製造業にとってのBIM対応の課題と解決策(その1)

2021年11月11日

製造業

製造業における建築・土木業界とのビジネスの課題として、「取引先からBIMデータを求められる」「競合他社は既に取引先へのBIMデータ提供で先行している」ということが挙げられます。

企業としての目的は自社製品を使ってもらうことですが、業種業界によって推進度が異なっていることに加え、製造業として何を目的に取り組むかにもよって異なります。この課題に対する各業種業界における製造業としての取り組み方・解決方法を探っていきたいと思います。

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基礎から解説! 製造業BIM/CIMへの取り組みについて

建築業界

建築業界では、製造業のBIM対応が最も進む業界ですが、検討のための「設計BIM」と、もの決め・合意形成のための「施工BIM」に分けて考える必要があり、おのずと製造業としてもBIMを一括りに考えず、目的に応じた対応が迫られます。

設計段階

検討のための設計BIMに対しては「スペックイン」するための営業活動を最優先として取り組むケースが多く、ゼネコン・設計事務所の設計者がパーツを使用する前提で設計変更に対応可能なBIMパーツを提供することが重要です。

そのためには、RevitなどのBIMソフトにてパーツ作成することをお勧めします。製造業としてInventorなどの機械系3D CADで設計した3Dモデルをフルに生かしたいところですが、機械系3D CADから変換されたサイズ固定のモデル形状ではパラメトリックな動作を与えられず、BIMソフト上での設計検討が進まないため、パラメトリックが可能なBIMパーツがスペックインするための重要な要件となります。

そのためには、二度手間になりますが、BIMソフトにてBIMパーツの作成をして建築業に提供することが多いのです。モデル要件に違いがあるため、BIMソフトでのパーツ作成がお勧めです。

そして、そのBIMパーツの公開が必要になります。具体的にはBIMobjectなどのBIMパーツ配信サイトを利用するか、自社のBIMパーツ配信サイトを構築して「スペックイン」を目指しましょう。

BIMobject

施工段階

既に自社製品の採用が決まった状態であり、製造業の営業企画の立場としては一安心です。この後は、もの決め・合意形成のための施工BIMの段階に入ります。納まりを検討して正しく施工するためのモデルであり、この時点でのモデリングは製造業側に依頼されることが多いため、Inventorなどの機械系3D CADで設計した3Dモデルをフルに生かすことが可能になります。

例としてInventorでは、簡略化機能(今まではシュリンクラップと呼んでいた機能)にて、3Dモデルを簡略化しRevitなどのBIMソフトにBIMパーツとして提供することが可能です。その際に、LOD(Level of Development:モデルの詳細度)を指定して書き出すことができます。

なお、施工BIMの段階ではLOD 400が適切なレベルと言われています。

製造向けCADでBIMデータを作成してみる

  • LOD 200

  • LOD 300

  • LOD 400

どの機械系3D CADでもLOD指定できる機能は備えていますので、BIMパーツの書き出しは可能です。
受取先のBIMソフトがRevitであれば、同じ開発元であるAutodeskのInventorとの相性は抜群ですが、この詳細に関しては別の機会にお伝えします。

設備業界

設備業界では、BIMデータ活用の維持管理に最も大きな役割を担うのが機器メーカーですが、属性情報の管理・メンテナンスは課題の一つかと思います。

BIMソフトであるRevitと建築設備用3次元CAD「Rebro」がIFCを介さずにダイレクトな連携が可能になったことで、BIMの求める企画から設計・施工~維持管理までの実現が一気に近づいています。

機器メーカーや部材メーカーにとっての将来的な展望には、Inventorなどの機械系3D CADで設計した3DモデルをBIMパーツへ生かすこととなりますが、RevitとRebroの両方を見据えた、最適なBIMパーツ作りと費用対効果を見いだしておく課題があります。

土木業界

土木業界では、この課題には直面していませんが、「CIM導入ガイドライン」の中の「機械設備編」に出てくる「水門やポンプといった設備」に関しては、製造業の土木業界向けBIM/CIM対応に迫られる次期が訪れるので、準備が必要です。

この業界の依頼主は国であり、計画立案から完工まで10年は当たり前の世界において、「スペックイン」は、名の通り「仕様」が最重要であり、製造業からの製品モデルは不要な業界です。製造業として国からの発注直請けのケースでは、「仕様」と併せて景観モデルの提出が必要なため、Inventorなどの機械系3D CADの3DモデルをInfraWorksに取り込んで利用することとなります。

製造業の土木業界向けBIM/CIM対応についての詳細に関しては別の機会にお伝えする予定です。

CIM導入ガイドライン(案)R2.3 改訂のポイント

次回は、製造業におけるBIM取り組みの問題・課題と解決策その2について触れたいと思います。

製造業にとってのBIM対応の課題と解決策(その2)

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