HEMS

HEMSメリット・デメリット、補助金のこと解説します

HEMS(Home Energy Management System)とは、日本語に訳すと「家庭用(住宅用)エネルギー管理システム」となり、HEMSを中心に住宅の省エネルギーを実現することを意味します。

HEMSは制御部分の機器のみを指す場合とシステム全体を指す場合があります。前者は配電盤に設置した機器を指しますが、後者は配電盤への設置機器以外にもスマートメーターやそれらをつなぐ通信網(通信規格)も含めたシステムを指します。そして、住宅単位だけでなく、外部の発電施設とHEMSやスマートメーターをつなぐ通信網のことをスマートグリッドといいます。

このように、HEMSは家庭用エネルギーの利用量を「見える化」し、利用量の把握と制御システムを用いて、使いすぎの際に利用制限を実現します。

住宅の利用エネルギーの最小化を実現する二つの要素

住宅の利用エネルギーの最小化を実現する二つの要素として、「見える化」と「制御」があります。

「見える化」により、自宅の電力使用量をコンセント単位まで把握できます。「制御」は通信規格の統一された家電をネットワーク化し、遠隔制御または自動制御を可能にします。HEMSを用いると、次の事項を実現できるようになります。

  • 外出先から家電製品を操作。
  • 電気代が安い時間に自動運転し、節電。
  • 電気代が高い時間は節約運転し、節電。

新築あるいはリフォーム時にHEMSを設置する際、イニシャルコストとランニングコスト、あるいはエネルギーの消費量などをシミュレーションにてご確認いただけます。

HEMSのメリット・デメリット

HEMSには、次のメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 各電化製品の制御が可能。
  • 「見える化」と合わせて利用すると、エネルギー需要のピークカットやピークオフの実現が容易。
  • ほかのエネルギーについても制御を行うと、エネルギーコストの削減を実現できる。

デメリット

  • 認知度がまだ低い。
  • 補助金制度もあるが、コストメリットが分かりにくい(イニシャルコストがかかる)。
  • HEMS対応の家電がまだ少ない。

これらのメリット・デメリットは、太陽光発電事業と似ています(特にイニシャルコストがかかる、導入時の補助金制度によりコストメリットが変動する など)。

一般的に、新築時に設置することで普及を促しますが、リフォーム時に設置する場合は、構造的・設備的な設置可能範囲の設定など課題も多く、コストメリットが必ずしも大きくない場合も多くあります。

現在施行されている補助金制度

新築の場合

  • ゼロエネ住宅補助金 ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業
  • エネファーム設置補助 家庭用燃料電池システム導入支援事業
  • すまい給付金(現金で住宅を取得する場合は、長期・低炭素認定住宅など、フラット35Sと同等性能を有することが給付の要件)
  • 市町村住宅関連補助金制度一覧
  • 地域型住宅グリーン化事業

リフォームの場合

  • エコリフォーム補助金(年齢制限なく持ち家のリフォームまたは中古住宅を取得してリフォームする場合に補助金が支給される)
  • 若者の中古住宅取得時のエコリフォーム補助金(若者が中古住宅を取得する際のエコリフォーム工事に対し補助金が支給される)
  • ゼロエネ住宅補助金 ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業
  • 省エネ改修補助金(断熱リノベ)
  • エネファーム設置補助 家庭用燃料電池システム導入支援事業
  • 市町村住宅関連補助金制度一覧
  • 長期優良リフォーム補助金
  • 地域型住宅グリーン化事業

HEMSを実現するエコ住宅設備

HEMS実現する設備機器の代表例を挙げましょう。

高効率給湯器

通常熱交換機から排熱として捨てる「排ガスの熱」を再利用。排熱側に熱交換機を1基増やすことで、効率的な熱利用ができる。さらに、排熱の温度を下げ、CO2の排出も抑える。

節湯水栓

温水の位置で待機状態とするのではなく、水の位置で待機状態とすることでエネルギーの消費を抑える。

太陽光利用システム

太陽光を利用して給湯や冷暖房などの電力エネルギーを生み出す。再生可能エネルギーを生み出すため、電力会社からの買電やCO2の排出を抑える。

ほかにもエコリフォームの補助金対象となる設備に開口部の建具(内窓・外窓・ドア・ガラス)、断熱材・高断熱浴槽・節水型トイレがあります。なお、リフォームの補助金対象ではありませんが、HEMS対応家電は制御が可能となるため、使いすぎや無駄を抑えることでエネルギーの使用量を抑えられます。

HEMS最大の課題 ~通信規格の整備と普及~

HEMSの大きな課題は、日本と欧米による通信規格の違いです。全体の使用電力量を把握し、個々の製品を制御するには同一の通信規格に対応している必要があります。日本では、ECHONET-Lite(エコーネットライト)という規格が、一方、欧米ではSEP2.0(Smart Energy Profile 2.0)という規格が推進されています。

つまり、日本の通信規約も今後、国際標準化の影響が受ける可能性があります。

今回はHEMSについて解説しました。京都議定書の制定から省エネに対する政策の強化がなされ、設計者の関心も高まっています。住設機器の設置・管理も省エネ施策の一つではありますが、いかにして設備に頼らない住環境を提供できるかも住宅設計の今後の課題となります。

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