機械装置設計をワンストップソリューションで解決。設計~解析~データ管理でProduct Design & Manufacturing CollectionとVaultを徹底活用

2025年 1月27日

製造業

株式会社パウレック

医薬品・食品・化学業界向け粉粒体装置の開発・製造・販売を手掛ける株式会社パウレック(以下、パウレック)。長年にわたってオートデスク製品を利用してきた同社は現在、高品質なエンジニアリングツールセットである「Autodesk Product Design & Manufacturing Collection(以下、PDMC)」とPDMである「Autodesk Vault Professional」を導入し、製品の3D設計から構造解析、データ管理までさまざまな業務のなかで活用している。さらに、設計業務のみならず、保守・メンテナンス業務の効率化にも役立てているという。

事業内容医薬品、食品、電池電子部品および化学業界向けの粉粒体処理機械装置の開発、製造、販売
従業員数162名
サイトhttps://www.powrex.co.jp/

オートデスク製品の使用拡大とともにデータの共有・管理の課題に直面

パウレックは、医薬品・食品・化学・電池電子部品などさまざまな業界向けに粉粒体処理技術を用いた装置・機器の開発・製造・販売事業を展開する総合メーカー。1948年の創業以来培ってきた「造粒」「乾燥」「粒子コーティング」「錠剤コーティング」などのコアコンピタンス技術を中心に、現在は「打錠」「乾式造粒」などの技術も追加し、粉粒体処理に必要な幅広い製品ラインアップを提供。

近年では凍結乾燥技術の取り扱いや乳化技術の開発を進め、バイオ医薬業界にも提案の幅を広げている。特に医薬品業界の固形製剤においては、製造工程のほぼ全ての工程を提案できる「ワンストップソリューションプロバイダー」として高く評価されている。そんなパウレックでは、2000年代から既存製品の改良や新製品・個別受注製品の開発・設計にオートデスクの機械設計用CADソフトウェア「AutoCAD Mechanical」を利用している。

当時の事情を知る同社 管理本部 総務部 経理グループ マネジャー(情報システム担当)の忠岡一之氏によると、PCのOSをDOSからWindowsへ移行したタイミングでAutoCADを導入したとのことだ。その後、2010年代に入ってから3D設計を本格的に取り入れることとし、製品選定の末にオートデスクの3D CADソフトウェア「Autodesk Inventor」を導入した。

エンジニアリング本部 プロセスエンジニアリング部 装置設計グループ アシスタントマネジャー
伊藤陽一郎氏

「当社がInventorを導入した理由は、従来からAutoCADを利用していたからです。同じオートデスクの製品であれば、ファイル互換性や使い勝手といった高い親和性が期待できると考え、機能・性能を他の3D CAD製品と比較したうえでInventorの導入を決めました」

それ以降、設計部門ではInventorの利用を徐々に拡大させていったが、3D設計が普及するにつれて「データ管理が難しい」という新たな課題が浮き彫りになったという。

「3D設計の場合、アセンブリでの親子関係などデータ間でのリンクが重要になるので、従来のようなファイルサーバー上のフォルダーでデータを保管・共有する方法には限界がありました。それでなくても従来のファイルサーバーによるデータ管理は、誰がどのような変更をいつ行ったのか把握できない状態であり、意図せずにデータを書き換えてしまったりファイルを消去したりといったことも頻発していました。これらのトラブルを解消することも急務でした」(伊藤氏)

Autodesk Vault ProfessionalでID採番を自動化PDMCを駆使した設計業務や保守も実現

上述したデータ管理の課題を解決するためにパウレックが導入したのが、オートデスクの製品データ管理(PDM)ソフトウェア「Autodesk Vault」だった。

「AutoCADとInventorのライセンスをProduct Design & Manufacturing Collection(PDMC)に切り替えた際、まずはPDMCのサブスクリプションに含まれるVault Basicを使ったデータ管理の有用性を検証しました。検証の結果、Vaultを使えば図面データのID採番も自動化できることが分かり、高度な機能を備えたVault Professionalを別途導入しました」(伊藤氏)

パウレックでは従来、このID採番(当時は図番採番)を手動で行っていたために、番号が重複することもあったそうだ。図面の流用時や複製した図面のリビジョン管理も人手で作業していたこともあり、修正や改訂が反映されなかったり旧版への先祖返りが発生したりといった問題が生じていた。Vault Professionalの導入は、これらを解決する目的もあったという。

