AutoCAD 条件抽出での選択とグループの活用

2024年12月 4日

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AutoCADで選択を極める Vol.4

前回の記事では、画層ツールをより便利に使用する操作方法(2)についてお伝えしました。画層を多く扱うユーザー様にとって、プロパティフィルター/グループフィルター・画層状態管理をご活用いただくことで選択がより簡単になり、またミスのないオペレーションを実現することをご理解いただけたと思います。

AutoCAD 画層ツールを使って便利に選択する その2

今回はその他AutoCADの選択のヒントとして、条件抽出での選択方法とグループの活用方法についてご紹介します。

条件抽出する

AutoCADの全てのオブジェクトがタイプやさまざまなプロパティを有しています。個々のタイプや所有するプロパティを抽出する条件として設定し、抽出選択すること、または条件に適合するものを除外選択することができます。

コマンドは「クイック選択(QSELECT)」を使用します。少し難しいコマンドという印象をお持ちのユーザー様も多いかもしれません。そんなユーザー様には「類似選択(SELECTSIMILAR)」のご使用をまずお勧めします。

類似選択(SELECTSIMILAR)

クイック選択(QSELECT)は、自分で条件設定をする必要がありますが、類似選択(SELECTSIMILAR)は、抽出する簡易な条件をAutoCADが提案します。コマンド名のとおり、類似とみなしたオブジェクトが選択対象となります。何を類似とするかを設定することもできますが、詳細な条件を追加することはできません。寸法や同じ名前のブロックを一括で選択する場合には便利です。

1.画面上で選択したいサンプルとなるオブジェクトを選択します。今回は下図のように「長さ寸法」を一つ選択します。

2.右クリックのメニューより「類似オブジェクトを選択」を実行します。

3.下図のように選択されます。類似とAutoCADが判別したオブジェクトはタイプが「長さ寸法」で画層が「同じ」オブジェクトです。よって「寸法スタイル」では判別していないため、1-1 / 2-1の両方のスタイルとも類似オブジェクトとして選択されています。

また、長さ寸法以外の「半径寸法」などは類似とみなされていません。

4.ブロックをサンプルオブジェクトとして選択します。

5.右クリックのメニューより「類似オブジェクトを選択」を実行します。

6.下図のように選択されます。類似とAutoCADが判別したオブジェクトは、タイプが「ブロック」で名前が「同じ」ブロックです。よって「回転角度」では判別していないため、「ATC1」という名前のブロックが全て選択されます。

7.類似選択(SELECTSIMILAR)の設定は、次の手順で確認・変更することができます。コマンドラインに直接「SELECTSIMILAR」と入力し、Enterします。続けてオプションの「設定」をクリックします。

ダイアログのチェックがある項目が「類似」として判別されます。

クイック選択(QSELECT)

クイック選択(QSELECT)を使用すると、より細かな抽出条件を設定できます。コマンドを実行する前に「何を抽出条件に設定すればよいのか?」を理解しておく必要があります。

例えば、「全て色はBYLAYERなのか、個別に色を有しているのか」です。クイック選択(QSELECT)を使用する場面は、他CADで作成されたデータをAutoCADのルールに沿ったデータに移行する時がもっとも多いのです。必ずデータの構成を分析してから「クイック選択(QSELECT)」を使用するようにしましょう。

1.プロパティパレットの右上のアイコンをクリックしてクイック選択(QSELECT)を実行します。

2.ダイアログが開きます。

  1. 適用先の範囲を設定します(マウスで範囲を指定することもできます)。
  2. オブジェクトタイプを設定します(複数の場合は全てのタイプが対象になります)。
  3. 2で選択したオブジェクトタイプが所有するプロパティの一覧が表示されます。条件として選択します。
  4. 3で選択したプロパティの条件とする値を定義します。
  5. 3、4で選択したプロパティとの関係を定義します。
  6. 1~5で条件抽出したオブジェクトを選択するか、選択から除外するかを設定します。

3.下図よりブロック名「ATC1」で、回転角度が「45度」のブロックを指定した範囲(緑枠内)から選択してみます。

最初の抽出条件として以下のように設定します。オブジェクトタイプを「ブロック参照」とし、名前を「ATC1」と「=等しい」とします。

ダイアログをOKで閉じます。下図のように選択されます。

再度、クイック選択(QSELECT)を実行します。回転角度を「45度」と「=等しい」とします。

ダイアログをOKで閉じます。下図のように選択されます。

  • * 赤○内のブロックは回転角度が「38度」のため選択されていません。

次のように設定すると赤○内のブロックも選択できます。

4.下図は全て画層「0」で作成され、色・線種もBYLAYERではなく、それぞれのオブジェクトに色・線種が付与されています。ここから色「青」、線種「CENTER」で作成されたオブジェクトを抽出してみたいと思います。

最初の抽出条件として以下のように設定します。オブジェクトタイプは「複数」のままとし、色を「Blue」と「=等しい」とします。

ダイアログをOKで閉じます。下図のように選択されます。

再度、クイック選択(QSELECT)を実行します。線種を「CENTER」と「=等しい」とします。

ダイアログをOKで閉じます。下図のように選択することができます。プロパティパレットで画層・色・線種を変更すると指定画層にBYLAYERで移行できます。

選択セットとしてグループを活用する

AutoCADでオブジェクトや文字を一つのユニット(塊)として扱う場合、一般的には「ブロック」を使用します。しかし、ブロックの特性を必要とせず、単に選択セットとして扱いたい場合は「グループ」を活用するのもお勧めです。

グループ(GROUP)

グループ関連のコマンドはホームタブ/グループパネルにあります。名前を付与してグループを作成することもできますが、選択セットとして使用する場合は名前のないグループでOKです。

1.ホームタブ/グループパネル/「グループ(GROUP)」コマンドを実行します。

  • * オブジェクトを事前選択し、右クリックのメニューからも実行できます。

2.選択セットにしたい図形を選択し、Enterします。下図のようにグループ化されます。

3.グループ内のオブジェクトを編集したい場合は、「グループ選択(PICKSTYLE)」をOFFにします。編集後ONにするとグループとして再度選択できます。

4.グループにオブジェクトを追加・グループからオブジェクトを除去する場合は、「グループ編集(GROUPEDIT)」コマンドを実行します。

  • * 既存のグループを選択し、右クリックのメニューからも実行可能です。

5.グループを解除する場合は「グループ解除(UNGROUP)」のコマンドを実行します。

  • * 既存のグループを選択し、右クリックのメニューからも実行可能です。

いかがですか? 皆さま、類似選択/クイック選択・グループの活用方法は選択のヒントになりましたでしょうか? 今回の記事で「AutoCADで選択を極める」は最後です。皆様の作業効率アップにつながれば幸いです。