AutoCADのテンプレートに絶対必要な設定

2023年11月 2日

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AutoCADでテンプレートを作成するには Vol.2

前回の記事では、テンプレートのイメージについてお伝えしました。どこまでをテンプレートに保存するかは重要なポイントではありますが、テンプレートには絶対に必要な設定があります。今回は、この絶対に必要な設定について、モデル空間での作図を参考に説明します。

AutoCADのテンプレートの作り方

  • * 尺度1:1のテンプレートを設定します。
  • * 既に記事でご案内した文字スタイル・寸法スタイル・引き出し線関連については、過去の記事をご参照ください。

1.作図の基準単位

AutoCADは世界の多くのユーザー様に使用されています。よって、インチ基準でもメートル(mm基準)でも図面を作成可能です。重要なのはテンプレート作成するときに、ベースとなるファイルをきちんと選択することです。mm基準で作成しているつもりでも、作図単位がインチになっていると正しい図面が作成できません。また、インチ基準とメートル(mm基準)のファイルでは、線種のファイルのロード先が違うなど不具合が生じます。

ベースとなるメートル(mm基準)のファイルを選択する

新規作成(NEW)のコマンドを使用し、acadiso.dwtを選択します。acad.dwtを選択するとインチ基準になります。

2.画層(レイヤー)を設定する

画層とは透明なスライドのようなものです。「寸法」「文字」「外形線」「破線」……といったように個別にスライドを作成していき、重ねて1枚の図面を構成していく機能です。

画層を分けるメリットは色々あります。例えば、画層ごとに表示・非表示・ロックができます。また、色・線種・線の太さをBYLAYERで作図すると、簡単に色・線種・線の太さを変更できます。

画層は何を基準に設定するのか

最小の基準としては、線種・線の太さ・作図のカテゴリーの違いで画層を分けます。

機械設計の部品図を想定した場合、線種・線の太さでは、実線・破線・中心線・細線・想像線。作図のカテゴリーの違いでは、文字・寸法線・図枠・ハッチングといったイメージになります。

工場レイアウトを想定した場合は、作図のカテゴリーをメインで画層を分けます。工場の建屋・既存設備・新設設備・電気……というイメージです。

画層の作成方法

1.ホームタブ/画層プロパティ管理を実行します。

2.画層プロパティ管理が開きます。

3.新規作成のアイコン、または右クリックのメニューより画層を新規作成を実行します。

4.画層の一覧に行が追加されます。画層名(レイヤー名)を入力します。今回は「01_JISSEN」とします。

画層名(レイヤー名)について

全角でも半角でも命名することは可能です。画層名でソートしたときに、メインの画層順にしたい場合は、頭に01、02、03などを付与するといいでしょう。また、海外とデータのやりとりの可能性がある場合は、半角英数での命名をお勧めします。

5.色を付与します。色の項目をクリックし、ダイアログより選択します。今回は「white(7)」にします。

色について

white(7)は画面の背景色が黒の場合は、白で表示、背景色が白の場合は黒で表示されます。また以下の色(250、255)は、背景色に制御されず「黒に近いグレイ」「白に近いグレイ」で表示されます.dxf由来のデータで、(250)の色でオブジェクトが作成され、背景色黒のAutoCADでオブジェクトが白く表示されないときには付与されている色を確認してみてください。

色はWindowsの基本色から使用し、メインのカテゴリーでないものは、目立たない色を付与すると見やすいデータになります。例えば、土木図面での地形や工場レイアウトでの工場建屋はグレイ系に設定するといいでしょう。

6.線種を付与します。線種の項目をクリックすると、線種選択のダイアログが開きます。選択リスト(ロードされている線種)にはContinuousしかありません。必要な線種をロードする必要があります。ロードのボタンを押します。

7.線種をロードするダイアログが開きます。ロード先のファイルが必ずacadiso.linになっていることを確認してください。

使用する線種を全てロードします。線種の種類はたくさんありますが、今回は比較的よくAutoCADユーザーに使用されている線種をロードします。以下をロードします。

CENTER(一点鎖線)、DASHED(破線)、PHANTOM(二点鎖線)

CONTINUOUSは実線です。破線にはHIDDENもよく使用されます。以下は同じ線種でも線種尺度が違います。

9.今回作成中の01_JISSENの画層(レイヤー)にはContinuous(実線)を付与しておきます。

10.必要に応じて線の太さを付与します。画層(レイヤー)に線の太さを付与すると、印刷時にその線の太さで印刷することができます。

印刷時に色従属の印刷スタイル(表示色に対して印刷時の線の太さを印刷スタイルで設定)を使用する場合は、付与する必要はありません。線の太さの項目をクリックし、今回は「0.3」とします。

