ZEBの新たな定義 ~3段階でZEBを目指そう!~
建築物の実態に応じてZEBを目指せるよう、ZEBの概念が確立されています。第1にZEB Readyを、さらなる省エネルギーを目指せる建物はNearly ZEB以上を目指すよう、段階的に進められるようになっています。
ZEBの要素技術
ZEBを実現するための要素技術には、大きく分けて省エネルギー技術と創エネルギー技術の2種類があります。
省エネルギー技術
ダブルスキン(断熱・遮熱)
二重窓のこと。夏は暖められた空気を上部から逃がし、冬は温室効果がある。
ライトシェルフ(自然採光)
庇(ひさし)のこと。光を屈折させ、直射日光を遮断する。
ヒート/クールピット(集熱)
建物内へ取り込む外気を建物の地下にあるコンクリート製の空間(ピット)に通し、熱交換する技術。空気は夏に冷やされ、冬に暖められる。
創エネルギー技術
地中熱ヒートポンプ(夏)
外の暑い空気を地中熱で冷ましたのち、室内冷房に利用する。
地中熱ヒートポンプ(冬)
外の冷たい空気を地中熱で温めたのち、床暖房に利用する。
太陽光発電パネル
太陽からの光エネルギー(光子)を使用し、電気を発生させる。
ZEBの四つの効果
ZEBは四つの効果をもたらし、地球温暖化防止に貢献します。
1.光熱費の削減
室内環境の質を維持・向上しつつ、光熱費を削減できます。延床面積10,000m2(平方メートル)程度の事務所ビルで50%省エネルギーを実現した場合、年間で40~50%の光熱費を削減することも可能です。
2.不動産価値の向上
環境に配慮した建築物を求めるテナントや投資家が増えています。東京23区内に立地する事務所ビルにおいて、環境認証を取得しているビル(環境に配慮したビル)は新規制約賃料にプラスの影響を与えるとの調査結果も発表されています。
3.災害時の事業継続
災害時の事業継続性が向上します。東日本大震災で重要な業務が停止した理由として、半数以上の人が「停電のため」と考えています。そのほかにもエネルギーインフラ関連の回答が多く挙がっています。
4.テナント・執務者の知的生産性向上
心地よい室内環境を実現し、知的生産性向上が期待できます。自然エネルギー利用技術を取り入れた事務所へ移転した場合、移転後の室内環境の方が作業のしやすさを高めてくれると感じる執務者が増加したという調査結果も発表されています。
補助事業・税制
国の施策として、ZEBの建設に対して補助を行っています。平成28年度の募集は既に終了していますが、平成29年度についてもZEBの実証事業を予算案に盛り込んでいます。なお、平成28年度の補助事業では、対象経費の3分の2を上限に補助が出ています。詳しくは一般社団法人 環境共創イニシアチブのサイトご覧ください。
平成28年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業(ZEB)
太陽光発電設備などのエネルギー利用設備は「グリーン投資減税」にて特別償却や税額控除を受けられます。そのほか、省エネ・創エネを実施する工場・事業所において、利用可能な税制措置は次のサイトをご覧ください。
ZEB設計ガイドライン
ビルの建築に携わる事業者、設計者、施工者等に向け、ZEB Ready(省エネルギー率50%)の実現に向けた解説・支援を目的として『ZEB設計ガイドライン』が作成されています。ガイドラインは一般社団法人 環境共創イニシアチブのサイトより入手いただけます。
ZEB設計ガイドライン/パンフレット 公開・意見公募について
1.与条件・設計方針の把握
a.ZEBの設計方針の検討
- ZEBに向けた省エネ設計の方向性、要素技術の優先度 など
b.周辺地域の自然エネルギー利用の可能性の把握
- 自然通風の利用可能性
- 太陽光の利用可能性
- 太陽熱の利用可能性 など
2.設計モデル化<設計時評価>
a.建築省エネルギー技術(パッシブ技術)の検討
- 外皮断熱
- 日射遮蔽
- 自然通風利用
- 昼光利用
- 配置計画(アトリウム、ボイドなど)
省エネルギーを確認するには?
新築あるいはリフォーム時にZEBを実現するために、設備システムの高効率化や建築計画的な手法(パッシブ技術)を用いて従来よりも省エネルギーな設計を行った場合、その効果について、省エネルギー計算を用いてご確認いただけます。省エネルギー計算を行うための支援プログラムについては、次の製品情報をご確認ください。
今回はZEBについてご説明しました。ZEBは設計ガイドラインの準備や補助金などの施策から鑑みるに、今後の日本のエネルギー施策において重要なものとなっていきます。今後はさらなる技術進歩とインセンティブ(規制と制御)により導入を増やし、コスト低減を図ることが課題です。将来はエネルギーゼロの建築が当たり前の技術になっていくことでしょう。
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