デファクトでありつつ、進化し続けるAutoCAD 識者&ユーザーが語るその先進性とは?

2023年 1月17日

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DXが企業にとって喫緊の課題となる中、製造業・建設業では多くの企業がデジタル技術を活用したビジネス変革に取り組んでいる。この状況で存在感を増しているのが、CADツール「Autodesk AutoCAD」(以下、AutoCAD)だ。デファクトスタンダードとしての安定感はもとより、進化し続ける機能・性能があらためて評価されている。CADツールの専門家とユーザー企業の双方に、その革新性について話を聞いた。

40年前のデータ資産も最新バージョンで扱える

機械製造業や建築・土木業界のビジネスを支えるITソリューションとして、欠かせない存在となっているCAD(Computer Aided Design)。その代名詞的存在である「AutoCAD」が市場に登場したのは、1982年。今年で誕生40年の節目を迎える。以来、AutoCADは設計者の圧倒的な支持を得て、CAD製品市場における揺るぎない地位を確立してきた。その理由は、どのあたりにあるのか。

「AutoCADがCADツールのデファクトスタンダードとして受け入れられてきた要因は、ファイルフォーマットの強みにあると考えています」とCADコンサルタントの井上竜夫氏は話す。

CADコンサルタント 井上竜夫氏

CADコンサルタントとして、AutoCADの公式トレーニングマニュアルの開発など製品全般の指導に従事するかたわら、セミナー講師としても活躍。湘南工科大学の非常勤講師として次世代人材の育成も行っている。

そもそも、CADによって設計情報をデジタルデータ化することの意義は、プロセスの上流から下流へと、情報を劣化・損失なく確実に伝えることにある。この点においてAutoCADは、独自開発のDWGを標準ファイル形式に採用しており、さまざまなオートデスク製品とシームレスにデータをやり取りすることが可能だ。

例えば、AutoCADにより2Dで設計したファイルを機械設計向け3D CAD製品「Autodesk Inventor」(以下、Inventor)、BIMソフト「Autodesk Revit」(以下、Revit)に連携して3D化する。あるいはInventorやRevitで作成した図面をAutoCADに取り込み、出図する。AutoCADで作成した図面を3DCGソフト「Autodesk 3ds Max」に読み込んで、設計情報を基に3Dモデリングやレンダリングを行うといったことも可能である。

加えて強調すべきは、40年前に作成したデータも最新バージョンで扱えるということだ。設計情報というIP(知的財産)を確実に保護し、時代を超えて継承できるようにする。これがオートデスクの一貫したポリシーであり、ほかの競合製品が真似できないポイントといえる。

「世の中にはオートデスク製品以外にもDWG対応をうたうソリューションが複数存在しています。しかし、それらはあくまで非公式なもので、将来にわたり対応が約束されたものではありません。IPを確実に次世代へ継承する。それこそ、企業がAutoCADを選択すべき理由だと私は考えています」と井上氏は強調する。

新機能を臆せず活用することが、企業のDXを加速する

同時に、常に時代の先を行く先進性もAutoCADの見逃せない強みである。40年の歩みはそのまま、AutoCADが時々の最新テクノロジーを取り込み、進化し続けてきた歴史といえるのだ。

例えば、現行の最新バージョンである「AutoCAD 2023」では、機械学習やAI(人工知能)の活用に踏み込んだ。具体的には「自分のインサイト」や「Autodesk Assistant」と呼ばれる機能を搭載。「自分のインサイト」はユーザーの操作に関する情報をインターネット経由で収集し、機械学習により推奨される使用方法を提示する。また「自分のインサイト」には「マクロアドバイザ」と呼ばれるマクロ化をユーザーに提案する機能も含まれている。これによりユーザーは、最適な使い方について知ることができたり、頻繁に行う作業を自動化したりして業務効率を高められる。

「マクロ化をはじめ、柔軟にカスタマイズできる点はAutoCADの魅力の一つですが、これまで実際にカスタマイズをするには、ユーザー側に相応の習熟度やスキルが必要でした。この課題をクリアするのが『自分のインサイト』機能です」と井上氏は解説する(図)。

図:マクロアドバイザの画面例:ユーザーの操作を機械学習により、頻繁に行われる操作パターンに基づくマクロを提案してくれる。
採用したマクロは繰り返し利用できるほか、編集も可能

製品提供のスタイルにおいても先駆的な挑戦を続けてきた。例えばAutoCADは、月額/年額課金のサブスクリプションサービスとしての提供にいち早く取り組んだことで知られる。「AutoCADがこの方式を採用した当時は、まだソフトウェア市場全体でも数えるほどしか同様の形で提供されるサービスは存在しませんでした。資産を持たずに済み、初期コストが抑えられるサブスク型のメリットは、今では人々の間に広く共有されていますが、いち早くそのことを見抜いていたということです」と井上氏は言う。

このようにAutoCADは、ユーザーの情報資産を確実に次の世代へと継承しながら、時流に即した最新・最適な環境で活用できるCAD製品といえる。同時に、ほかのオートデスク製品を含めたエコシステムによって、2D / 3D、さらに時間軸を追加した4Dシミュレーションなどの世界観をシームレスにつなぐソリューションといえるだろう。

