応していく必要があることを強く感じました」(坂根氏)