【Autodesk Inventor】iLogicを使ってみよう。ユーザー自身で手軽にカスタマイズできます
2024年 9月20日
製造業
Autodesk Inventorの機能、「iLogic」の使い方をご紹介します。
iLogicは、ユーザーがInventorをカスタマイズするための機能です。プログラミングの負担が比較的少ないですので、ユーザー自身が手軽に機能を追加して、作業の効率化を試せます。
動作環境
この記事の環境は、下記のとおりです。
Inventor Professional 2025 / Windows 10
今回行うカスタマイズ
今回はiLogicを使って、「ビュー一覧を表示し、アクティブなビューを任意に切り替えられるウインドウ」を作ります。
今回、iLogicで作ったウインドウ
なお、ビューの切り替えは、デフォルトでもモデルブラウザーから可能です。しかし、モデリングが進んでブラウザーの情報が増えると、都度、上方までスクロールが必要になります。
この作業を何度も繰り返すのは負担になりますので、手軽に移動できるウインドウを作ってみましょう。
通常のビュー切り替えメニューの位置
ipartの作り方
1.パーツ環境に入って、サンプルファイルを作る
始めに、パーツ環境に入って、作業を始めましょう。適当に3Dモデルを描いて、幾つかのビューを作っておきます。
今回は、以下のビューを作りました。
- 正面
- 上
- 右
- 断面
1-1.ブラウザーに、iLogicタブを表示しておく
管理タブ→iLogicパネル→iLogicブラウザーをクリックします。
すると、画面左のモデルブラウザーの横にiLogicタブができます。ここで、作ったものを管理します。
2.カスタムリストを作る
ここで、ビューの名前を格納するための器であるカスタムリストを作っておきます。
管理タブ→パラメーターをクリックします。左下のドロップダウンメニューから「テキストを追加」を選び、ユーザーパラメーターのテーブルに行を追加します。
左端の列に、任意の名前を入れてください。ここでは「view」という名前にしておきます。
次にviewの行の計算式の列で右クリックし、「マルチバリューを作成」を選びます。
「カスタム値を許可」にチェックを入れ、OKをクリックします。
右下の完了をクリックし、この画面を閉じます。
3.「ルール」を作る
「ルール」を作ります。iLogicでは、プログラムのまとまりを「ルール」と呼びます。ルールは、VB.NETの文法で記述できます。
今回は、以下の二つのルールを作ります。
- ルール0:ビューを取得して、パラメーターに格納するルール
- ルール1:アクティブなビューを切り替えるルール
ルールの編集画面を立ち上げる
ルールの編集画面は、管理タブ→iLogicパネル→ルールを追加をクリックします。
ルール名を入力し、OKをクリックすると「ルールを編集画面」が立ち上がります。
右下のエリアに、プログラムコードを入力します。
ルール0
ビューを取得して、作ったパラメーターに格納する「ルール0」を作ります。
以下のような流れで、処理します。
- Inventor APIを使ってビューの一覧を取得し、ArrayListコレクションに格納
- 1.で作ったArrayListの内容を、先ほど作った「view」というパラメーターに格納
以下のコードをルールに入力し、右下の「保存して実行」ボタンをクリックして、画面を閉じます。
'ルール0 ビューのリストを取得する
Dim MyAL As New ArrayList
Dim Designviews = ThisDoc.Document.ComponentDefinition.RepresentationsManager.DesignViewRepresentations
For Each s In Designviews
MyAL.Add(s.Name)
Next
MultiValue.List("view") = MyAL
ルール1
アクティブなビューを切り替える「ルール1」を作ります。パラメーターの内容に応じて、ビューをアクティブにする処理です。
先ほどと同様にルールの編集画面を立ち上げ、以下のコードを入力します。
'ルール1 アクティブなビューを切り替える。
Dim Designviews =
ThisDoc.Document.ComponentDefinition.RepresentationsManager.DesignViewRepresentations
repvname = Parameter("view")
Designviews.item(repvname).activate()
右下の「保存」ボタンをクリック→「閉じる」ボタンを押して、画面を閉じます。
4.ウインドウの外観を作る
次はウインドウの外観を作ります。簡易的ではありますが、iLogicにはウインドウを作る機能が用意されています。
管理タブ→フォームを追加をクリックします。
名前は任意で付けられます。今回は、ビュー切替としておき、OKボタンをクリックします。
すると、フォームエディターが立ち上がります。エディターの右横に浮かんでいるのは、作るウインドウのプレビューです。このフォームエディターで、ウインドウの外観を作っていきます。
フォームエディターの左側に表示されている、先ほど作ったパラメーター名の「view」を右側にドラッグします。
すると、フォームエディターとプレビューに「view」という項目が追加されました。
これから見た目を整えます。フォームエディター上で、「view」という項目を選択します。
下側の「プロパティパラメーター」というエリアに、設定可能な項目が並んでいます。
今回は、以下の設定にしておきます。
- 動作→コントロールタイプを編集:「リストボックス」を選択
- 外観→表示する最小項目数:10
フォームエディター右下のOKボタンをクリックします。
5.作った「ルール」をウインドウに追加する
iLogicタブから、先ほど作ったフォームの名前を右クリック→編集をクリックします。
立ち上がったフォームエディターの左側から、先ほど作ったルール名を右側のエリアにドラッグ&ドロップします。
まずはルール0をドロップ。プロパティルールのラベル名を、「ビューを取得」にします。
次はルール1をドロップ。
プロパティルールのラベル名を「切替実行」にします。
ルールとパラメーターは、ドラッグすれば並べ替えられます(ウインドウの見た目の順番に影響します)。
OKで閉じます。
6.試運転
これで準備が整いました。ブラウザーのiLogicタブ→フォームから、先ほど作ったフォーム「ビュー切替」をクリックします。
適当にビュー名をクリックして、下の切替実行ボタンを押してみてください。
切り替わりました。成功です。
いったん、完了ボタンで閉じてください。
モデルブラウザーで、ビュー名「右」を消します。その後、先ほど作ったフォーム「ビュー切替」を立ち上げます。
ビューの一覧を見ると、先ほど消したはずのビュー「右」が残っています。そこで、上の「ビューを取得」ボタンをクリックします。
すると、ビューの内容が更新されました。
手順は、以上です。
7.最後に
今回は少ないコードで、従来の「何度もブラウザーをたどってビューを切り替える」という手間を削減することができました。
内容によっては、開発環境を使ったアドインの作成など、高度な機能拡張が必要になることもあるでしょう。しかし、日々の作業の効率化において、iLogicでできることは、たくさんあります。
ぜひ活用してみてください。