AutoCAD ポリラインで計測する
2024年 8月30日
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AutoCADで計測するには? Vol.2
前回の記事ではコマンドレベルでのAutoCAD計測ツールのご紹介しました。今回は、計測する内容を「長さ」に特化してより実務に役立つ計測方法をお伝えます。
ポリライン
AutoCADには「ポリライン」というオブジェクトがあるのをご存じでしょうか? 土木系のユーザー様はご使用になっている方が多いと思います。メカ系のユーザー様は「あることは知っているけど使ったことないよ」という方が多い印象です。「毎回分解しないといけないからやっかい」と思っているユーザー様もいらっしゃるかもしれません。
ポリラインには明確な使いどころがあります。次の2点です。
- 総延長として認識させる。
- オフセットを簡便に実行する。
今回は(1)の特徴を生かしてポリラインを使用し、長さを計測してみたいと思います。
総延長を計測する
ポリラインを作成後、「オブジェクトプロパティ管理」または「LIST」コマンドで計測します。計測した結果はテキストとしてAutoCAD上に残せます。
オブジェクトプロパティ管理を使用する場合は、パレットの「長さ」の項目をクリックすると、電卓ボタンが表示されるので、「クイック計算」のダイアログより結果をテキストとしてコピー・貼り付けできます。
LISTコマンドを使用する場合は、直接テキストウィンドウよりコピー・貼り付けできます。
ディバイダと計測
ディバイダ・メジャーは、選択したオブジェクトを分割するコマンドです。ディバイダは指定した数に等分割し、計測は始点側から等ピッチで分割します。オブジェクトは切断されるわけではなく、分割点に「点」オブジェクトを配置します。また点の代わりに指定したブロックを回転しながら配置することもできます。
1.点スタイルを設定します。ホームタブ/ユーティリティ/点スタイル管理(PTYPE)を実行します。既定値は左上の形状になっています。今回は×形状を選択します。
「スクリーンに対する相対サイズ」にチェックをすると画面の表示倍率に応じて作成される点の大きさが変更されます。点の表示サイズにばらつきがある場合は「再作図(REGEN)」を実行してください。「絶対単位のサイズ」にチェックをすると、画面の表示倍率に関わらず、一定の固定サイズとなります。今回は絶対サイズの単位にチェックをし、点サイズを「2」にします。
2.指定した数に等分割します。ホームタブ/作成/ディバイダ(DIVIDE)を実行します。分割するオブジェクトを選択後、分割数を入力し、Enterを押します。下図は10等分した場合です。
3.指定した距離(ピッチ)で分割します。ホームタブ/作成/計測(MEASURE)を実行します。始点となる側で分割するオブジェクトを選択後、距離(ピッチ)を入力し、Enterを押します。下図は40mmピッチで等分した場合です。
- * (2)の手順で作成した点は削除してから実行してください。
計測(MEASURE)を使用して、始点から特定距離のポイントも計測できます。
4.ディバイダ・計測を使用し、点の代わりに「指定したブロック」を配置することができます。
- * (3)の手順で作成した点は削除してから実行してください。
コマンドを実行し、オブジェクトを選択後、オプションで「ブロック」を選択します。
コマンドラインに「ブロック名」を入力し、Enterを押します。今回は作成済みのブロック「box」と入力し、Enterを押します。
ブロックを選択したオブジェクトに同角度で配置するために、以下のメッセージに対して「はい(Y)」を選択します。
計測間隔を「20」と入力し、Enterを押すと下図の結果となります。
ポリラインを作成・編集するコマンド
ポリラインを作成・編集するコマンドは以下のようなコマンドがあります。
1.長方形(RECTANG)
コマンドの説明は割愛させていただきます。
2.ポリゴン(POLYGON)
コマンドの説明は割愛させていただきます。
3.ポリライン(PLINE)
線分と同じように寸法を指定してポリラインを作成できます。オプションを使用し、必要に応じて直線以外に円弧を挿入しながらポリラインを作成することもできます。
4.結合(JOIN)
「ポリライン(PLINE)」のコマンドを最初から使用し、計測するためのオブジェクトを作成するのは難しいかと思います。通常の線分・フィレットなどの修正コマンドを使用して図形の形を整え、最後にポリラインに変換するコマンドが「結合(JOIN)」です。
コマンドを実行し、一つのポリラインとして結合したいオブジェクトを全て選択し、Enterを押します。
結合するオブジェクトが点連続になっていない場合、例えば、オブジェクト間に微小な隙間があったり、交差していたりする場合は結合できません。
5.ポリライン編集(PEDIT)
結合するオブジェクト間に微小な隙間がある場合、(4)の結合(JOIN)コマンドが適用できません。「ポリライン編集(PEDIT)」のオプション「許容差」を使用すると隙間を埋めて結合できます。次のような七つのオブジェクトに結合(JOIN)コマンドを実行すると、下図のようになります。緑の枠内の線分と円弧が結合されていません。
原因は微小な隙間が存在するからです。拡大して確認してみると下図のように隙間(ギャップ)があり、点連続していないのが分かります。
ポリライン編集(PEDIT)コマンドを実行します。オプション「一括」を選択し、オブジェクトを選択しEnterします。線分・円弧をまずは個別のポリラインに変換するステップです。
オプション「結合」を選択します。結合するステップです。
オプション「結合タイプ」に入り結合方法を確認し、必要に応じて変更します。
今回は線分を延長させて「隙間(ギャップ)」を埋めますので「延長」を選択します。
許容差を入力します。想定する隙間(ギャップ)の少し大きめの値を入力し、Enterを押します。今回は「0.03」とします。
一つのポリラインに結合されたのが確認できます。
6.境界作成(BOUNDARY)
閉じられた領域の一番近い境界にポリラインを作成します。「境界作成(BOUNDARY)」を実行します。オブジェクトタイプを「ポリライン」にし、「点をクリック」を選択します。
図形で境界を作成したい内側の位置をマウスでクリックしEnterします。下図のようにポリラインが作成されます。
では、図形の最外形にポリラインを作成するにはどうしたらよいでしょうか? 下図のように外側に長方形で仮の境界を作成します。
下図の位置をマウスでクリックし、Enterを押します。結果として内側と外側に二つのポリラインが作成されます。
7.フィレットの「ポリライン」オプション
下図のような作成済みのポリラインの角部に同半径でフィレットを一括で作成する場合はフィレットの「ポリライン」オプションを使用すると便利です。
- * 半径値を変更する場合はいったん、半径値を「0」にしてから再度変更する値でフィレットを再作成します。
8.グリップ編集
下図のような作成済みのポリラインを形状変更するには「グリップ使用した編集」が便利です。
グリップをドラッグするとストレッチになります。
グリップを表示させた状態でクリックせず触れるだけにすると以下のメニューが表示されます。
表示されたメニューやストレッチをうまく使用してポリラインの形状変更をすると効率よく作業が可能です。
いかがですか? 皆さま、AutoCADで長さを計測する場合は「ポリライン」がキーワードになることをご確認いただけたでしょうか? 次回は、「面積に関する計測方法」についてご案内したいと思います。