代表取締役社長 細屋伸央氏
「現場の人手不足に対応するために建設DXを推進し、SDGsへの対応として、建物の脱炭素化や産廃排出量削減と併せて、自社のCO2排出量算定(スコープ1、2、3)に取り組むなど脱炭素経営にも注力しています。建設会社としての社会的責任を果たすことで、人々が暮らしやすく、働きやすい街づくりに貢献していきます」
株式会社タカヤ

伝統的なゼネコンの枠にとらわれず、「ブランディング」・「環境」・「デジタル」を掛け合わせて全国展開を進める株式会社タカヤでは、2017年にBIMを導入。
現在は複数のソリューションを、設計、施工、施主へのプレゼンと複数の領域で利用している。CDE(共通データ環境)の構築によって、共同作業の効率化も実現した。
| 事業内容 | 建築事業、環境建設事業、まちづくり事業、住宅事業、不動産事業など |
|---|---|
| 従業員数 | 215名(2026年6月現在) |
| サイト | https://takaya-net.jp/ |
岩手県盛岡市に拠点を構える株式会社タカヤ(以下、タカヤ)は、1930年に創業した東北屈指の総合建設会社(ゼネコン)で、2030年に100周年を迎える老舗企業だ。地元の東北地方だけでなく、早くから首都圏でも建設工事を請け負っており、盛岡に加えて東京にも本社を構える。
さらに、東海(静岡)、四国(愛媛)地方にも営業拠点を設けており、祖業である建築事業を中心に、環境建設(土木)事業、まちづくり事業、住宅事業、リノベーション事業、不動産事業など幅広く展開。いずれも、長年、建築事業で培った知識や経験を基に、クオリティの高い仕事を手掛けている。
売上高の約4分の3を占める建築事業では、民間企業や官公庁などからの工事を幅広く受注している。同業他社は、施工段階からプロジェクトを請け負うケースが多いが、タカヤでは自社内に構造や意匠などの設計部門を抱えており、インテリアコーディネーター(IC)とも一体となって共同作業を行うことで、設計から施工までをワンストップで行えるのが強みだ。
「一貫した仕事によって、品質の高い建築物をスピーディーに作れるのが一番のメリットです」と語るのは、代表取締役社長の細屋伸央氏である。
その設計から施工までを一手に引き受けられる同社のリソースの豊かさとレベルの高さを象徴する一つが、工場建設ブランド「Factoria(ファクトリア)」である。Factoriaは、「作業ができればそれでいい」という従来の工場が持つイメージを払拭。設備や動線計画といった機能面だけでなく、明るくおしゃれな食堂など快適な空間を設け、働く人々のモチベーションを上げることにまで配慮したブランドで、2017年にはグッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を得ている。

木のオブジェが印象的な盛岡本社にあるショールーム。開放的なワークスペースも整備され、充実した研修制度などソフト面でも従業員が働きやすい環境を提供している

代表取締役社長 細屋伸央氏
「現場の人手不足に対応するために建設DXを推進し、SDGsへの対応として、建物の脱炭素化や産廃排出量削減と併せて、自社のCO2排出量算定(スコープ1、2、3)に取り組むなど脱炭素経営にも注力しています。建設会社としての社会的責任を果たすことで、人々が暮らしやすく、働きやすい街づくりに貢献していきます」
建設DXへの取り組みの一環として、タカヤが積極的に推し進めているのがBIMの活用である。国が建設工事における業務効率化や生産性向上の切り札としてBIMの普及を推進するようになった潮流に乗り、2017年にAutodeskのBIMソフト 「Autodesk Revit(以下、Revit)」を導入した。

建築事業部 工務本部 建築設計グループマネージャーの伊藤慎吾氏
「当初は正直、『何に、どう使えばいいのか?』と迷いました」
実は、BIM推進を掲げる前社長の号令の下で導入はしたものの、社内にBIMの具体的な知識を持った従業員はおらず、導入の意義や導入で得られる効果が分からなかったのだ。

