BIMガイドライン

国土交通省のBIMガイドラインを読んでも分からなかった方のために、BIMガイドラインとは? を簡単に解説

国土交通省「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」(令和4年改定)とは、官庁営繕事業の設計業務または工事業務において、円滑かつ効率的な事業の実施、および生産性向上を目的としたガイドラインです。

  • * ガイドライン本文は、「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン(BIM/CIMポータルサイト)」をご確認ください。
    国土交通省 BIM/CIMポータルサイト

ガイドラインの位置づけ

EIRとBEP

BIMガイドラインは、発注者がEIRを作成する場合や、受注者がBEPを作成する場合に参照するためのものです。

EIR(発注者情報要件)

EIRとは「Employer's Information Requirements」の略称です。受注者選定や契約に先立って、発注者から入札者に提示されます。具体的には、BIMモデルの詳細度や運用方法、契約上の役割分担など、発注者からの要求事項を示したものです。

BEP(BIM実行計画書)

BEPとは「BIM Execution Plan」の略称です。発注者が提示したEIRを踏まえ、受注者から発注者に対して提示されます。具体的には、プロジェクトの役割分担やBIM活用の目的、システム要件などについて、受発注者間の協議上の取り決めを文書化したものです。施工段階においては、発注者・設計者・施工者間で協議を行ったうえで、施工段階のBIM活用についてBEPを作成することが考えられます。

EIRを作成する際に参照すべき内容

発注者がEIRを作成する際に参考となる記載項目、記載要領、留意事項などが示されています。例として以下の六つの項目が挙げられています。

1.BIM活用の対象項目と活用の目的

BIM活用の対象項目と利用目的を定めます。例えば、合意形成や設計審査の円滑化、施設整備が周辺に与える影響の検証などが利用目的として考えられます。

2.BIMモデルの作成範囲や詳細度

利用目的に応じて、BIMモデルの作成範囲や詳細度を定めます。

例えば、BIMモデルを活用して景観の検討を行う場合、地域住民へ説明する場合、発注者と受注者で完成イメージの合意形成を行う場合など、利用目的によって必要となる詳細度(注1)が異なります。それぞれの目的に合った詳細度を設定します。

3.活用の時期

BIM活用の目的に応じて、適切な活用の時期を定めます。例えば、設計段階における施設管理者を交えた合意形成は、基本設計完了前の1回のみか、設計方針策定段階も含めて2回行うかなどを記載します。

4.属性情報など

室名や材料・資機材の名称などの属性情報を、どのような名称でBIMモデルに入力するかを定めます。室名は、設計業務では企画書(注1)、工事業務では設計図書に示される名称で入力するよう記載します。材料・資機材は、原則として標準仕様書(注2)に示される名称で入力するよう記載します。また、設計業務においては、原則として特定の製品名や製造所名が判読・推定されないようにする旨を記載します。

  • (注1)「営繕事業のプロジェクトマネジメント要領」および「官庁施設の企画書及び企画書対応確認書の標準的書式」に示す「企画書」
  • (注2)「公共建築工事標準仕様書」、「公共建築改修工事標準仕様書」および「公共建築木造工事標準仕様書」

5.使用するBIMソフトウェアが満たすべき要件

BIMソフトウェアが満たすべき要件を定めます。例えば、IFC形式のファイル出力が可能であることや、発注者が無償ビューアーなどを用いてBIMモデルの閲覧が可能であることが要件として該当します。

6.成果物など

BIMデータを電子納品の対象とする場合、成果物の作成方法や確認方法は「BIM適用事業における成果品作成の手引き(案)」による旨を記載します。提出されるBIMモデルのデータ形式は、IFC形式のファイルおよびBIMオリジナルファイルです。また、2次元CADデータの納品も求める場合はその旨を記載する必要があります。

BEPを作成する際に参照すべき内容

BEPを作成する際に参考となる、BIM活用に関する留意事項などが示されています。設計段階と施工段階、それぞれの記載事項を比較してみましょう。

設計段階と施工段階での共通事項

数量算出での利用

BIMモデルを活用して各室の面積や部材の数量算出(注1)を行う場合、BIMモデルを構成する部材に重複や欠落が生じないようにする必要があります。

数量算出の方法としては、BIMソフトウェアの自動算出機能を利用する方法と、積算用ソフトウェアを利用する方法があります。なお、BIMソフトウェアには部材同士が接合する部分の包絡処理や勝ち負け処理などの機能が備わっているものがありますが、IFC ファイルに変換すると機能が無効になる場合があるため留意する必要があります。

設計段階と施工段階で異なる事項

BIMモデルの作成範囲および詳細度

設計方針や設計内容を検討する場合

建築可能範囲、建築物へのアプローチ、平面計画などの検討を行う場合、BIMモデルの作成範囲および詳細度は利用目的に応じて設定します。必要以上に詳細にBIMモデルを作成してしまうと修正時の作業量が増えてしまうため、留意する必要があります。周辺敷地は、建築物の各部分の高さや日影の検討、風環境シミュレーション、ヒートアイランドシミュレーションなどに利用することが想定されます。利用目的に応じて必要な範囲の周辺道路や建物などのモデルを作成します。