「私たちの装置設計グループでは現在、新製品の3D設計にInventor、既存製品の改良にAutoCAD Mechanicalを利用しています。当社の主要顧客である医薬品業界では、一度製造した医薬品を安定供給し続けなければならないという責任があるため、20年以上前に納入した装置のメンテナンスやオーバーホールを繰り返す必要があります。そうした古い装置に関する業務については、AutoCADによる2D設計がメインになります。Inventorについては新製品の3D設計・開発、PDMCに含まれるInventor Nastranで3D構造解析シミュレーションも利用しています。また一部、建屋構造物との干渉チェックをするために、建築関係エンジニアリング会社様とNavisworksを用いた3Dモデルのレビューも行っています」(伊藤氏)

Inventorで作成した3Dモデル

また、パウレックではVault Professionalの導入に関わった代理店について忠岡氏は次のように語る。「導入を検討し始めた当時は、Vault Professionalを扱えるエンジニアが少なかったため、その点も含めて代理店に相談できて大変助かりました。ご担当の方は当社に寄り添って親身になって提案・支援してくれたため、Vault Professionalの導入をスムーズに行うことができました」

部門横断の設計業務が効率化 設計者間でのデータ共有や品目管理も改善

PDMCに含まれる製品を徹底活用するパウレックでは、多くの導入効果を実感しているという。特にInventorによって設計業務の効率化を実現できたことは非常に大きな効果だと伊藤氏は話す。

「当社製品のなかには、設計工程で流動層の耐圧強度の解析が必須の場合もあります。そうした装置を開発する場合、Inventor Nastranを使えば強度解析しながら設計を行えるし、3Dモデルからそのまま製作図へ2D図面化することも可能です。このように同じプラットフォーム上で設計検討から出図まで行えることで、業務効率化を実現しています」(伊藤氏)

一方、Vault Professionalを活用したデータ管理もさまざまな効果が得られたとのこと。

「当社では現在、混合造粒工程から乾燥・打錠・錠剤コーティングなど一連の製剤工程を連続的に製造する日本メーカー初の連続製造システムの開発・設計を、複数の設計者がチームを組んで取り組んでいます。この際、Vaultによるデータ管理を基盤にすることで、設計者同士が3D設計・変更内容を共有しながら効率的に業務を進めることができるようになりました」(伊藤氏)

Vault Professionalを別途導入するきっかけになったID採番については、その仕組みの構築・改善に取り組んでいる最中だ。

「Vaultの導入時にID管理機能を取り入れ、パウレックで扱う品目に対し一意のIDを使って部門間でやり取りできる全社統一の仕組みを構築しました。これにより保守・メンテナンス業務の部品特定や発注手配、在庫管理などで導入効果を発揮し始めています。現在はさらなる改善に向けた取り組みも進めています」(伊藤氏)

粉体供給/混合~造粒/乾燥~滑沢剤混合~打錠~コーティングまで一貫生産する「連続製造システム」。この製造販売承認を国内で初めて取得したのがパウレックだ

このほかBOM(部品表)を出力するためのカスタマイズも行っている。

「Vaultからの情報はE-BOMまでなので、M-BOMへの変換作業がどうしても必要になります。そこでVaultからE-BOMを出力した後に、製作手配で必要となる情報へとBOMを変換するというカスタマイズを施しました」(伊藤氏)

保守・メンテナンスのさらなる高度化を目指し、統合システムの構築に着手

PDMCとVaultの組み合わせによる効果を確認したパウレックでは、業務のさらなる高度化に向けて、2023年11月に「統合システム構築タスクフォース」を発足。このプロジェクトにはコンサルタント会社を引き入れ、Vaultの導入によって実現できたPDMからPLM(製品ライフサイクル管理)へとさらに進化させようとしている。

管理本部 総務部 経理グループ マネジャー 忠岡一之氏

「先に述べたVaultで出力したE-BOMをM-BOMへとつなげていくといった取り組みも、業務の高度化に向けたプロジェクトの一環です。ただしそれを実現するにはシステムの導入によって業務効率を圧倒的に向上させるだけでなく、管理体制の見直しも欠かせません。それを含め、ERPなどを含めた統合システム基盤が完成すれば、製品の開発・設計業務はもちろん、当社の売上比率の3~4割を占める保守・メンテナンス業務においてお客様のリクエストにいち早く応える理想的な環境が実現すると考えています」

オートデスクが提供するPDMCやVaultなどのアプリケーション、そしてこれらと業務システムとの連携を可能にするプラットフォームはこれからも、同社が推進する業務効率化に大きく貢献していくことだろう。