建築事業部 建築設計グループ 主任の安東由吏江氏
「『今まで2D CADで行っていた設計が3Dでできるようになる』程度の知識しかなく、まずは設計業務で使ってみることになりました」
そうして、しばらくは設計業務でRevitを使っていたが、前社長から経営をバトンタッチした細屋氏は、「BIMを使って概算コストの算出や積算の効率化を図り、精度を向上できないか?」と考えた。BIMは設計に用いるだけでなく、BIMモデルの情報を活用することで数量算出や施工計画の検討など、さまざまな用途に使えることを知ったからだ。
概算コスト算出の精度向上とスピードアップは、細屋氏が長年、実現したいと考えていた目標であった。
「施主様から建設工事の発注を打診され、『ひとまず概算工事費を出してほしい』と言われたら、可能な限り速やかに準備します。しかし、十分検討できないと数字の精度が低くなり、後に困る恐れもあります。BIMによってその問題が解決できるのではないかと期待したのです」と細屋氏は話す。
細屋氏からの要請を受け、安東氏はこの活用に向け試行錯誤を重ねているところだが、細屋氏によるこの要請が、その後のタカヤでBIM活用が広がる大きなきっかけとなった。
タカヤにおいて、BIMの活用が一気に広がり始めるのは2019年。
Revitの使い方が分からず、設計部内への浸透がままならない状況が続いたため、他社(BIMでの設計が進んでいる企業)視察をしたことから、BIM推進室の必要性を感じた。そして、まずは伊藤氏と安東氏が中心となって、設計および設計以外での活用を拡大していくことになった。
同年、BIMを専門とするコンサルティング会社と契約。社内普及に向けての課題を洗い出し、具体的な普及計画に落とし込んでもらった。コンサルティング会社と対話を重ねる中で伊藤氏と安東氏が気付いたのは、BIMに対する認識が根本的に誤っていることであった。それは、Revitを単なる設計ツールだと見なしていた点だった。
「『従来から使っていた2D CADを、3Dで設計できるツールに置き換えただけ』だと思い込んでいたので、普及が進まなかったのです。BIMの本来の意義は、入力したデータをさまざまな切り口で加工し、活用すれば、業務効率化や生産性向上が実現できること。それを知り、その後の社内普及に弾みがつきました」と伊藤氏は語る。
| Before | After |
|---|---|
| BIMのソフトウェアを導入したが、詳しい知識を持つ従業員が社内にいない。CADの一種として、取りあえず設計部門で利用をしてみよう…… | BIMは単なるCADの入れ替えではなく、BIMモデルの情報管理・活用を前提とした発想が重要と分かった! |
| 同じ工事のプロジェクトであっても、社内の異なる部門間では、情報共有が難しい…… | Autodesk Formaで関係者とプロジェクト情報を一元管理することで、ここにアクセスすればモデル調整や設計コラボレーションなど共有・管理できる環境が整った! |
| 概算コストの算出や積算に時間や手間がかかる……。しかし、顧客の要望に応じて急いで作業をすると、算出内容の精度が下がってしまう恐れも…… | 将来的にはBIMモデルから概算コストを算出し、その後の積算業務の精度を高めていくことで、BIMの価値を高めていきたい! |
タカヤはその後、設計業務以外でのBIM活用を本格化させる。中でも細屋氏がこだわったのは、設計から施工に至るまでをBIMで一気通貫に効率化する取り組みであった。
施工におけるBIMの活用を促すには、まず工事現場のニーズに耳を傾けなければならない。そこで、いくつもの現場経験を持つ建築事業部 東京建築部 建築工事グループ 主任の千葉渉氏をリーダーに起用。千葉氏は、各現場の要望をヒアリングして活用方法を検討した。

建築事業部 東京建築部 建築工事グループ 主任の千葉渉氏
「最も多かったのは、BIMで作った設計モデルから施工図を作成できるようにしてほしいという要望でした。しかし、難度が非常に高く、いきなり実現するのは困難です。そこで、できることから少しずつ手をつけようと、設計モデルを基に施工計画を作るところから始めたのです」
この施工計画作成のために活用しているのが、大塚商会から2025年7月に導入した、クレーン施工計画シミュレーションソフト「K-D2 PLANNER」である。K-D2 PLANNERとRevitを連携させると、Revitで設計した3D設計モデルに基づき、効率的なクレーンによる施工計画が作れるのだ。このように、まずは「できること」からBIMの良さを現場に体験してもらい、設計から施工に至る一気通貫のBIM活用を実現していきたいと、BIM推進室は考えている。

クレーン施工計画シミュレーションソフト K-D2 PLANNERとRevitを連携させると、3Dモデルに基づいて効率的なクレーンによる施工計画が作成できる
同社では、大塚商会を通じてAEC向けクラウドベースプラットフォーム「Autodesk Forma」も導入。RevitとAutodesk Formaを一体で利用することにより、ここにアクセスして業務を進めればよいという、プラットフォームとしての共通データ環境(CDE)が構築され、データの「分断」も減少。関係者が同じプラットフォーム上で業務を完結させることによる、プロジェクト全体の生産性を向上させる仕組みになっている。
また、Revitで作成した設計モデルを連動させて、直感的な操作で高品質な静止画や動画を作成できる「Twinmotion」というアプリケーションも利用している。

建築事業部 岩手建築部 建築設計グループ 業務推進グループ 課長の高橋朋彦氏
「表現力が高く、施主様へのプレゼンテーションが効果的になりました。説明のしやすさも高まり、お客様にとっても理解のしやすさが大きく変化していると感じています」
このようにBIMの活用が、自社の業務効率・品質向上だけでなく、顧客対応へも効果を与えている。
BIMのさらなる活用に向けて、着実に歩みを進めているタカヤ。細屋氏は、「当社のBIM推進における中長期目標は、コスト算出や積算といった特定の領域にとどまりません。積算に向けた意識を超え、あらゆる手法・アプローチを柔軟に取り入れることで、設計から施工に至るプロセス全体の業務効率化と生産性向上を追求していきます」と強く語った。

盛岡本社。同社では、2020年に「タカヤSDGs宣言」を発して以来、脱炭素化社会の実現に向けてCO2排出量削減を可能にする建築物「ZEB」の設計・施工に力を入れている