「既存工場の図面が古くてあてにならない」「現地計測のわずかなズレで、施工時に設備が干渉してしまった」など、工場やプラントの改修・設備更新において、こうしたトラブルは納期遅延やコスト増大の要因となります。
この課題を劇的に解決するのが、3Dレーザースキャナーで取得した「点群データ」の活用です。現場の「今」をミリ単位の精度でデジタル化し、Autodeskの設計環境に取り込むことで、現地調査の回数を激減させ、設計精度を飛躍的に向上させることができます。
本記事では、Autodesk ReCap Proで点群を整え、InventorおよびFactory Design Utilities(FDU)、Navisworksで高度な3Dレイアウト設計を実現するための実践的な連携マニュアルを解説します。
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ReCap Proによる点群データの最適化(前処理)
スキャンした直後のデータは、ノイズが多くそのままではCADで扱いにくいため、まずはReCap Proで設計に適した状態へ加工する必要があります。
Inventorで扱う前に、ReCap Proでデータの軽量化と座標の整合性確保を行いましょう。
原点の設定と座標の更新
Inventorで読み込んだ際に位置がずれないよう、ReCap Pro側で基準となる原点を設定します。
- プロジェクト画面で、[表示設定]→[ポイント]→[原点を更新]にカーソルを合わせます。
- 原点は黄色のドットで表示されます。[原点を更新]ダイアログが開き、[原点の座標]と原点の[方向に関する座標系]が表示されます。
- 点群で、新しい原点をクリックします。[原点を更新]ダイアログのXYZ座標が変更されるポイントにご注意ください。
引用:Autodesk ReCap ヘルプ 原点の位置と方向の更新(Autodesk)
点群のクリーンアップ(削除)
設計の邪魔になるノイズや不要な範囲を削除してデータを最適化します。自動地表分類後にノイズを除去するには、手動分類を使用してサーフェスをクリーンアップしましょう。
- プロジェクト画面で分類するポイントを選択します。
- [コンテキストタイル]メニューで、[分類]をクリックします。
- [分類を割り当て](Assign Classification)ダイアログボックスが開きます。
- ポイントの指定された分類IDを選択します。
- ポイントを分類するには[割り当て]をクリックし、分類を停止するには[キャンセル]をクリックします。
引用:Autodesk ReCap ヘルプ 手動分類(Autodesk)
Inventorへの点群インポート
ReCap Proで保存したRCPファイルを、設計の「下絵」としてアタッチします。
点群のアタッチ
アセンブリファイルに点群をリンクさせ、座標を固定します。
- [ファクトリ]タブの[点群]領域で、[アタッチ]をクリックします。
- アタッチ対象のインデックス化ファイル(.rcs or .rcp)が格納されたフォルダに移動します。ファイルを選択し、[開く]ボタンをクリックしてダイアログを閉じます。
- グラフィックスウィンドウで点を選択して点群を配置します。[点群をアタッチ]ダイアログが表示されます。
- [原点に挿入]チェックボックスをオンにして、レイアウトの0,0,0に点群を挿入します。または、原点0,0,0を基準として点群を移動する場合は、対応するテキストボックスにX、Y、またはZのオフセット値を入力します。
- 一つまたは複数の軸を基準として点群を回転する場合は、X、Y、またはZの回転値(度)を入力します。
- 必要に応じて、[尺度]テキストボックスを使用して点群の尺度を変更します。
- 点群の密度を調整します。点群の密度を調整するには、[密度勾配]の設定を使用します。点の密度を下げると、アタッチされた点の数と点の合計数が減少します。
- [OK]をクリックしてダイアログを閉じます。
引用:Factory Design Utilities 2025 Inventorで点群をアタッチする(Autodesk)
Factory Design Utilities(FDU)でのレイアウト検証
点群を「床」や「障害物」として認識させ、効率的に設備を配置します。
アセットの作成
Autodesk Factory Design Utilitiesには、システムアセットのコンテンツライブラリが準備されていますが、追加でアセットを作成したい場合には以下の手順で作成してください。
- パーツモデルまたはアセンブリを開くか作成します。
- リボンで、[アセットの作成]>[ファクトリアセット]パネル>[アセットビルダー]の順にクリックします。
- モデルの接地面を定義します。接地面のモデルには、平面または作業平面を使用します。
- 必要に応じて、モデルの挿入点を選択します。挿入点は、頂点、作業点、またはスケッチ点に指定し、これを使用してアセットをファクトリの床に正確に配置できるようになります。例えば、作業ベンチ底部の外側のコーナーなどで、特定のモデルの位置に作業点を作成できます。床のグリッドにモデルを配置するときに、作業点を使用して、床のグリッド線の交差に合わせて作業ベンチをスナップできます。複数の挿入点を指定できます。2Dアセットとしてパブリッシュした場合、挿入点を使用して、AutoCAD Factoryのレイアウトにアセットを正確に配置できます。
