【Autodesk Inventor×3ds Max】商品画像風のCGを自力で作る方法
2024年11月 1日
製造業
この記事では、3D CAD「Autodesk Inventor」と3D CG制作ソフト「Autodesk 3ds Max」を使って、商品画像を作る方法をご紹介します。
プレゼンテーションなどのため、商品のCGが必要になることがありますよね。普段はCADがメインで3D CGソフトは使う機会がない、慣れていない……という方に向けて、メインの3DモデルはAutodesk Inventorで作成し、以降の工程だけを3ds Maxで行う方法をご紹介します。
動作環境
- 3Dデータ作成(モデリング):Autodesk Inventor Professional 2025
- マテリアル設定~レンダリング:Autodesk 3ds Max 2025
- Windows 10
今回作る画像
今回は、金属光沢があるスパナを作ります。
使用レンダラー:Arnold
画像作成に必要な工程
具体的なソフトの操作説明に入る前に、作業の流れをご紹介します。大まかには、以下の五つの工程が必要です。
- モデリング(3Dデータ作成)
- マテリアル設定(材質の見た目を設定)
- ライティング(光の設定)
- カメラの設定(構図を決める)
- レンダリング(画像を生成)
慣れないソフトでいきなり全ての工程をこなすのは大変です。普段 3D CADを使われている方は、モデリングはそちらでやってしまいましょう。負担が軽減できます。
この記事では、Inventorで3Dデータを作成し、その後の処理を3ds Maxで行います。
まずは慣れた3D CADでモデリング
先述のとおり、この記事では3DモデルはInventorで作っておきます。
ファイルは、通常どおりパーツファイル(.ipt)として保存しておいてOKです。3ds Maxでは、直接Inventorのiptファイルを指定して、読み込めます。
3ds Maxへ3Dモデルをインポート
ここからは3ds Maxでの作業です。ファイル→読み込みを選択、先ほど作ったパーツファイルを選び、開きます。
オプションメニューが表示されたら、画面のように設定してOKをクリックします。設定値は、デフォルトで構いません。
読み込みに成功しました。
Inventor Interoperabilityのインストールが必要な場合があります
環境によっては、「Inventor Interoperability」というコンポーネントのインストールを求められる場合があります。これはInventorファイルを読み込むために必要ですので、画面に従ってインストールしてください。
3ds Maxの設定
次に3ds Maxの環境設定を行っておきます。「Arnold」というレンダラーを使える状態にしておきましょう。
上部メニューバーのレンダリングからレンダリング設定をクリックし、以下のように設定しておきます。必要に応じて適宜変えてください。
- ターゲット:ActiveShadeモード
- レンダラー:Arnold
- 共通設定パネル→▼共通設定パラメーター→レンダリング範囲:ビュー、出力サイズ:1,280×720
- Arnold Renderパネル→▼Compatibility Mode→ Mode:Arnold Compliant
- Systemパネル→▼Device→Render Deviceリスト:GPU(PCに搭載したグラフィックボードで処理したい場合。未搭載ならCPU)
設定が終わったら、右上の閉じるボタンで閉じます。
オブジェクトの位置などの調整方法
次項からは、立方体やカメラ、ライトなど、オブジェクトと呼ばれる要素を作っていきます。これらは、それぞれ位置や大きさを適宜調整できます。必要に応じて操作してください。
移動
動かしたいオブジェクトを選択してから、メインツールバーの「選択して移動」ボタンをクリックします。するとギズモと呼ばれる3軸のハンドルが表示されるので、動かしたい方向の軸をつかんで、ドラッグし、任意の位置に移動します。
数値で制御したい場合は、「選択して移動」ボタンを右クリックします。すると、入力画面が表示されます。
回転
回転する場合は、動かしたいオブジェクトを選択してから、ツールバーの「選択して回転」ボタンをクリックします。するとギズモが表示されるので、動かしたい方向の円をつかんで、ドラッグして、任意の角度に移動します。こちらも移動と同じく、ボタンを右クリックすると数値を入力できます。
スケール(オブジェクトの大きさを拡縮)
オブジェクトの大きさを変えたい場合は、動かしたいオブジェクトを選択してから、ツールバーの「選択して均等にスケール」ボタンをクリックします。
するとギズモが表示されるので、動かしたい方向の三角形内で、ドラッグして、大きさを調整します。つかむ領域によって、スケールされる範囲が変わります(中心側なら、全体が拡縮)。こちらも移動と同じく、ボタンを右クリックすると数値を入力できます。
背景を作る
現実での写真撮影と同じく、背景の有無で仕上がりが大きく変わります。何もないと光が回らず真っ暗になりますので、作業空間に立方体の簡易的なスタジオを作っておきましょう。
立方体を作る
