3次元データの有効活用により、プロモーション活動が強化され売上増加に貢献

2020年 8月 3日

製造業

日本電子株式会社

世界トップレベルの理科学機器メーカーとして市場から高い評価を得ている日本電子株式会社(JEOL Ltd.)は、より一層の飛躍を目指すため、業務改革の有効な手段として3次元CAD「Autodesk Inventor」を全社規模で導入。これにより、設計図面のデザインレビューの質が向上し、設計品質と業務効率を大幅にアップすることに成功した。

前回の事例から5年。当初の目標であった3次元CADのデータをプロモーション活動や営業活動といった設計以外の部門で有効活用することにより、全社レベルでの業務改善に大きな実績を残している。

  • (注1) 現在はAutodesk Product Design & Manufacturing Collectionに集約されている。

Autodesk Product Design & Manufacturing Collection 製品情報

1分で分かるInventorの導入効果

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会社全体の業務効率向上のため3次元CADの導入を積極的に推進

日本電子株式会社は世界的規模で高性能な理化学機器の開発・製造・応用などを推し進め、多くの実績と成果を上げている。そのうち、電子光学機器事業では、透過型電子顕微鏡の設計・製造を行っており、国内市場では約50%のシェアを誇り、国内と海外の売り上げ比率はほぼ半々だという。

また、医用機器事業では、主に病院で使用する血液や尿などの成分を検査する自動分析装置を手掛けており、全体の売り上げの2割程度を占めている。

同社では、3次元CAD「Autodesk Inventor」を積極的に活用し、現在は78ライセンスに増やし、約200名のユーザーが利用しており、設計の6割が3次元にシフトしている。特に電子光学機器事業と医用機器事業が、3次元化が最も進んでいる部署であるが、全事業部において新製品設計に3次元CADを使っているという。

3次元CADは、設計者にかかる負荷が大きいといわれるが、同社では、その点も織り込み済みだった。「当初から2次元設計よりも工数が2~3割余分にかかるだろうと予想していました。しかし、一度3次元でモデルデータ化しておけばそれを営業やアフターサービス部門などで2次加工して活用できるので、たとえ一時的に工数が増えたとしても、会社全体の業務効率が向上することで十分効果が得られると考えたのです」と財務本部 技術システム部 統括部長 安東努氏は語る。

同社は3次元CADは設計部門に限らず、会社全体の業務効率を高めるための有効なツールであると認識し、3次元化に徹底して取り組んだ。その結果、毎年3次元データが着実に増えつづけ、今では5万点あまりの部品が3次元データ化されているという。

技術統括本部 技術システムグループ 次長 安東努氏

展示会で新製品をPRするため実機を超えるリアルなCGを作成

さらに同社では、3次元データを設計部門以外でも有効活用するために、3Dアニメーション/モデリング/レンダリングツールAutodesk 3ds Maxと3DデザインレビューツールAutodesk Showcaseも新たに導入している。

そのきっかけになったのは、新製品を発表する展示会だった。電子光学機器の業界では、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、日本で年に4回程大きな展示会があり、従来は展示会までに新製品を完成させ、その製品写真を撮影してカタログなどの販促物を作成していた。

しかし、電子光学機器は小さいものでも企画から設計開発、製品完成までに2年くらいかかる。展示会までに新製品の完成がどうしても間に合わなくなり、急遽CGでリアルな完成イメージを作成し、それを出展することにしたのである。実際にAutodesk 3ds MaxとAutodesk Showcaseを導入する際には、社内のCADオペレーターが大塚商会の講習会に参加し、操作方法を習得。また、オートデスク社からもアドバイスをもらいながら徐々にスキルを高めていった。

実機では見えない部分もCGだからこそPRできると好評

同社では、これまでに三つの大きな展示会で新製品のCGを作成してプロモーション活動を行っている。

電子顕微鏡の中には、原子や分子を100万倍に拡大できる超高性能なものがあり、その高さは8mにも達する。これでは被写体が大きすぎて、通常のカメラでは一定のアングルからしか撮影できず、細かな部分まで見せることができない。そこで、その巨大な電子顕微鏡の完成イメージをCGでリアルに再現してパネル展示することにしたのだ。CGであれば、さまざまなアングルから新製品の機能を分かりやすくアピールできるため、ユーザーからも大変好評だったという。

一方、医用機器は、企画から製品完成までに3年くらいかかり、病院の規模に合わせて5、6種類のラインアップを用意して市場に供給している。医用機器は可動部分が多く、複雑な動きをするため、単に実機や写真を見せて説明しただけでは、その本来の良さを伝えることは難しい。そこで、同社では、医用機器の新製品を展示会で分かりやすくアピールするために、3次元データを活用して動画を作成する先進的な取り組みを行っている。

