点群データの基礎知識から活用事例まで解説 ~製造・建築・土木のDX推進~
2026年 1月 7日
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現場の「今」を、より正確に、より安全に、より効率的に把握する― その鍵となるのが、点群データ(Point Cloud Data)です。レーザースキャナーやLiDAR技術の進化により、誰でも高速かつ高精度な3次元計測が可能になった今、建設・製造・インフラ管理など幅広い業界で、点群データはDXを加速させる不可欠な資産となっています。
本記事では、点群データの基本概念から取得方法、活用メリット、そして業界別の具体的な事例までを分かりやすく解説します。現場のデジタル化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
点群データとは?
点群データ(Point Cloud Data)とは、物体や空間の3次元形状を無数の点の集合として記録したデータのことです。それぞれの点(ポイント)には、X, Y, Zの3次元座標が記録されており、さらに色情報(RGB)や反射強度などが付加されることもあります。
このデータは、点の一つひとつが集まることで、まるでモザイク画のように元の物体や空間の正確な形状をデジタル上に再現するのが特徴です。写真や動画が2次元の情報であるのに対し、点群データは奥行きや体積を含む3次元情報を持つため、現実の世界を極めて忠実にデジタル空間に再現(デジタルツイン)するための基盤となります。
点群データが注目されている理由
近年、点群データが急速に注目を集めている背景には、主に次の要因があります。
まず、計測技術の進化と普及です。以前は高価だったレーザースキャナーや、ドローン、さらにはスマートフォンに搭載されるLiDARセンサーの性能が向上し、誰でも比較的容易に高速かつ高精度に3次元データを取得できるようになりました。
次に、データ処理能力の向上です。点群データは大容量になりがちですが、クラウドコンピューティングや高性能GPUの普及により、これらの大容量データを効率的に処理・解析できるようになりました。
そして最も重要なのが、建設・製造・インフラ管理といったさまざまな業界で、現場のデジタル化(DX)が不可欠な課題となっていることです。点群データは、このDXを推進するための「現実世界のインプット」として、欠かせない役割を担っています。
点群データを活用するメリット
点群データを活用するメリットとしては、次の3点が挙げられます。
- 高精度な現状把握と計測
- 非接触・安全なデータ取得
- 時間とコストの削減
高精度な現状把握と計測
点群データを活用する最大のメリットは「高精度な現状把握と計測」です。現場に足を運ばなくても、デジタル空間上で正確な距離や体積を計測でき、設計図面やBIMモデルとの比較も容易になります。これにより、手戻りや誤差の発生を大幅に削減できます。
非接触・安全なデータ取得
次に「非接触・安全なデータ取得」です。危険な場所や高所、立ち入りが困難なエリアのデータも、ドローンや地上型スキャナーを用いることで、作業員の安全を確保しながら収集できます。
時間とコストの削減
そして「時間とコストの削減」も大きなメリットです。従来、数週間かかっていたような複雑な現場の測量作業を、数時間から数日で完了させることが可能です。これにより、プロジェクト全体のリードタイム短縮に貢献することができ、結果的に人件費などのコストも削減されます。
点群データの取得方法と活用の仕方
点群データを取得する主な方法は、レーザースキャナーを使用することです。
| 地上型レーザースキャナー(TLS) | 構造物やプラント、遺跡などの静的な現場を、非常に高い精度で計測するのに適している |
|---|---|
| ドローン搭載型レーザースキャナー(UAV-LiDAR) | 広大な土地や複雑な地形、インフラの上部などを効率的に計測するのに用いられる |
| ハンディ型・ウェアラブル型スキャナー | 屋内や狭い場所、移動しながらの計測に適しており、手軽さとスピードが特徴 |
取得した点群データは、そのままでは活用が難しいため、専用のソフトウェアでノイズ除去や座標の統合(位置合わせ)といった処理が行われます。その後、設計モデルとの比較、体積計算、現況図面の作成、あるいはAIによる物体認識や変化点の検出などの高度な解析に活用されます。

点群データの業界別活用事例
点群データの業界別活用事例をご紹介します。
製造業での点群データ活用事例
製造業では、プラントや工場の管理において点群データを活用しています。大規模なプラントや工場・発電所などの施設管理は、稼働しながら数十年にわたり増改築が繰り返されており、既存の図面が現状と異なっているケースが少なくありません。
点群データは、施設全体をスキャンすることで「ある時点の正確なデジタルコピー」を作成できるため、ほしいタイミングで正確な図面を作成できるというわけです。
そして、このデジタルコピーが作成できるメリットは大きく三つあります。
- 既存設備の改修や新しい配管・機器の増設を行う際、点群データを用いることで、現在の配管やケーブル、機器の正確な3次元配置をミリ単位で把握できることです。設計者は、この点群データ上で新しい設備や配管ルートを計画し、既存の構造物と干渉しないかを事前にデジタル上でシミュレーション(クラッシュチェック)をすることができます。これにより、設計段階でのミスを根絶し、現場での手戻りや工期遅延をゼロに近づきます。
- 定期的に点群計測を実施することで、時間経過による施設の「変化」を捉えられます。例えば、圧力容器のわずかな変形、配管のたわみ、あるいは基礎部分の沈下など、機器のわずかな変形や摩耗を定量的に検知できます。さらに、この静的な点群モデルを、IoTセンサーから得られる稼働データ(温度、振動など)と統合(デジタルツイン化)することで、異常が発生する前に保全の必要性を予測する予知保全へと応用し、計画外のダウンタイム(設備停止)を防げます。
- 点群データを危険なエリアや高所での作業をデジタル空間でシミュレーションしたり、必要な機器の場所を直感的に特定したりできることです。現場作業員の教育や訓練に活用でき、安全性の向上にも良い効果が生まれます。

