ベストプラクティス運用 ~樹脂流動解析ソフトの活用による設計期間の短縮~

2020年 8月27日

製造業

「プラスチック樹脂成形品の設計において、成形性の検討不足により試作段階で成形不良が発生することから、金型修正・改造費の増加、開発期間の長期化といった問題が出ている」

このようなお困りごとを大塚商会が改善のお手伝いをさせていただいた一例をご紹介します。同様のご相談を多くいただきますので、支援例のご参考にしてください。

お困りごと

  • ウェルドライン、ショートショット、ヒケといった外観不良が問題となる。
  • 反り変形が生じ意図した形状にならない。
  • 成形ノウハウが無く、同じ失敗を繰り返してしまう。
  • 不良の改善で設計変更や開発期間が長期化している。
  • 問題となる成形不良:ウェルドライン

  • 問題となる成形不良:ショートショット

  • 問題となる成形不良:反り変形

  • 問題となる成形不良:ヒケ

問題点

設計者は意匠、強度、機構の検討などやる作業が多く、成形性については素人で判断ができないため、専門家である金型・成形メーカーに任せていた。試作した後、製品形状に起因する反り変形などが生じ、設計変更(手戻り)に多くの時間・コストを割いていた。

また、不具合修正を金型・成形メーカー任せにしたため、ノウハウはたまらず同じ間違いを繰り返していた。

  • 設計者は成形性については素人で判断できない。
  • 金型、成形メーカー任せになっている。
  • 成形性改善のノウハウがたまらず何度も同じ間違いをする。

問題点による影響

不良改善のため設計変更の繰り返し

  • 試作回数⇒平均2~3回(1回約10万)
  • 金型修正・改造費⇒平均3~4回(1回約5万)
  • 試作・修正1回当たりの打ち合わせ日数⇒平均3~6日
  • 開発期間の長期化

大塚商会が解決のお手伝いをさせていただきました

そこで、樹脂流動解析を導入することにより、金型内部の樹脂の流れを可視化し試作前に成形不良の事前チェックを実施しました。その結果、試作回数が減少し工数削減が図れました。

樹脂流動解析ツール導入後の設計フロー

効果

試作前の解析で問題点を確認することで、次のような効果を得られるようになりました。

  • 形状チェックリストを作成し設計時のチェックをルール化
  • バーチャル検証で金型内部を可視化
  • 形状問題をつぶしこみ、金型品質の向上

設計変更(手戻り)を事前チェックすることで、例:試作1回・修正2回が削減できるように。コストに換算すると試作10万+修正5万×2=20万(1製品当たり)になります。

これが塵も積もれば、大幅なコストカットが実現できます。

試作・修正計3回×打ち合わせ3日=9日
年間30製品とすると⇒20万×30製品=600万削減
日×30製品=実働270日削減

また、コストだけでなく設計者の技術力向上にもつながります。

  • 設計した形状に対し理論的な説明が可能になった。
  • 解析結果のデータがノウハウとなり次世代へ継承。
  • 成形現場での作業を解析ツールで補える。

設計時に形状の事前チェックをルール化することで設計不良の早期発見、改善が可能となりました。また、樹脂流動解析による事前検証を行っているため設計変更依頼が少なくなり、金型の修正・改造回数の削減で品質・寿命を向上することができました。

本件は参考例となりますが、環境・状況に合わせた運用改善のポイントはお客様ごとに多数存在すると思います。さらなる生産性の向上を目指し、いま一度プラスチック樹脂成形品の不具合対策について見直してみてはいかがでしょうか。