エッフェル塔をデジタル化:世界最大の3D都市モデルができるまで

2020年12月 8日

建設業

パリのシンボルであるエッフェル塔の集合記憶が、BIMにより3Dモデルで新たな形で恒久的に記録されるようになった。パリ市はBIMを活用し、国際デザインコンペ「Grand Site Tour Eiffel」用に、この象徴的なエッフェル塔を含む53万8千平米のエリアの永久保存を行った。

オートデスクとのパートナーシップにより、世界最大規模となる都市モデルを作成。342GBもの点群データを含んだこのモデルは、現地にある全ての建物と道路、木々や噴水を正確に描写している。

このモデルは、エッフェル塔とその周辺エリアを永久保存するだけでなく、改修にも使用されることになる。この壮大な取り組みを今回、「Redshift 日本版」からダイジェスト形式で紹介する。

Grand Site Tour Eiffelとは

2024年開催のパリ夏季オリンピックに先立ち、エッフェル塔に沿って広がる53万8千平米の公園エリアの再開発が予定されている。そのデザインを選択するため、パリ市が行ったコンペ。そこで重視されたのは、市民に「鉄の貴婦人」と呼ばれるこの象徴的な構造物が歴史と自然環境を尊重した形で扱われ、そのエリアの多くが植物や公園、歩行者に返還されることだった。

エッフェル塔と歩行者のゾーンのバーチャル画像(提供:GP+B)

コンペの要旨は、エッフェル塔エリアの歴史を尊重しつつ、訪問者の体験を現代化することだった。そして世界各地の建築家や都市設計家、エンジニア、ランドスケープデザイナーのチームにデザインの提出が募られた。

全てのチームが地形的、専門的、技術的に対等な立場でコンペに参加できるよう、全プロジェクトは共通のデジタルモデルを元に作業することが要求された。この共通モデルの作成にオートデスクが関与した。

点群データの取り込み

このコンペ用の都市モデルの作成には、二つのチャレンジが存在した。まず、参加者が正確に変更を加えられるよう、現地の景観をあらゆるアングルから眺められるようにする必要があった。また、審査員とパリ市民に新たなエッフェル塔エリアのVRツアーを提供することが必要だった。

オートデスクは、フランスの測量会社Gexpertiseと数週間に及ぶコラボレーションを行い、スキャンからBIMを作成する技術を活用して現地の3Dモデルのマッピングを行った。Gexpertiseは情報収集にLiDARを使用し、地上用と携帯型のレーザースキャナーとドローン、またゴンドラに設置したカメラを配備。その後、フォトグラメトリーを使用して、エリアの地形を完全に描写するグローバルな点群データを取得した。

とりわけ重要だったのが、測量の精度だ。53万8千平米に及ぶ現地の地形は、非常に複雑であることが判明。砂利道や噴水から425脚のベンチ、560基の電灯、25体の彫像、100基のゴミ箱、1,000棟の建物、8,200もの樹木と花壇など、あらゆるディテールの記録、テクスチャ化が必要だった。数百時間に及ぶデータキャプチャーは、全てAutodesk ReCapで処理され、103億点以上、342GBもの点群データとなった。

オートデスクはGexpertiseと数週間に渡るコラボレーションを行い、エッフェル塔エリアの3Dモデルをマッピング。それが103億点を超える342GBもの巨大な点群データとなった(提供:Gexpertise)

モデルを形にする

この作業の完了後、Gexpertiseのチームは、都市規模の3Dモデリングのスペシャリストであるカナダのエンジニアリング企業WSPのチームと合流。測量結果は Autodesk InfraWorksで処理されて約200の点群データに抽出・ラスタライズされ、3ds MaxとUnreal Engineを活用した二つのVRデータを生成するために使用された。WSPは、Autodesk BIM 360プラットフォームを使って、建築・都市プランニングの各事務所やエンジニアリング企業と緊密に連携することが可能となった。

WSPの測量により約200の点群データが抽出およびラスタライズされエッフェル塔と庭園の仮想現実モデル2点が生成された(提供:WSP)

エッフェル塔と庭園の3Dレンダリング画像(提供:WSP)

本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift 日本版」の記事の一部を、許可を得て転載したものです。

この記事の提供者

Maxime Thomas

フランスのラジオのエディターを務めるマキシム・トーマスは、デジタル トランスフォーメーションやその結果など、産業化のさまざまな面をカバーしています。

【Redshift 日本版】エッフェル塔をデジタル化:世界最大の3D都市モデルができるまで