AutoCAD モデル空間とレイアウト空間の作図の違い
2023年12月25日
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AutoCADでモデル空間とレイアウト空間を使いこなすには? Vol.1
AutoCADを導入し、図面を描いてみようとしたとき「あれ? この下に表示されているレイアウトっていうタブはなんだろう?」と思ったことはありませんか? また、自己学習しようと市販のAutoCAD関係の書籍を購入したら「レイアウトを使用しないと作図できないんじゃないか」と思った方はいらっしゃいませんか?
AutoCADでは、モデル空間だけで完結する図面を作図することもできますし、レイアウトを使いこなして作図することもできます。大切なことは「モデル空間で完結した図面を作図した方が簡単なのか、レイアウト空間を使用した方が効率的に作図できるのか」の判断です。
モデル空間だけで完結する図面を作図する
レイアウトは使用せず、図面枠/表題/メイン尺度の作図要素/異尺度の作図要素/数量表など、全ての要素をモデル空間に配置する作図方法です。実寸で作図するものは、表題欄に記載された基準尺度の図形です。
基準尺度とは、メインで作図する図形の尺度です。図1の場合は、赤枠の中の図形がメインの図形となります。緑枠の詳細図は異尺となり異尺の図形は拡大縮小し、記載する寸法値はプロパティなどで調整します。
最終図面としては1ファイル1図枠を推奨します。仕掛中の図面の場合は、複数の基準尺度を持つ複数の図枠をモデル空間に配置することも可能です。例えば、機械図面で組図から部品図にばらす途中の段階などです。
モデル空間で完結する図面のメリット
- 一つの空間で作業が完了するのでオブジェクト間の複写/編集がしやすい(作図が簡単)。
- レイアウトの知識がなくても作図が可能(学習することが少ない)。
- dxfデータへの書き出しが簡単(dxfとして保存されるのはモデル空間の作図内容のみ)。
- 機械図面の作図であれば、モデル空間のみでの作図で充分可能。
モデル空間で完結する図面のデメリット
- モデル空間をデータベースとして使用し、1ファイルで多用な図面作成ができない。
- 複数の図枠がモデル空間に配置されている場合、印刷の設定が毎回必要。
- 全体の一部/道路の線形などに合わせて連続した図郭が作成できない。
- 尺度の混在する図面は基準尺度以外の作図要素は実寸ではなく、基準尺度に相対した大きさに拡縮して表現しなくてはならない。
モデル空間での異尺図形の作図方法
モデル空間で完結する機械図面で詳細図を作成する方法をお伝えしたいと思います。今回は基準尺度1 / 5の中に1 / 2の異尺(詳細図)を作図する場合を想定します。
1.詳細図(異尺度)の図形を実寸で作図します。
2.ホームタブ/修正/複写(COPY)コマンド、トリム(TRIM)コマンドなどを使用し、別図を作成します。
3.ホームタブ/修正/尺度変更(SCALE)コマンドを実行し、図形を拡大します。今回は5 / 2倍します。
1 / 5の基準尺度の中に1 / 2の異尺度の場合、分母の5と2を比較します。よって5 / 2倍となります。
4.寸法を作成します。寸法は5 / 2倍の値で作成されるので、プロパティの長さの寸法尺度の値を変更します。今回は2 / 5(0.4)にします。
5.必要な箇所に寸法を作成し、プロパティ変更・プロパティコピーを使用して図を完成させます。
レイアウトを使用して図面を作図する
レイアウトを使用すると、一つのファイルでさまざまな図面の作成が可能になります。また、レイアウトを使用しないと作図が非常に煩雑だったり難しくなったりする場合があります。
特に建築・土木業界では、レイアウトの使用が必須となります。製造系の業界でも工場レイアウトの図面作成においてはレイアウトの使用が非常に有用です。
レイアウトを使用する図面作成のメリット
- 複数の尺度が混在していても全ての作図をモデル空間に実寸で作図を行える。
- 図面枠/表題/タイトル/数量表/凡例など、そもそも尺度を持たないもの(尺度が変わっても印刷すると固定の大きさの要素)は、レイアウト空間で配置すると扱いが楽。
- モデル空間をデータベースとし、一つのファイルで多用な図面を作成できる。
- モデル空間に全ての要素を配置し、必要な箇所の表示・ビューポートごとに画層の制御ができる。
- 道路の線形などに合わせて連続した図郭が作成できる。
- マルチ印刷ができる。
レイアウトを使用する図面作成のデメリット
- どこまでレイアウトを使用するかの判断が必要。
- 学習することが多い。
- 他CADとのデータのやり取りでdxfファイルが必要な場合、レイアウトをモデルに書き出しコマンドを実行する必要がある。
- * モデル空間の作図内容のみがdxfとして書き出されます。
- * SXFコンバーターの場合、レイアウトから直接P21ファイルなどの書き出しが可能です。
レイアウトを使用した図面の作成例
レイアウトを使用するにはレイアウトを使用するとどんなことができるのかを最初にイメージすることが大切です。幾つか使用例をご紹介します。
1.複数の尺度のレイアウト使用例
尺度を持たない、図枠や表などはレイアウト側に配置すると扱いが楽です。
2.モデル空間をデータベースとし、一つのファイルで多用な図面を作成する例
工場のレイアウト管理に必要な全ての情報をモデル空間に配置した例
ビューポートで必要な箇所を表示、また画層を制御し、必要な情報のみを表示します。
3.道路の線形などに合わせて連続した図郭を作成する例
今回は連続する道路のイメージで下図のようにモデル空間に作図をしています。番号が付与された長方形は図面化する図郭のイメージです。このままモデル空間で図面化しようとすると、図郭が重複する箇所の処理や印刷の必要のない箇所の処理が簡単にはできません。レイアウトをご使用して頂くと簡単に作成できます。
レイアウトで図面化する前に図郭に対して、水平となるUCSを作成しておくことがポイントになります。
ビューポートで表示したい範囲と回転方向を制御すると以下のように図面が作成できます。
4.印刷のみにレイアウトを使用する例
モデル空間で完結した図面を作成している場合でも印刷のみにレイアウトを使用するケースがあります。複数の図枠をモデル空間に配置する作図方法をしているユーザー様にはとても有用です。レイアウトごとにページ設定を付与できることがポイントです。また、印刷したいレイアウトを複数選択して一度に印刷することも可能です。
図25ではモデル空間に三つの図面を作成しています。モデル空間のみを使用して印刷するには、図枠ごとに印刷の設定をし直す必要があります。
レイアウトを使用すると、右クリックのメニューからレイアウトごとに印刷することができます。
また、複数のレイアウトを選択し、右クリックのメニューから「選択したレイアウトをパブリッシュ」を実行することで、印刷を一度に実行することができます。
いかがですか? 皆さまレイアウトを使用してどんなことができるか、イメージができたでしょうか? 次回は、レイアウトを新規に作成する方法についてご案内したいと思います。