施工計画や施工手順を検討する場合

施工計画の検討などを行う場合、BIMモデルの作成範囲および詳細度は利用目的に応じて設定します。

  • * 施工図の詳細度の設定については、「施工図のLODとBIM施工図への展開(一般社団法人日本建設業連合会ホームページ)」をご確認ください。
    施工図のLODと施工図BIMへの展開

2次元図面などの作成

設計段階においてBIMモデルから2次元図面などを作成する場合

基本設計、実施設計の各段階において求められる作成範囲および詳細度で作成します。基本的に、2次元図面の作成には「建築工事設計図書作成基準」および「建築設備工事設計図書作成基準」を適用します。

段階BIMモデルから
作成する成果物
備考
基本設計(建築)配置図(敷地求積図を含む)、平面図(面積表・求積図を含む)、立面図、断面図、仕上げ概要表基本設計段階では、詳細図や展開図などで表現する部材(幅木、天井見切縁など)のBIMモデルは原則として作成する必要はありません。
基本設計(設備)主要な機器やダクトなどの納まり、および維持管理スペースの検討が必要となる部材のBIMモデルのみを作成します。
実施設計(建築)建築一般図、矩計図、展開図、天井伏図、平面詳細図、部分詳細図など全ての部材の3D形状を部分詳細図レベルで作成してしまうとデータ容量が肥大し、修正時の作業量も増えてしまうため、必要に応じてBIM上で2次元加筆する場合もあります。
実施設計(設備)各設備平面図、各設備系統図など全ての部材の3D形状を部分詳細図レベルで作成してしまうとデータ容量が肥大し、修正時の作業量も増えてしまうため、必要に応じてBIM上で2次元加筆する場合もあります。

施工、および維持管理段階においてBIMモデルから2次元図面などを作成する場合

目的に応じた作成範囲および詳細度で作成します。

段階BIMモデルから
作成する成果物
備考
施工施工図、完成図施工図の詳細度はBIMモデルを用いない場合の2次元図面と同等で、所要の寸法などが表示されている必要があります。完成図の詳細度は設計業務における建築一般図程度で、各室の面積なども必要です。
維持管理BIMモデル自体、または標準仕様書に規定されている「建築物等の利用に関する説明書」の図表各製品の製造所名や製品番号など、工事段階で確定した属性情報を追加するほか、対象施設の規模や用途に応じて必要な属性情報を入力します。BIMモデルを成果物として提出する場合は、必要に応じてBIMモデルの説明書を作成することも考えられます。

干渉チェック

納まりなどの検証が必要な分野や範囲のBIMモデルを統合して、干渉チェックを行います。意匠・構造・電気設備・機械設備など、複数のBIMモデルの干渉チェックを行う場合、一つのBIMモデルに統合して行う方法と、複数のBIMモデルを重ね合わせて行う方法があります。干渉チェックは、各部材の外形寸法、クリアランス、工事における施工スペース、維持管理スペースを考慮して行います。

設計段階

設計段階では具体的な製造所などが確定していないため、部材が納まる見込みであることを確認します。

施工段階

確定した機器の外形寸法などをBIMモデルに反映して干渉チェックを行います。建物部材が干渉すること無く施工できることを確認します。

設計段階におけるBIMモデルを活用した検討

設計段階において、BIMモデルを活用してさまざまな検討やシミュレーションを行うことが考えられます。検討内容によっては、BIMソフトウェア以外のソフトウェアを利用することも想定されます。

建築可能範囲の検討

法令に基づく建築物の各部分の高さや日影を考慮した建築可能範囲を検討する場合は、検討に必要な建物形状、周辺敷地などの情報をBIMモデルに入力します。

建築物へのアプローチの検討

施設利用者の建築物へのアプローチを検討する場合は、検討に必要な建物形状、周辺敷地などの情報をBIMモデルに入力します。

平面計画の検討

ゾーニング計画、主要な室の配置などの検討を行う場合は、検討に必要なゾーン、室の面積、用途などの情報をBIMモデルに入力します。属性情報に応じて色分け表示することでゾーンや室を可視化し、検討を行う方法などが考えられます。

周辺への影響などの検討

ビル風や光害の発生など、施設整備が周辺に及ぼす影響の検討を行う場合は、周辺の建物形状、街路樹の状況、建設地の緯度経度など、利用目的に応じて必要な情報をBIMモデルに入力します。

温熱環境の検討

省エネや脱炭素化などを目的として建物全体や執務室などの温熱環境シミュレーションを行う場合は、窓や断熱材の性能、換気・通風の状況、冷暖房の性能など、必要な情報をBIMモデルに入力します。また、BIMモデルを構成する部材に重複や欠落が生じないようにする必要があります。

光環境の検討

執務室などの光環境の検討を行う場合は、庇(ひさし)やルーバーの形状に加え、周辺の建物形状、街路樹の状況、建設地の緯度経度など、必要な情報をBIMモデルに入力します。

  • * 自然採光シミュレーションの製品は、次のページにて詳細をご確認ください。
    Lumicept 製品情報

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