尺度の違うテンプレートの作成方法

2023年12月 4日

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AutoCADでテンプレートを作成するには Vol.4

過去の記事では、モデル空間での作図を想定した尺度1:1のテンプレートの作成方法をお伝えしました。今回はこの尺度1:1のテンプレートをベースにして尺度の違うテンプレートの作成方法をお伝えします。

ベースとなるテンプレート

ベースになるテンプレートは、よく使用する図形も合わせて保存した下図のテンプレートで説明していきます。

図1

各スタイル管理のコマンドを楽に実行する方法

本題に入る前に、各スタイル(設定)コマンドを楽に実行する方法をご紹介したいと思います。ワークスペース(画面まわり)が既定値の状態だと、各スタイル管理のコマンド場所を探すのに結構苦労します。皆さまメニューバーをご存じでしょうか? メニューバーからの実行方法をご紹介しておきましょう。

1.クイックアクセスバー/メニューバーを表示をクリックします。メニューバーが表示されます。

図2

2.メニューバー/形式メニューを確認します。

図3

メニューバーを表示すると、このようにほとんどのスタイル管理が形式メニューの中に集約されていて大変便利です。ぜひお試しください。

尺度の違うテンプレートの作成方法

今回は1:1をベースに1:3のテンプレートを作成します。AutoCADで作図する場合の尺度の概念を確認しておきましょう。基本は「ものは実寸で作図する」です。つまり1,000mmのものは1,000mmでCAD上に作図します。

mmで作図するか、mで作図するかは作図する内容や尺度によります。尺度1 / 500以上になると、mで作図する場合もよくあります。またcmで作図するというのはありません。

さて、下図のように1,000mmでCAD上に作図すると、A3用紙に当てはめようとしても用紙には収まりません。

図4

そこで下図のように、実寸で作図するもの以外を尺度の逆数倍します。用紙サイズを3倍すると下図のように収まります。

図5

印刷する時に全体を3分の1に縮小して、紙サイズで印刷します。図枠以外、製図要素となるオブジェクトは尺度の逆数倍することになります(例:印刷時に文字高さ5mmにしたい場合はCAD上で文字高さ15mmで作成)。

この尺度の概念を理解したうえで作業していきます。

図枠等(製図要素)を3倍(尺度の逆数倍)する

1.修正パネル/尺度変更(SCALE)コマンドを実行し、製図要素を選択し、原点を基準に3倍します。

図6

ボルト、穴、などは製図要素ではないので実寸のままです。選択対象ではありません。

図7

図面範囲を変更する

1.図面範囲設定(LIMITS)コマンドを実行します。左下コーナーは(0,0)のままEnterします。

図8

2.右上のコーナーを指定します。今回は(1260,891)、420×3=1,260、297×3=891。または用紙の右上コーナーをマウスで指示してもOKです。

図9

グリッド表示を図面範囲にしている場合は下図のようになります。

図10

尺度に合わせて寸法スタイルを修正する

1.寸法スタイル管理ダイアログを実行し、ベースとなる1-1のスタイルを選択します。

2.修正のボタンを押します。

図11

3.フィットタブ/寸法図形の尺度/全体の尺度を3にします。OKでダイアログを閉じます。

図12

4.1-1のスタイルを選択し、右クリックのメニューで名前変更を実行します。

図13

5.名前を1-3に変更します。

図14

6.閉じるボタンでダイアログを閉じます。

7.配置してある寸法、引出線(LEADER、QLEADERコマンドで作成したもの)があれば、以下のように更新されたかを確認します。

図15

注意

引出線(LEADER、QLEADERコマンドで作成したもの)の文字の高さは寸法スタイルの更新には追従しません。上の図は前の手順、尺度変更で大きさが変更してある状態です。

尺度に合わせてマルチ引出線スタイルを修正する

1.マルチ引出線スタイル管理ダイアログを実行します。スタイルを選択し、修正ボタンを実行します。

図16

2.引出線の構造タブ/尺度/尺度を指定の値を3に変更し、OKします。

図17

3.同様の手順で他のスタイルも更新し、ダイアログを閉じます。

図18

4.配置したマルチ引出線を確認します。下図のように尺度に合わせて更新されていないことが分かります。

図19

5.マルチ引出線を選択しプロパティを変更します。全体の尺度を3にします。

図20

6.ブロック付きの引出線はうまく更新されません。よって削除して再度作成し、配置をしてください。

図21

尺度に合わせて線種尺度を修正する

1.線種設定(LINETYPE)を実行し、線種管理ダイアログを開きます。詳細の項目が表示されていない場合は、右上の詳細を表示ボタンを押します。

図22

2.グローバル線種尺度の値を変更します。0.5→1.5(0.5×3=1.5)

図23

下図のように全体の線種尺度が修正されます。

図24

ページ設定を確認する

ページ設定を尺度指定で作成している場合は1 / 3用のページ設定に修正をしてください。

図25

ファイルを保存する

1.名前を付けて保存を実行し、ファイルの種類をAutoCAD図面テンプレート(*dwt)にします。

図26

2.名前を1-3とし、保存します。

図27

1-1のテンプレートをベースに上記手順を繰り返し、必要な尺度分のテンプレートを作成していきます。

「AutoCADでテンプレートを作成するには?」の記事は今回で最終回です。皆さまの作業効率アップのヒントになれば幸いです。