Autodesk Inventorで3次元データ資産を活かし、テンプレート設計を実現

2020年10月 2日

製造業

株式会社松永製作所

日本車いすバスケットボール連盟オフィシャルサポーターでもある株式会社松永製作所は2003年ごろからAutodesk Inventorを活用している。ボタン一つで3次元モデルや各種図面を自動生成するテンプレート設計へ取り組むなど、3次元CADで働き方改革を実現している。

世界初のオール樹脂製車いすの誕生には、3次元設計のノウハウが

国内有数の車いす製造・販売メーカーである松永製作所はオール樹脂製車いす(モルフ)の開発に成功している。この車いすは羽田空港で利用されている。従来の車いすでは搭乗前の金属検査において探知機が反応してしまうため、利用者はボディチェックを受けざるを得なかった。

しかしオール樹脂製車いすであれば、そのままスムーズに飛行機へ搭乗することができるのである。「樹脂部品を使う車いすはほかにもありますが、ボディ全てが樹脂のものは前例がありません」と開発部 部長 日比野氏は語る。空港で使用する車いすとはいえ、通常の車いす同様の走行耐久性が求められ、JIS規格に準拠した安全性能試験をクリアする必要もあった。このようにモルフは非常にチャレンジングな製品だったのだ。

2003年ごろからAutodesk Inventorの活用を開始しており、Inventorで作成したモデルを3Dプリンターで造形し樹脂の計上確認を行ったり、ビジュアライゼーション機能を活用して取扱説明書用のCC画像やアニメーションを作成したり、さらには構造解析まで活用の場を広げた。このように松永製作所が長年蓄積したノウハウと、早くから取り組んできた3次元CADの活用が合わさり世界初のオール樹脂製車いすモルフが誕生したのである。

「何かを探す」という時間はお金を生まない

「従来、当社ではInventorで作った3次元データをフォルダー方式で管理していました。そのためフォルダーごとに同じ図面が大量に保存されていました」と開発部 課長 傍島氏は語る。

その結果、必要な図面を探すのに時間がかかったり、どれが最新のモデルかが分からない、同じような形状の成果物があるのに新たに書いてしまう、などの無駄な工数も発生してしまっていた。そこでデータ管理システム「Autodesk Vault」の活用に着手した。曖昧だった品番ルールや図番ルール、検図・承認・保存の流れを整理して共通ルールを定め、Vaultを駆使し品目体系を構築し直していった。

「Autodesk Vault」は「Product Design & Manufacturing Collection」に含まれている。
一つのパッケージを導入すれば追加の投資がなくデータ管理にまで取り組めることもAutodesk製品の一つの特徴である。

テンプレート設計へのチャレンジ

松永製作所のMP(MAX PERFORMANCE)シリーズは、車いすに乗ってスポーツを楽しむ活動的なユーザーに向けたスポーツタイプの車いすである。スタイリッシュなデザインと軽量ボディで高い人気を誇り、2015年のグッドデザイン賞も受賞している。

「MP シリーズのもう一つの特徴は、使用ユーザー個々に合わせて採寸し、それに合わせて製作する一品生産であることです。」そう語るのは MP カスタムの開発を担当した開発部の廣瀬氏だ。

つまり、一品仕様とすることで通常の車いすに必要なアジャスト機構などを排し、大胆な軽量化を実現したのである。だが、一品仕様の治具レス製作では、新規オーダーの度に、作図し直す必要がある。ベテラン設計者でも、その図面作成には1週間近くかかってしまうのだ。そこで蓄積したInventorのデータを活かしたテンプレート設計で、この作図納期を短縮しようというのが傍嶋氏らの狙いだった。

「テンプレート設計のシステム自体は、仕様を決めて、Inventorでテンプレート設計しやすい3次元モデルを構築し、大塚商会の協力を得て3カ月ほどで作りあげました。顧客データを元にExcelに主要寸法を入れて実行ボタンを押せば、5分で3次元モデルまで完成するという仕組みです。」(傍嶋氏)さらにそこからお客様用図面や組立図、溶接図、加工図など製造用図面もボタン一つで自動生成され出力される。狙い通り、テンプレート設計の実現により作図納期は大きく短縮されたのである。

【動画】株式会社松永製作所によるテンプレート設計

熟練者のノウハウを若手にも ~テンプレート設計がもたらすメリット~

在宅勤務などがさらに進む中で、今までの同様のコミュニケーションを取ることは難しくなるだろう。ベテラン設計者が若手設計者に細かいアドバイスを送りにくくなることも技術者の一つの悩みであるはずだ。

テンプレート設計のメリットとして見逃せないのは、そこに同社の設計ノウハウが集約されている点である。ユーザーに合わせたオーダーメイドで、しかも治具なしで製作されるこの製品は、作図にも高度な設計ノウハウが必要だ。熟練した担当者にしか作図できないケースもしばしばで、ほかの技術者にやらせるにはあらためてトレーニングを受けさせる必要があるのだという。

「そうした熟練者のノウハウをモデル上に全部入れこんだのが、このテンプレート設計なのです。極論すれば、これまで熟練者しか扱えなかったような製品をだれでも作図できるようになったのです。この効果は非常に大きいと思います。」(傍嶋氏)こうしてテンプレート設計によるカスタムオーダー車いす「MP カスタム」は、かつてないきめ細かなサイズ展開と44色ものカラーバリエーションを実現した。

さらなる進化へ

このように松永製作所はAutodesk InventorやProduct Design & Manufacturing Collectionに含まれるツールを活用し大きなメリットを会社にもたらしている。

空港・機内専用車いす「モルフ」にはほかの航空会社からの引き合いが増えているほか、オール樹脂製の特性を生かし、オリンピックなど大規模イベントのセキュリティチェック対策や、磁性体を嫌うMRI 検査室などの医療用途など新たな可能性が検討されている。Autodesk Inventorと共に進化は止まらない。

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