土木での点群データ活用事例
土木・建設業界では、点群データは測量のデファクトスタンダード(公式な規格認定はないものの、市場競争の結果として事実上の標準となった規格や技術)となりつつあります。
土木・建設業界では、点群データは広範囲の地形測量や、工事の進捗管理・出来形(完成した構造物)の検査などに用いられます。特にトンネルの掘削量計算や、切土・盛土の土量計算を人力測量よりも格段に速く、かつ高精度に行えるのが大きな強みです。
また、地震や豪雨などの災害発生後、ドローンLiDARなどを用いて被災地の点群データを迅速に取得することで、崩落箇所や土砂の堆積量、構造物の変形状況をスピーディに把握できるため、災害時の被害状況を迅速に把握するためのツールとしても活用されています。
それ以外にも、既設のインフラ構造物(例:橋梁、擁壁)の点群データを取得し、経年によるひび割れ、変形、劣化の兆候を検出し、デジタルデータと過去の設計データや定期検査記録を照合することで、優先的に補修すべき箇所を特定し、限られた予算内で最も効果的な維持管理計画の立案にも活用されています。

建築での点群データ活用事例
建築業界では、既存建物の改修(リノベーション)やリニューアル工事で点群データが活用されています。
古い建物には正確な図面が存在しなかったり、竣工後の改修によって図面と現状が異なっていたりします。点群データを用いることで、レーザースキャナーで取得した現状の3次元情報をミリ単位の精度でデジタル化できます。これにより、設計者は現場に何度も足を運ばずにデジタル空間上で正確な寸法を計測し、配管や構造物との干渉チェックを事前に行えます。
さらに、この点群データを基にBIM(Building Information Modeling)モデルを迅速に作成(As-Builtモデリング)することで、設計の精度と効率が大幅に向上し、施工段階での手戻りを最小限に抑えることも可能です。また、竣工時には点群データで実際の出来形をスキャンし、設計モデルと比較することで、施工品質の客観的な検証(出来形管理)にも活用されています。

自治体での点群データ活用事例
自治体では、点群データをインフラの効率的な維持管理に役立てています。例えば、橋梁や道路、上下水道施設などの老朽化診断です。スキャナーで取得した点群データと設計時のデータとを比較することで、経年による劣化や変状を定量的に把握できます。
これにより、優先度の高い修繕箇所を特定し、限られた予算の中で最適な維持管理計画を立案できるようになります。また、都市計画における現況のデジタル地図作成や景観シミュレーションにも活用されています。

点群データ活用にはAutodesk製品を
点群データをビジネスで実用的な資産へと昇華させるためには、高精度な設計・モデリング環境が不可欠です。ここでは、主要な業界ごとにお勧めの製品とその役割をご紹介します。
| 業界 | 主要な活用シーン | お勧めAutodesk製品 | 製品詳細 |
|---|---|---|---|
| 土木・インフラ | 現況地形測量、道路・橋梁の設計、出来形管理(施工後の検査) | Autodesk Civil 3D | 点群データをサーフェス(地盤面)モデルとして取り込み、道路線形や土量計算に活用。現況に合わせた最適な設計を可能にします |
| Autodesk ReCap | 大容量の点群データを効率的に処理し、Civil 3Dへの連携を最適化します | ||
| 建築・建設 | 既存建物(BIM/CADモデルがない)のリノベーション設計、改修工事の干渉チェック | Autodesk Revit | 点群データから既存建物の構造や設備をBIMモデルとして「モデリング」する作業をアシストします |
| Autodesk ReCap | 点群データのノイズ除去や整理を行い、Revitでのモデリング時間を短縮します | ||
| 製造・プラント | 既存工場の設備増設・配管ルート変更、設備干渉シミュレーション | Autodesk Inventor | 既存プラントの点群データ(現状)を参考に、新設する機器や配管の3次元設計を行います |
| Autodesk Navisworks | 新旧のモデル(点群と設計モデル)を統合し、干渉チェックや工事計画のシミュレーションを行い、現場での手戻りを防ぎます | ||
| 総合・管理 | 大規模データの統合管理、デジタルツインの構築、情報共有 | Autodesk Navisworks | 土木、建築、プラントなど異なる製品で作成された複数のモデル(ファイル形式)と点群データを一つの環境に統合し、大規模なプロジェクト全体を俯瞰したレビューや管理、情報共有を可能にします |
まとめ:点群データの活用のためにAutodesk製品を活用しませんか?
点群データは、貴社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる強力な資産です。しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、データ取得後のスムーズな設計・解析ワークフローの構築が不可欠です。
点群データの活用を本格化させたい、あるいは既存のワークフローに課題を感じているお客様は、ぜひ一度大塚商会にご相談ください。
大塚商会は、Autodesk社の最高位の資格である「Autodesk プラチナ認定パートナー」に認定されており、長年にわたり培ってきたあらゆる業界・業種へのCAD製品導入実績と豊富なナレッジがあります。
お客様の具体的な業務内容や解決したい課題を深くヒアリングし、点群データの処理・設計・管理に最適なAutodesk製品(Revit、Civil 3D、Inventorなど)やライセンス、そしてワークステーションやネットワーク環境まで最適なソリューションをご提案します。
点群データを「撮る」段階から「生かす」段階へと進めたい方は、ぜひお問い合わせください。