建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン

「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン」(令和4年3月改定)とは、建築物のライフサイクル全体において、プロセス横断型のBIM活用を目的としたガイドラインです。標準的なワークフローやBIMデータの受け渡しルールなどを整理することで、プロジェクト関係者の役割や責任を明確化しています。

実際のプロジェクト事例や留意点などが紹介されており、実務に即した内容です。BIMの導入・活用を検討している場合、最初に目を通すべきガイドラインといえます。

出典:建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001488797.pdf)

業務区分(ステージ)

複数の関係者間で情報管理を円滑に行うためには、BIMモデルの形状や情報の詳細度が変わる段階で業務区分(ステージ)を分けるのが有効です。BIMを活用しない場合の業務区分は、次のようになっています。

BIMを活用した標準ワークフローにおいては、従来よりも業務区分が細分化されます。

「コスト管理がしやすくなる」「区分ごとに契約を分けることで、多様な発注方式に対応しやすくなる」といったメリットがあり、全部で八つの業務区分(S0~S7)があります。

S0:企画建築物の規模や用途や活用イメージなどの事業概要を企画立案し、建築物が生み出す価値や効用を分析します。
S1:基本計画全体の事業スケジュールや建築基準法の設計条件などを検討し、事業の予算配分などのコスト計画を立てます。
S2:基本設計意匠・構造・設備の基本設計BIMモデルを作成します。
S3:実施設計前半基本設計をベースに実施設計BIMモデルを作成します。この時点でBIMモデルの形状詳細度と属性情報量が確定します。
S4:実施設計後半設計図書としてのとりまとめを行い、確認申請を行います。

建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン

S5:施工施工計画や施工図・製作図を作成します。詳細な形状や具体的な仕様、設備機器などの情報を入力した施工BIMモデルを作成し、各種建設ICTツールと連携させて施工・現場監理を実施します。
また、維持管理・運用に必要な情報(設備施工情報や設備機器の品番・耐用年数など)を確定し、維持管理・運用BIMモデルを作成します。
S6:引渡し竣工後、維持管理・運用BIMモデルを発注者や維持管理者・運用管理者に引き渡します。
(本体工事自体の引渡しは、S5:施工に含まれる)
S7:維持管理・運用維持管理・運用BIMモデルを活用し、日常的なマネジメント業務(清掃、保守点検、防災・セキュリティ管理)や修繕計画の検討などを効率的に行います。

BIMを通じた建築データの活用に関するガイドライン

標準ワークフローにおける業務

BIMを活用した標準ワークフローでは、次のような業務が想定されています。

ライフサイクルコンサルティング

建築のライフサイクル全体を通じて、建築物の価値向上のために発注者を支援する業務です。企画段階からだけでなく、プロジェクトの途中(設計段階など)から関与するケースもあります。

業務の担い手としては、PM(プロジェクトマネジメント)/ CM(コンストラクションマネジメント)会社や建築士事務所などが想定されます。

コンサルティング内容の例

  • EIRの作成支援
  • 各段階で締結するBEPの確認、発注者へのアドバイス
  • 維持管理・運用の方向性やBIMに含める情報の事前検討
  • モデリング・入力ルールの共有
  • 維持管理・運用BIMデータの確認(発注者の意向を反映したものであるかのチェック)

施工技術コンサルティング

主に設計段階において、発注者や設計者からの業務委託を受け、設計者に対して施工の観点からアドバイスなどを行う業務です。施工の技術検討内容をフロントローディングし、合理的な設計を行います。

業務の担い手としては、建設会社や専門工事会社などが想定されます。

コンサルティング内容の例

  • 性能比較検討、仕様の選定、設備の取り合い・納まりなどの提案
  • 構工法、施工技術、調達情報などの提案
  • 技術的難易度の高い建築物などの新しい構造形式の提案
  • 複雑な外装デザインに対する施工手順と詳細な仕様などの提案
  • 設備など、専門性の高い分野に関する提案

設計意図伝達

発注者からの業務委託を受け、設計者から施工者や維持管理・運用BIM作成者に対して設計成果物の説明を行う業務です。設計意図が正確に伝わるよう、設計BIMにおいて確定している範囲やモデリング・入力ルールなどを説明します。