「医用機器は高さが数メートルになるものではなくて比較的小さなものが多いので、展示品の前に数人が立つと後ろにいる人たちが見られなくなってしまうのです。そこでCGに動きをつけた動画を作成し、ナレーションもつけた状態で大きなディスプレイで見られるように工夫したのです。普通のビデオ撮影では不必要な背景まで映ってしまうので、アピールしたいところが目立たなくなります。しかし、CGで作成した動画ならば、不要な部分は取り除いて重点的に伝えたいところだけをアピールできるので、その効果は非常に大きいと思います」と医用機器ソリューション営業本部 部長の川中士郎氏は語る。

医用機器ソリューション営業本部 部長の川中士郎氏

「CG動画の場合、1秒間に何回転するといった情報を事前にインプットしておくことで、リアルな動きを忠実に再現できるので、むしろ実機よりも説明しやすく、インパクトのあるプレゼンを行うことができます。そのため、来場者はもちろん社員からも非常に好評でした」と医用機器ソリューション営業本部 MEソリューション販促グループの梅野由里子氏は語る。

医用機器ソリューション営業本部 MEソリューション販促グループの梅野由里子氏

同社では、カタログ以外にもCG画像を活用する工夫も行っており、今後は取扱説明書やサービスマニュアルなどにも活用していきたいという。

医用機器CG例

Inventor導入のポイント(お客様の声)

  1. 操作性がよいこと「3次元CADを全社導入するためには、設計者全員が扱えるものでなければならなかった。新入社員から年配の方まで比較的簡単に使える操作性のよさを重視しました」
  2. 大規模アセンブリに耐えられること「以前設計検証用に導入した3次元CADソフトは、部品点数が増えると動きが極端に遅くなり、使用に耐えられなくなった。従って、5,000点から1万点の部品を入力してもスムーズに動くものを選びました」
  3. 将来性・拡張性
  4. コストパフォーマンス

大塚商会のサポート支援も受けて順調に稼働

パイロットプロジェクトによる製品開発を本格的にスタートするにあたっては、事前に大塚商会のコンサルティングや教育サービスを有効活用し、万全な体制で臨んだ。また、パイロットプロジェクトの発足から実際の製品開発を行うまでの半年間に、これまで2次元CADで作成したデータをテーマごとに3次元データに移行すると共に、全社的に3次元CADを導入する際のルールづくりや標準化などの作業も併せて行った。

「3次元CADを使って、仕事のやり方を変えることが大きなテーマだったので、我々がやりたいことを3次元CADを使って実現していく仕組みづくりに一番苦労しました。しかし、大塚商会のコンサルタントの方にいろいろ協力していただいたので、事前にやるべきことは一通りできたと思います」と安東氏は振り返る。

その後もスキルテストを作成・実施し、合格者だけにCADを使える権利を与える規則なども作り、設計者の日々のスキルアップにも大塚商会が貢献した。

よりスムーズな導入に大塚商会がご提案可能なサービス

大塚商会では充実したサポート体制・豊富な支援内容で導入~定着、さらなる活用までトータルでお客様をサポート。導入効果を最大限に引き出し、安心して運用できる環境をご提供します。

個別コンサルティングサポート

基礎知識や操作教育から設計環境の構築・実践的型教育まで多岐にわたるサポートをご提供します。

スキルチェックアセスメント

社内トレーナーの育成や設計者のスキルチェックを目的とした、認定制度作成を支援します。操作習得スキル、設計可能レベルの2段階評価基準により、習得レベルを判定します。

アセンブリ設計手法サービス

アセンブリ設計手法を元に御社製品に合わせた設計アプローチの提示と教育を実施します。

コンサルティング

基礎知識&操作教育

3D CAD定例スクール(基礎・応用・アセンブリなど)
大塚商会の研修施設で定期開催されているオープンコースのほか、企業様向けにカスタマイズした研修も行っています。

Autodesk Inventor コース一覧

CAD利用時の「困った」を解決するサポートサービス

CADの知識が豊富なメーカー認定エンジニアが常に待機。専門的なCADのお問い合わせに対応します。

オートデスクセミナー(無償)

新バージョン紹介やCAD活用講座、また導入検討企業向けの体験セミナーなど来場型やオンライン型にて開催しています。

イベント・セミナー

  • * これらのサービスはご提案可能なサービスのほんの一部です。