画面右側のコマンドパネル→作成ボタン→ジオメトリボタン→ボックスをクリックします。
底面と高さを適当にドラッグすると、立方体ができます。位置や大きさは後で調整できますので、大ざっぱで構いません。
左側のシーンエクスプローラーを見ると、Box001というオブジェクトが追加されています。
オブジェクト名の左、目のマークをクリックすると、オブジェクトの表示・非表示を切り替えられます。
部位に応じて、IDを設定しておく
スタジオの床とそれ以外の部分に、それぞれ異なるIDを設定しておきます。この作業を行っておくと、後のマテリアル設定で床とそれ以外の部分に別々の色を設定できるようになります。
ID:1の設定(天井と壁)
メインツールバーの「オブジェクトを選択」をクリックし、ビューポート上で、先ほど作ったオブジェクト(Box001)を選択します。
画面右側のコマンドパネル→修正ボタンをクリックします。「モディファイヤ リスト▼」をクリックし、プルダウンメニューから「ポリゴンを編集」を選択します。
- モディファイヤ スタック内の「▼ポリゴンを編集」の▼マークをクリックし、展開します。
- 5番目の行の「要素」を選択し、
- ビューポート内のオブジェクトをクリックすると、全ての面が選択されます。
修正パネルを下にスクロールして、「▼ポリゴン:マテリアルID」内、「IDを設定:」の横の欄に1と入力し、Enterで確定します。
確定したら、ビューポート内の何もないところをクリックし、オブジェクトの選択を解除しておいてください。
ID:2の設定(床)
- 4番目の行の「ポリゴン」を選択します。
- そして、底の面をクリックして選択します。床の面が選択しづらければ、「Alt+マウスのホールボタンをドラッグ」で、ビューを回転できます。
- 修正パネルを下にスクロールして、「▼ポリゴン:マテリアルID」内、「IDを設定:」の横の欄に2と入力し、Enterで確定します。
確定したら、ビューポート内の何もないところをクリックし、オブジェクトの選択を解除しておいてください。
マテリアル(材質)設定
3Dモデルに質感を与えていきます。この項目の設定は、「スレート マテリアル エディタ」で行います。メインメニューの「マテリアルエディタ」ボタンをクリックすると、エディターが立ち上がります。
背景
画面左側のブラウザーに、さまざまなマテリアルの一覧が表示されています。
- 一覧から「+Materials」の+をクリックして展開し、
- Arnold→Surfaceの中の「Standard Surface」をダブルクリックします。
- すると、画面中央のビューに、マテリアルが表示されます。ビューに表示されたマテリアルを、「ノード」と呼びます。このノードを選択します。
- 今度は右側に設定パネルが表示されます。ここで、さまざまなパラメーターの数値を編集します。
天井と壁のノードを作る
ノードの設定項目はいろいろありますが、ここでは以下の設定値にしておきます。
- 名前:bg(デフォルトではMaterial #nとなっている箇所です)
- ▼Base→Base color:0.8、色:ffffff(白色)
- ▼Specular→General:0
床のノードも作る
- 先ほど作ったノードを選択し、Shiftキーを押しながらドラッグします。すると、ノードが複製できます。
- 複製したノードを選択し、パラメーターを編集しましょう。
- 色を変えたいだけですので、右側の設定パネルで、以下の項目を編集しておきます。
名前:bg_f
▼Base→Base color: 0.8、色:BFD7FC - 3.の設定値の「BFD7FC」は16進数のカラーコードで、白い四角形をクリックすると設定できます(青紫のような色になります)。
オブジェクトに適用する
先ほど作ったノードを、背景のオブジェクトに紐づける作業を行います。
- 左のブラウザーから「+マテリアル」の+をクリックして展開
- 一般→「マルチ/サブ オブジェクト」をダブルクリックします。
ここで、「スレート マテリアル エディタ」をいったん最小化し、メインの編集画面に戻ります。画面右のコマンドパネルのモディファイヤ スタック内、「▼ポリゴンを編集」の「▼ポリゴンを編集」をクリックします。すると、Box001のオブジェクト全体が選択された状態になります。
そして、「スレート マテリアル エディタ」を最大化します。
- 先ほど追加した「マルチ/サブ オブジェクト」ノードを選択
- 「マテリアルを選択へ割り当て」ボタンをクリックします。
すると、このノードが背景として作ったオブジェクトBox001に適用されます。
しかし、最小化してオブジェクトの様子を見てみますと、見た目は真っ黒ですね。
ここで、「スレート マテリアル エディタ」に戻ります。二つのノードbgとbg_fを、「マルチ/サブ オブジェクト」の(1)と(2)につなぎましょう。
ノードは、ノードの端点をドラッグすれば接続できます。このカッコ内の番号は、先ほど設定したIDと一致します。
もう一度オブジェクトの様子を見ると、床とそれ以外に違う色が適用されていることが分かります。
次はスパナを編集しますので、このオブジェクト(Box001)は非表示にしておいてください。オブジェクト名の左、目のマークをクリックすると、オブジェクトの表示・非表示を切り替えられます。