「カスタマイズの柔軟性を高めてきたことも、新技術を貪欲に取り入れてきたことも、あくまでそれがユーザーの求めに応えるうえで合理的だったからだと思います。結果、それがDX推進という現在のユーザーニーズに沿った進化につながっています。昨年からAutoCAD LTと同等の価格でAutoCADが使えるようになりましたが、例えばコラボレーションが必要な設計体制で作業されている場合、カスタマイズやマクロなどを共有してチーム全体の作業効率を上げることができます。最新のAutoCADが備えるさまざまな機能を、ぜひ臆せず使いこなしていただきたいですね。それが、企業・組織のDXを加速することになるはずです」と井上氏は語る。

コア技術である「つなぐ」を、オートデスク製品が支える

このようなAutoCADのメリットを多くの企業が実感している。一例が、建築物用の設備メーカーの共同カイテックだ。

同社はバスダクト、OAフロア、屋上・壁面緑化という三つの分野に関わるシステムを設計・製造・販売している。バスダクトとは、オフィスビルや商業ビル、工場、住宅などに設置される電力幹線システムのことだ。直線、曲げなどさまざまな形のユニットを組み合わせて顧客の求めに応じた形状をつくる。「OAフロア、屋上・壁面緑化も同様で、電力や水の配管を必要な形に沿って配置します。全ての分野の事業に共通する『つなぐ』技術が、当社のコア技術です」と同社の清水敬太氏は語る。

共同カイテック株式会社 バスダクト事業部 営業本部 BPR課 課長
清水敬太氏

同社は、30年来のユーザーとして、大きく二つのシーンでAutoCADを活用している。一つは、顧客である建設業者から建物の図面を受け取り、それを基に製品の配置図を作成するシーン。もう一つは、製品そのものの設計シーンだ。例えばバスダクトのユニットの場合、既製品も用意してはいるものの、ほぼ全ての案件で受注生産の必要性が生じる。その際にAutoCADを用いているという。

つまり同社は、建設業と製造業、両方の顔を持つCADユーザーといえる。建設領域ではAutoCAD、Revitなどがパッケージ化された「AEC Collection」、製造領域ではAutoCAD、Inventorなどを局面に応じて活用している。

「オートデスク製品により、あらゆる設計業務が手書きの2倍程度のスピードで実現できています。また、作成したユニットの設計データをそのまま建設会社様や設計事務所様などに渡せるため、先方があらためて図を起こす手間も発生しません。これはAutoCADがデファクトになっていることのメリットだと感じます。社員間の会話や会議の場でも機能名がそのまま登場するなど、AutoCADがビジネスにおける共通言語になっています」と清水氏は紹介する。

共通部品を一元管理し、ミスによる手戻りを削減

同社では、AutoCADの新機能の使いこなしにも意欲的に取り組んでいる。一例が「ブロックパレット」機能だ。従来は、設計者各人が、よく使われる部品の組み合わせをブロック化して定義し、個別に保有していた。この機能を使うことで、それらを社内で集約・一元管理して共有できるようにしたという。

「以前は、仮に、ある部品の仕様が変更された場合、各設計者がそれぞれ手元のデータを更新しなければなりませんでした。更新し忘れてしまう設計者がいれば、そのデータが使われたプロジェクトで工程自体の手戻りが発生します。データの一元化と共有により、このような問題が根絶できています」と清水氏は効果を説明する。

加えて同社は、AutoCADのカスタマイズ機能を有効に活用し、大きな成果を上げている。

「AutoCADは、画面のカスタマイズから自動作図まで、広範囲にわたるカスタマイズが可能なため無限の可能性を感じています。そもそも3D化する必要性の低い系統図や支持材の設計はAutoCADの強みが生きる領域のため、このカスタマイズ性を生かした自動設計ツールを作成中です。必要なアンペアと系統の数に応じて、支える部材を自動で選定・提示する。これにより、さらなる生産性向上に貢献できると考えています」(清水氏)

そのほか、OAフロアシステムや屋上・壁面緑化システムの領域でも、業務に合わせてAutoCADをカスタマイズしており、現在は製品割り付けの自動化を行っているという。こちらも生産性向上に大きく貢献するはずだ。

清水氏が作成したカスタマイズコマンド(左)と共同カイテックが作成したバスダクト系統図(右)

共同カイテックは、今後もAutoCADをはじめとするオートデスク製品の一層の活用を推進し、全社のDXにつなげる狙いだ。AIなどのインテリジェンスを活用した作図の自動化、オートデスク製品と工作機械の連携に基づく作業自動化といったことを視野に入れ、検討を進めている。

「AutoCADやInventor、RevitではAPIも豊富に用意されています。ニーズに合わせた柔軟な利活用が具現化できる点は、非常に大きなメリットだと考えています」と清水氏。同社の業務プロセス改革・DXの推進を、今後もオートデスク製品が力強くけん引していくことは間違いないだろう。

このように、長い歴史に基づく安定感と先進性の両方を兼ね備えたAutoCADおよびオートデスクのソリューションは、これからの設計現場にとっても引き続き欠かせないソリューションであり続ける。その力をどこまで引き出せるかが、製造/建設現場のDX推進のカギを握っている。

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