11.印刷しない画層(レイヤー)を作成します。画層名(レイヤー名)を「20_Hojo」とし、以下のように設定します。印刷をしない画層(レイヤー)にする場合は印刷ボタンをクリックします。

12.1~11の手順で以下のように画層(レイヤー)を作成します。

画層(0とDefpoints)

既定値で0画層(レイヤー)があります。また、寸法コマンドを実行したタイミングでDefpointsという画層(レイヤー)が自動的に作成されます。この二つは特殊な画層で一般的な作図には使用しません。また、この二つの画層(レイヤー)を削除することはできません。

  • 0画層(レイヤー)はブロックの作成時に必要に応じて使用します。
  • Defpointsの画層(レイヤー)は寸法の補助線の端点を管理する目的で作成され、印刷されない設定になっています。この画層は他の画層と異なり 0画層(レイヤー)と連携しているため、0画層(レイヤー)が非表示またはフリーズされてしまうと Defpoints 画層上のオブジェクトの操作に影響を与えます。印刷しないオブジェクトを作成したい場合は別の画層(レイヤー)を使用しましょう。

3.精度(小数点以下の丸め)を設定する

寸法オブジェクト以外で使用される精度(小数点以下の丸め)を設定します。例えばプロパティパレットで表示される数値の精度、計測コマンドを使用したときに表示される数値の精度、ダイナミック入力使用ときに画面上で表示される数値の精度などがあります。下図のように既定値では、長さの精度が少数以下4桁、角度の精度は少数以下0桁になっています。角度の精度が甘いので必ず設定を確認しましょう。

プロパティパレット

距離(MEASUREGEOM)

ダイナミック入力

1.アプリケーションメニュー/ユーティリティ/単位設定(UNITS)を実行します。

2.ダイアログが開きます。長さと角度の精度(小数点以下の丸め)を設定します。今回は少数第四位にどちらも設定します。

必要に応じて長さ・角度のタイプを変更することができます。

3.ダイアログをOKし、ダイナミック入力での画面上の表示などを確認してみましょう。

4.線種尺度の設定

AutoCADは画面で表示された線種のピッチ通りに印刷されます。よってファイルの尺度ごとにグローバル線種尺度の設定が必要になります。

1.ホームタブ/プロパティ/線種/その他(LINETYPE)を実行します。

2.線種管理ダイアログが開きます。リストには既にロード済の線種の一覧が表示されています。このダイアログを使用して、線種をロードすることもできます。詳細を表示ボタンを押します。

3.ダイアログが拡張されます。グローバル線種尺度の値を設定します。目安としとて以下を参考にしてください(今回は0.5とします)。

  • 1:1→0.5
  • 1:2→1
  • 1:10→5(尺度分母の2分の1)

グローバル線種尺度の値を変更すると、下図のとおり、そのファイルの線種全体のピッチの尺度が変更されます。プロパティパレットでは線種尺度は1のままです。

5.文字スタイルの設定

過去の記事をご参照ください。

AutoCAD文字スタイルの設定方法とフォントについて

6.寸法スタイルの設定

過去の記事をご参照ください。

AutoCAD 寸法スタイルの設定方法

7.引き出し線関連

過去の記事をご参照ください。

テンプレートとしてファイルを保存する

これらの設定をテンプレートファイルとして保存します。

1.保存する前に、現在の画層をメインに使用する画層にしておきます。0画層のままにしておくと、そのまま0画層で作図しがちです。

カレントの文字スタイル・寸法スタイルを変更しておきます。TEXTLAYER・DIMLAYERも設定しておくと便利です。

2.名前を付けて保存を実行し、ファイルの種類を.dwtにします。拡張子を.dwtに変更すると、オプションで指定したパス下のフォルダーにジャンプします。

3.ファイル名を入力します。尺度などが分かりやすい名前にします。今回は1-1とし、保存します。

4.テンプレートオプションのダイアログが開きます。必要に応じてテンプレートの説明を記入し、OKします。

5.新規作成(NEW)を実行し、動作を確認してみましょう。

次回は、テンプレートにあると便利な設定と確認事項についてご案内したいと思います。

AutoCAD テンプレートにあると便利な設定と確認事項・提案