【2026年製造BIM戦略完全ガイド】BIM対応はもう遅い! 戦略としての製造BIMを解説
2025年12月24日
製造業

建築業界では、BIM(Building Information Modeling)の導入企業は58.7%に達し、2026年はもっと加速することが予測されています。製造業にとって、BIMはもはや「いつか対応しなければならない課題」ではなく、「今すぐ対応しなければ市場から取り残される危機」であり、同時に「製品のスペック・イン確率を上げるための大きなチャンス」です。
本記事では、【2026年製造BIM戦略完全ガイド】として、2026年の動向と製造BIMで実現する三つのメリットと戦略について解説します。
【2026年最新動向】製造業が直面するBIM対応
製造業と密接に関わる専門工事会社や専門設計事務所などでBIM導入率が大きく伸びています。これは、製造業が提供する建材や設備データが、プロジェクトの初期段階から必要とされていることの根拠となります。
そのため、2026年以降、大手ゼネコンや設計事務所との取引においては、BIMパーツ(ファミリ)の提供は事実上の選定基準となると言えるでしょう。
製造業が提供すべき2種類のBIMデータ
製造業が提供する建材・設備データは、プロジェクトの用途に応じて求められる要件が根本的に異なります。設計BIMと施工BIMについてそれぞれ解説します。
設計BIM
設計BIMとは、建築設計者がプロジェクトの初期段階(基本設計や実施設計の初期)で使用するBIMデータを指します。設計BIMを活用する理由は、建物全体のコンセプトを固め、使用する建材や設備を決定するためです。
設計BIMでは、データ容量を軽量化するため、モデルの外形が分かる程度の簡略化された形状でデータが作られます。ネジや内部部品は不要です。また、品番、材質、製品の性能(熱効率、消費電力など)、許容寸法といった仕様決定に必要なメタデータがきちんと付与されていることが重視されます。
施工BIM
施工BIMとは、建設プロジェクトの施工者が現場管理や製造連携に使用するBIMデータを指します。施工BIMは、設計図を基に、実際に建物を正確かつ効率的に造り上げることが目的です。
設計BIMとは異なり、現場での取り付けや納まりに影響するため、実寸に近い正確な外形と寸法が求められます。「正確さ」と「接続性」が必要です。また、設備機器の場合、配管・ダクト・電気系統と接続するためのMEP接続ポイントが正しく定義されている必要があります。
機械系CADをBIMに適合させるために必要なこと
製造業が直面する技術的な課題は、「LOM(製造レベルの詳細度)」で作成された既存のCAD資産を、BIMで求められる「LOD(開発レベルの詳細度)」に効率的に適合させることです。
InventorとBIMソフトの連携戦略とLOD最適化
製造業が使用する機械系3D CAD(Autodesk Inventorなど)は、複雑な製品設計ができることが強みです。
一方、BIMソフト(Revitなど)は建築要素との連携やパラメトリックな動作に特化しています。2026年を見据えた最適な戦略は、それぞれの強みを活かした「データ変換と連携」にあります。
Inventorを活用したBIMデータ作成のステップと注意点
Inventorなどの機械系CADでモデルを設計した後、次の手順でRevitファミリ(*.rfa)に変換し、BIMで活用できるようにしましょう。なお、具体的な手順は以下の通りです。
- リボンで、[環境]タブ→[開始]パネル→[BIM コンテンツ]の順にクリックします。
- リボンの[RFA]パネルで、[プロパティを作成]をクリックし、エクスポートされたファイルの使用に関連するInventorプロパティを含めます。
- リボンの[RFA]パネルで、[ビルディング コンポーネントをエクスポート]をクリックします。
- [ファイルの種類]の値を次から選んで指定します。
a.Revit ファミリ ファイル(*.rfa)-既定
b.Autodesk Exchange ファイル(*.adsk) - (オプション)RFAファイルの場合、出力先のRevitバージョン(2023以降)を指定できます。[名前を付けて保存]ダイアログで[オプション]をクリックし、[保存オプション]でRFAファイルのRevitバージョンを選択します。
