グラフィックス編 ~NVIDIA 仮想GPUソリューションの進化

いつでもどこでも同じ働き方を
実証するVDIソリューションの
グラフィックス分野への拡張を
支えるNVIDIA GRID。

グラフィックス関連ハードウェア/ソフトウェアのリーディングカンパニー、NVIDIA社が開発したGRIDプラットフォームはVDI環境にも高いグラフィックス能力を与え、BIM on VDIソリューションを支えています。GRIDプラットフォーム開発の背景と最新版の進化について取材しました。

GRID開発の背景と最新バージョンの概要

プロフェッショナルユーザーの働き方を自由にするGRID
GRID August 2017でさらに使いやすくパワフルに

NVIDIA社がGRIDを開発した背景と目的はどのようなものでしょうか?

「当社のQuadroシリーズは高性能グラフィックス機能を必要とするエンジニアやデザイナーなどのプロフェッショナル向け市場で大きなシェアを持っています。近年その市場では、性能に加えてモビリティへの要求、つまりどんな場所からでも同じ環境で仕事がしたいというニーズが高まっていました。それを実現するためには、VDI環境に高度なグラフィックス機能を与える必要がありました」(ファネリ氏)。

「特に建築・建設・エンジニアリングの分野では、プロジェクトべースで多才な人を集めますし、建設現場などのオフィス外で働く機会も多いものです。多数の建築家、エンジニア、デザイナーが違う場所で働いていても全員が同じバージョンのデータを共有できれば密なコラボレーションを保てます。これはプロジェクトの工期短縮にも役立ちますし、働く人の負担が少なく、よりクリエイティブな仕事に集中できる新しいワークフローを実現する意味もあります。それがGRIDを開発した背景であり目的です」(ミルプリ氏)。

NVIDIA Corporation
NVIDIA GRID製品担当バイスプレジデント ジョン・ファネリ氏

GRID August 2017でのアップデートの内容を教えてください

「GRID August 2017は当社が2017年8月にリリースした最新バージョンです。GRIDの5回目のメジャーリリースですので、GRID 5.0という略称もあり、両者は同じものを表しています(以下、当記事中ではGRID 5.0を使用)。
主なアップデートのポイントはPascalアーキテクチャのサポートによる高性能化、GPGPU用途に不可欠なCUDA機能の拡張、管理機能の高度化の3点です。
第1のポイントは当社の最新GPUで採用しているPascalアーキテクチャへの対応です。具体的な製品としてはTesla P4、P40、P100に加えて新しくブレードサーバー向けに発売したP6の4モデルでGRIDが使用可能になり、より高いパフォーマンスが得られるようになりました。例えば、P40はMaxwellアーキテクチャのM60と比べて約2倍の性能を発揮します。メモリー容量もM60の8GBに対してP40では24GBと3倍増となり、より大きなデータをストレスなく扱えるようになりました。

第2のポイントはCUDA機能の拡張です。AI、VR、シミュレーションやフォトリアリスティック用途にGPUを使う、いわゆるGPGPU演算向けに当社がご提供しているCUDAプラットフォームはGRIDでは従来一つの仮想マシン(VM)でしか使えませんでしたが、GRID 5.0からは全てのVMで使用可能になりました。さらにLinuxでの使用に向けた最適化も行っています。
第3のポイントは管理機能の高度化です。ユーザーがVDI環境を快適に使える状態を保つためには、システムの管理者は計算リソースを必要に応じて増強し配分できるようリソースの使用状況を正しく把握できなければなりません。GRID 5.0では物理サーバー、仮想マシン、アプリケーションの全てのレベルでGPUの使用状況を把握できるため、パフォーマンスが低下する前に的確な対応を取りやすくなります。また、複数の仮想GPU間のスケジューリング機能が拡張されたことにより、他のユーザーの影響による性能低下も起こりにくくなりました」(ファネリ氏)。

CUDA機能は建設関連業界にどのようなインパクトを与えるものなのでしょうか?

「ディープラーニングなどのAI領域で有名なCUDAですが、建設関連業界ではシミュレーションを行うためにも欠かせないものとなるでしょう。例えば、2017年9月25日にオープンした当社の新本社ビルEndeavor(エンデバー)の設計がよい例です。Endeavorでは屋根に多くの採光窓を設けていますが、入射光の向きは時々刻々と変化しますし、窓からは光と共に熱も出入りします。適度に太陽光を取り入れつつも暑すぎず寒すぎず、まぶしくも暗くもない、快適なオフィス環境を低いエネルギー消費で実現できる設計が求められました。そのために設計チームは年間を通した太陽の動きと外気温を踏まえて光と熱と空気のシミュレーションを繰り返し、窓の数と位置の最適化を実現しました。このように、実際にものを作る前にシミュレーションを行って確認する動きは今後ますます一般的になります。CUDAはシミュレーションにも広く利用されているプラットフォームであり、GRID 5.0によってより使いやすくなっています」(ファネリ氏)。