スパナ
引き続き、マテリアエルエディタで設定を行います。今度は、スパナのためのノードを作ります。
- 左のブラウザーから「+Materials」の+をクリックして展開し、Arnold→Surfaceの中の「Standard Surface」をダブルクリックします。
- 追加されたノードを選択します。
- パラメーターを編集しましょう。右側の設定パネルで、以下の項目を編集しておきます。
▼Base→Base color: 1.0、色:E6E6E6
▼Specular→General: 0, Roughness: 0
▼Advanced→Metalness:1.0
編集が終わったら、
- スパナのオブジェクト全体を選択し、
- マテリアルエディタでノードを選択して
- 「マテリアルを選択へ割り当て」ボタンをクリックします。
すると、このノードがスパナに適用されました。
カメラの設定
カメラオブジェクトを配置しておきます。最終的に出力される画像は、「このカメラオブジェクトを通じて見た光景」というイメージになります。
構図を決めて、ビューに表示
まずは、ビュー内でズームしたり回転したりして、構図を決めてください。
- ズーム:マウスのホイールボタン
- ビューの回転:Alt+マウスのホイールボタンをドラッグ
- パン(移動):マウスのホイールボタンをドラッグ
(必要に応じて)背景の位置やサイズを調整
構図をざっと決めたら、非表示にしていた背景(オブジェクト「Box001」)を表示してください。もしも背景が画面を覆ってスパナが見えなかったら、背景が小さすぎるので、大きくしましょう。
オブジェクトの移動、回転、拡縮の方法は、先述の項「オブジェクトの位置などの調整方法」をご覧ください。
今回の背景とスパナは、下図のようなバランスです。
カメラを作成
構図が決まったら、ビュー左上のビューポート ラベル メニューをクリックし、「パース」に設定しておきます。
そして、上部メニューの「ビュー」→「ビューから標準カメラを作成」をクリックします。
すると、ビューの見え方に応じたカメラ(Camera001という名前のオブジェクト)が作成されます。
ただし、このままだと、カメラの視点で固定されたままになります。引き続き、いろいろな編集を行う場合は、ビュー左上のビューポート ラベル メニューをクリックし、「パース」に戻しておいてください。
カメラの視点に戻したくなったら、ビューポート ラベル メニューで、カメラを選べばOKです。素早く切り替えたい場合は、キーボードの「c」キーを押してください。
ライティング
次は照明です。現実での写真撮影のように光を当てて対象物を演出します。
最終的なライトの配置
最終的には下図のように、スパナの周囲にライトを四つ配置します。配置はこれが絶対の正解ではありません。対象に応じて、配置を工夫してみてください。
ひとまず、ライトを一つ設置
まずは一つ、ライトを作ってみましょう。
- 画面右側のコマンドパネル→作成ボタン→ライトボタンをクリックします。
- プルダウンメニューから、「Arnold」を選択します。
- ▼オブジェクトタイプの中の、「Arnold Light」ボタンをクリックします。
- ビューの中で任意の位置をクリックして、ライトを配置します。
位置を調整
このライトを調整します。移動、回転ツールを使って動かしていきましょう。アイソメビューでの移動、回転が難しい場合は、ビューの向きを適宜変えながら作業してください。
例えば、ビューポート ラベル メニューで「フロント」に切り替えますと、正面からみたビューになります。
オブジェクトの移動や回転方法は、先述の「オブジェクトの位置などの調整方法」をご覧ください。
設定値を調整
- 配置したライトを選択して、
- 右側のコマンドパネル→修正ボタンをクリックします。赤枠のエリアでライトの大きさや強度など、パラメーターを設定できます。
今回は、下図四つのライトを以下のように設定します。
レンダリング
レンダリングとは、3Dモデルから画像を生成する工程です。これまでに設定したマテリアル、光などの情報を基に計算されます。なお、レンダリングは最終完成時だけではなく、ライトの配置やマテリアル設定など、各工程で見た目が気になったら随時実行して確認してください。
早速レンダリング
レンダリングしたい作業中のビューをクリックしてアクティブにしてから、上部メニューのArnold→Arnold Renderviewを選択します。すると、レンダリングフレームウィンドウが立ち上がります。
右上にあるボタンを押すると、レンダリングの開始/停止を制御できます。右三角なら開始、四角は停止です。キーボードの「s」を押すると、レンダリングの経過の記録として、スナップショットを撮ることができます(下図下側)。
File→Save image でできた画像を保存できます。
手順は、以上です。
最後に
3ds Maxは3Dモデリング、アニメーション作成なども行える統合ソフトですので、最初から全てに習熟しようとすると圧倒されてしまいますよね。しかし、今回のように一部の機能を使うことから始めれば、少しずつ慣れられます。CGソフトを使うとさらに表現の幅が広がりますので、ぜひ活用してみてください。