また、質疑応答や施工図の確認、工事材料・設備機器の選定などに関するアドバイスを行います。

維持管理・運用BIM作成

発注者からの業務委託を受け、維持管理・運用を目的としたBIMモデルを作成する業務です。

業務の担い手としては、建築士事務所、建設会社、BIMコンサルタントなどが想定されます。

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六つの標準ワークフロー

ガイドラインには、6パターンの標準的なワークフローが示されています。どのようなメリットを得たいかによって、発注者が総合的に判断しパターンを選択します。

また、各パターンと親和性の高い発注方式を選択することで、より効果的なBIM活用につながります。

パターン1:設計~施工段階でBIM活用

設計~施工段階でスムーズに連携できるよう、S5において設計意図伝達を行うのがこのワークフローのポイントです。

例えば、設計者が入力した属性情報が確定値かどうか(既定値など、仮に入力された値ではないか)は、施工者には判別できません。設計情報が正しく伝わらなかった結果、設計BIMを引き継がずに施工BIMが新たに作成され、設計と施工でデータが分断されることにつながります。単にデータを受け渡すだけでなく、情報伝達の場を設けることで、BIMデータを最大限に引き継げるよう工夫されています。

パターン2:設計~施工~維持管理・運用段階でBIM活用

パターン1に加えて、維持管理・運用段階とも連携してBIMを活用します。

S5において、設計者から引き渡された設計BIMをベースに、施工者から提供される情報(設備施工情報、設備機器の品番・耐用年数など)を入力して維持管理・運用BIMを作成します。

パターン3:設計~施工~維持管理・運用段階でBIM活用

パターン2に加えて、S3~S4において施工技術コンサルティングを行います。

施工技術コンサルティングは設計者から業務委託を受けて建設会社や専門工事会社が行うことになりますが、このパターンでは工事請負契約は前提とされていません。つまり、施工技術コンサルティング業者が、実際の施工者ではない場合もあります。

プロジェクトの発注方式が設計・施工分離方式の場合、設計段階では施工者が確定していないため、このパターンが適しているといえます。

パターン4:設計~施工~維持管理・運用段階でBIM活用

パターン3と似ていますが、工事請負契約を前提として施工技術コンサルティングを行います。

施工技術コンサルティング業者が実際の施工も行うため、施工BIM・施工図の作成や施工計画の検討など、工事に向けた準備を前倒しで行えます。また、工事請負契約後、速やかに資材発注や工事着手ができるため、設計から施工までの工期短縮やコスト低減を図れます。

なお、パターン3と異なり、施工者技術コンサルティング業者は設計者ではなく発注者から業務委託を受けます。

プロジェクトの発注方式が設計・施工一貫方式の場合、S2~S5を一貫して総合建設会社に発注するため、このパターンが適しているといえます。

パターン5:設計~施工~維持管理・運用段階でBIM活用

基本的にはパターン4と同じですが、施工技術コンサルティング契約のタイミングが異なります。パターン4は設計契約と同時に、パターン5は設計段階の途中で契約します。

プロジェクトの発注方式がECI方式(注1)の場合、このパターンが適しているといえます。

  • (注1)ECI(アーリーコントラクターインボルブメント)方式:設計段階から施工者がプロジェクトに関与する発注方式。設計契約後、発注者と価格交渉のうえ合意に至れば施工契約を行う。施工者が最初から確定している設計・施工一貫方式とは異なり、あくまでも工事請負契約の「優先交渉権を持っている」という扱いになる。実施設計完了後に施工者を選定する設計・施工分離方式とは異なり、設計後の入札や業者選定の手間が省ける点がメリット。

パターン6:維持管理・運用段階でBIM活用

既存建築物などにおいて、維持管理・運用段階のみでBIMを活用するパターンです。設計BIMや施工BIMがないため、竣工図や竣工引き渡し図書をベースに維持管理・運用BIMを作成します。

データ共有

プロジェクト関係者間でスムーズに協働するため、CDEの活⽤が推奨されています。CDEを活用することで、プロジェクトに関するさまざまなデータの共有だけでなく、更新履歴や承認フローの確認も可能です。

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