NVIDIA社の新本社ビルEndeavor(エンデバー)
画像著作:Connie Zhou

Quadro Virtual Data Center Workstation(Quadro vDWS)とは

Quadroベースのアプリケーションを稼働させる
データセンター向けライセンスのリブランディング

Quadro Virtual Data Center Workstation(Quadro vDWS)という製品の位置づけを教えてください

「Quadro vDWSはこれまでGRID vWSと呼ばれていたもので、GRID 5.0をベースとするVDI環境でCAD / BIMなどのグラフィックスソリューションを稼働させるためのライセンスです。
Quadroはもともと当社がハイエンドの物理ワークステーション用にご提供しているGPUボードのシリーズ名であり、高度なグラフィックス機能を業務利用するユーザーに広く使われています。それらのユーザーが利用するCAD / BIMや3DCGモデリングなどのソフトウェアはQuadroシリーズを動作推奨環境のリファレンスとしているものが多いため、VDI環境でCAD / BIMを利用するためにはVDI仮想マシンがQuadroの使用(Quadro feature)を満たさなければなりません。GRIDはTeslaボード上で稼働するソリューションですが、Quadro featureを実装しています。しかし、それは全てのユーザーに必要な仕様ではないため、これまで当社はGRID上でQuadro featureを必要とするユーザーにはライセンスをGRID Virtual Workstation(GRID vWS)licenseという名前でご提供してきました。そのライセンスの名称をQuadro Virtual Data Center Workstation licenseと変更しました。略称がQuadro vDWSとなります」(ファネリ氏)。

これまでのGRID vWSという名前をGRID vDWSと変更されたのはなぜでしょうか?

GRID vWSを必要とするのは、これまでQuadroシリーズを搭載した物理ワークステーションでQuadroの名前に親しんできたお客様です。使用するCAD / BIMアプリケーションもQuadroをリファレンス環境としています。そんなお客様に対して、『Quadro featureを要するアプリケーションをGRID上で動かす場合はGRID vWSライセンスが必要です』と説明すると名前が違うので分かりにくく、お客様を不安にさせてしまう傾向がありました。Quadroの名前を使うことにより、それが分かりやすくなることを意図しています」(ファネリ氏)。

スケーラブルなBIM on VDIが働き方改革を実現

5人の事務所から1万人のグローバル企業まで、
GRIDが人のコラボレーションを加速する

グローバルでのGRIDの利用状況、代表的な事例をご紹介ください

「従業員5人の企業から1万人を超えるような企業まで、また産業分野としても建築・建設・エンジニアリング関連だけでなく、教育、行政、製造業などさまざまな業界で広く使われています。
例えば、キャノンデザイン社(Cannon Design ,Inc)という国際的な設計事務所は最も早い時期にGRIDを導入したユーザーの一つで、世界中の16のオフィスで働く900人以上の設計者やエンジニアのために、一つのデータセンターにGRIDによる1,000ユーザー規模のVDIを構築し集中運用しています。同社はもともと『複数のオフィスが垣根なく一体となって顧客に対応する』という哲学を持っていました。『Single Firm,Multiple Offices』という言葉で表される哲学を実現するためには、離れたオフィスでも緊密にコラボレーションできる仕組みが必要でした。そこで世界中のユーザーが同時に同じファイルを共有して仕事ができるようにするためにGRIDを導入していただきました。
また、スポーツ施設の設計に強いポピュラス社(Populous ,Inc)がロンドン・オリンピックの陸上競技場デザインを手がけた時、コンペに勝ち抜くために同社は設計コンセプトを美しく分かりやすく伝えられる3Dモデルを短時間で作る必要に迫られました。通常は何カ月もかかる仕事を同社はイギリス、アメリカ、オーストラリアのオフィスで時差を利用し24時間切れ目なく作業を継続することで、わずか4週間で仕上げました。それを可能にしたのもGRIDです」(ファネリ氏)。

建設関連分野でBIM on VDI導入を検討されているお客様に向けてのメッセージをお願いします

「高性能なグラフィックス環境を必要とする建設関連業界では、デスクトップ仮想化はこれまであまり進んできませんでしたが、GRIDの登場で前提は大きく変わりました。GRIDとBIM on VDIには物理ワークステーションの単純な置き換えにとどまらずワークフローを大きく変える力があり、人材獲得や工期短縮を実現する武器となるものです。そこで重要なのが、建設関連業界の仕事の進め方をよく理解したベンダーと組むことです。当社はグラフィックスを通じてこの業界のアプリケーションベンダーやSIerとの豊富なリレーションを持っており、既に多くの事例があります。ぜひ、GRIDによるBIM on VDIを通じて新しい働き方とそれによって得られる利益を手にしてください」(ミルプリ氏)。

NVIDIA Corporation
エンタープライズ・セールス シニア・ディレクター ラジ・ミルプリ氏

BIM on VDIの円滑な導入を支援する
「検証センター」(秋葉原UDX内)を設置!

品質の高いクラウド基盤として実績のある「System x」サーバー製品や
クライアント製品を常設、最新のハードウェア環境と
お客様データでVDIソリューションの検証が可能

大塚商会は、VDIソリューション分野におけるパートナーとしてレノボ・エンタープライズ・ソリューションズとパートナーシップを結んでいます。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが運営する「レノボ・エンタープライズ・センター」(東京・秋葉原UDX内)では、最新機種を用いた各種の検証作業を行うことができます。

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03-3514-7823

株式会社大塚商会 CADプロモーション部戦略推進課

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