- 完了したら、[保存]をクリックします。
モデルの簡略化とLOD調整
BIM環境でのデータ負荷を避けるため、Inventorの簡略化機能(従来は『シュリンクラップ』と呼ばれていた機能)を使用し、モデル内部の部品、ネジ、微細なディテールを削除します。この工程で、BIMプロジェクトのLOD要件に合わせたデータサイズと形状に調整します。
MEP接続ポイントの定義
設備機器の場合、配管、ダクト、電気といった系統との接続位置を定義するMEPコネクタを設定することが必須です。この設定により、Revit側で自動的に系統設計が可能となり、施工BIMでの干渉チェック精度が大幅に向上します。
属性情報(メタデータ)の入力
製品名、型番、材質、許容荷重、エネルギー効率などの情報を体系的に入力します。これらの属性は、Revitでの集計や、COBie(施設管理情報)の基盤となります。
中間フォーマットの活用とエクスポート
BIMデータの標準フォーマットはIFC(Industry Foundation Classes)です。InventorからIFCやRevitファミリ形式(*.rfa)へ変換する際、Autodesk Exchange ファイル(*.adsk)といった中間フォーマットを利用することで、ネイティブに近い情報連携が可能になります。
共通データ環境(CDE)を導入しよう
建築業界のDXが進む2026年においては、共通データ環境(CDE:Common Data Environment)を通じて情報の共有が行われることが標準となりつつあります。
CDEとは、プロジェクトに関わる全ての関係者(設計者・施工者・製造業者など)が一元的に最新のBIMモデルや図面、文書を共有・管理するプラットフォームのことです。製造業がCDEに参画することで、自社のBIMパーツを最新のプロジェクト環境に直接提供でき、設計変更や納期の情報に迅速に対応することが可能になります。
製造BIMで実現する三つのメリットと戦略
BIM対応はコストではなく、次の三つの戦略的なリターンをもたらす未来への投資です。戦略を持って投資すれば、お客様のビジネスに大きなメリットをもたらすでしょう。
製品の採用率向上
営業・企画部門がRevitなどのBIMソフトを使い、自社製品の配置計画やレイアウトシミュレーションを3Dで行うことで、顧客(設計事務所やゼネコン)に対してより具体的で専門的な提案が可能となり、競合製品に対する優位性を確立できます。
また、寸法や仕様の変更が容易なBIMパーツを提供することで、設計者が手間なく貴社製品を組み込めるようになり、製品採用率の向上が見込めます。
手戻り・納まり検討時間の削減
BIMデータとMEP接続ポイントにより、現場での干渉や取り付けミスといった手戻りコストや現場工期遅延のリスクを最小限に抑えられます。
デジタルツインとFM(施設管理)への接続
BIM対応の真価は、建物完成後の運用・維持管理(FM)フェーズにあります。2026年以降、このFMを見据えたデータ提供が製造業に求められます。
設備機器のBIMモデルに、稼働後のIoTセンサーデータを連携させることで、製品のデジタルツインを構築できます。これにより、遠隔での状態監視、故障予測、メンテナンス計画の最適化が可能となり、顧客への長期的な付加価値提供が実現します。
また、BIMデータを運用段階に引き継ぐプラットフォーム(Autodesk Tandemなど)の活用により、製造業は自身の製品情報が建物の維持管理情報として活用される仕組みを構築し、長期的な関係を顧客と築くことができます。
まとめ:製造BIMは「技術」と「戦略」で対応しよう
2026年以降BIM対応は今後デファクトスタンダードなものになっていくでしょう。そして、その課題を最も効率的かつ戦略的に解決できるのが、Autodesk製品が提供するシームレスなワークフローです。
口頭での説明とデモを見るのとでは、その効果は大きく異なります。本記事で紹介したInventorの「シュリンクラップ」機能によるLOD最適化や、Revitを使った営業提案の具体的な効果を、実際の画面で確認してみませんか?
製造BIMのプロフェッショナルが在籍している大塚商会が、お客様の製品特性とビジネス戦略に合わせた最適な製品構成と導入計画をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。