- モデルに一つまたは複数のコネクタを定義します。各コネクタは緑の球で表され、別のファクトリモデルのスナップ点となります。オプションで、アセットのコネクタクラスおよびプロパティ値を定義することもできます。
- アセットのプロパティを定義します。
- モデルのさまざまな設定をコントロールするキーパラメータを選択します。
- 必要に応じて、[アセットバリアント]コマンドを使用して、アセットの二つ以上のバリアントを定義します。
- 必要に応じて、[BIM 変換]コマンドを使用して、電気、機械、給排水設備のコネクタを定義します。
- アセットをローカル、Vault、またはクラウドにパブリッシュします。
- アセットビルダー環境を終了します。
引用:Factory Design Utilities 2025アセットを作成するには(Autodesk)
点群を参照したアセットの配置
既存設備(点群)を避けながら、新しい設備モデルを配置します。ファクトリアセットには、Factory Designに付属しているシステムアセット、ユーザーが作成するユーザアセット、クラウドベースアセットがあります。
システムアセットの配置方法
- [ファクトリ]タブの[ツール]パネルで[パレット]をクリックして、ドロップダウンメニューから[アセットブラウザー]を選択します。表示されるブラウザーは、移動したり、ドッキングしたり、浮動にしておくことができます。
- このブラウザーには、ツリーとサムネイルの2種類の表示形式があります。表示形式を変更するには、ブラウザーのトップにある[サムネイル表示]/[ツリー表示]ボタンの下矢印をクリックし、リストを展開して適切な表示形式を選択します。
- システムアセットフォルダをダブルクリックして、目的のアセットまでナビゲートします。
ブラウザーのサムネイルイメージを右クリックし、ポップアップコンテキストメニューの[プレビュー]をクリックして、[プレビュー]ウィンドウにアセットを表示します。 - アセットを配置するには、ブラウザーからレイアウトにアセットをクリックしてドラッグします。
アセットには基点の定義があり、レイアウトの中での位置をいつでも指定できます。クリックしてアセットを配置します。 - 必要に応じて、回転値を指定します。不要な場合は、[Enter]を押します。
- アセットのコピーの配置、または必要に応じて他のアセットの配置を続けます。
- [Enter]を押し、入力を終了します。
引用:Factory Design Utilities 2025 Inventorでアセットを配置するには(Autodesk)
Navisworksによる干渉チェック
最後に、Navisworksによる干渉チェックを行いましょう。
干渉が発生した場合
点群との干渉特定を行い、干渉が発生した場合には、設計環境(Inventor)へシームレスに戻る「SwitchBack」機能を活用しましょう。
- InventorとNavisworks Factoryが同時に稼働するように、Inventorを起動します。
- Navisworksで、[シーンビュー]内のオブジェクトを選択します。
- リボンで、[項目ツール]タブ>[スイッチバック]パネル>[スイッチバック]の順にクリックします(注3)。
- Inventorで変更を加えて、変更内容を保存します。
- Navisworksに戻り、[クイックアクセス]ツールバーの[リフレッシュ]をクリックして、変更したオブジェクトを表示します。
- (注1)Inventorのスイッチバックでは、.iptおよび.iamというInventorファイルタイプのみがサポートされます。現在のNavisworks カメラビューがInventorに送られ、同じオブジェクトが選択されます。
ヒント:または、[シーンビュー]でオブジェクトを右クリックし、ポップアップコンテキストメニューから[スイッチバック]を選択することもできます。さらに、選択ツリーでオブジェクトノードを右クリックし、[スイッチバック]を選択することもできます。
引用:Inventorでスイッチバックを使用する(Autodesk)
まとめ:デジタルツインで工場の未来を設計する
ReCapで整え、Inventor / FDUで設計し、Navisworksで検証する流れを作ることで、施工直前でのトラブルを未然に防ぐことができます。
- ReCapで点群の原点とノイズを整理する。
- Inventor / FDUで点群を「アタッチ」し、アセットを配置する。
- Navisworksへ同期し、点群 vs モデルの「干渉チェック」を行う。
- SwitchBackでInventorへ戻り、設計を修正する。
なお、大塚商会ではレーザースキャナーの選定から運用までご提案できます。設計の3次元化も含めこのような取り組みをご検討されているお客様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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