CIM導入ガイドライン(案)R2.3 改訂のポイント

2020年3月26日に、i-ConstructionやBIM / CIMに関する要領・基準等の制定・改訂が発表されました。毎年数多くの基準類で大幅改訂や新たな基準の制定があるため、内容を全て確認するのは大変ですよね。

今回の令和2年3月版(R2.3)の改訂のポイントは、国土技術政策総合研究所の資料にまとめられていますので、まずはこちらを参考にしてください。

国土技術政策総合研究所「i-Construction 推進のための基準要領等の制・改定について」

利用者により分かりやすいガイドラインに

BIM / CIMに関する基準類の改訂ですが、今回は全般的な見直しが行われて利用者にとって分かりやすい内容となるよう整理されました。

新設

  • 発注者向けの規定を明確にした『発注者におけるBIM / CIM実施要領(案)』
  • BIM / CIMモデルを活用する視点で整理された『BIM / CIM活用ガイドライン(案)』

大幅な縮小

  • これまでBIM / CIMモデルの作成指針(目安)となっていた『CIM導入ガイドライン(案)』の第1編 共通編

実際に『CIM導入ガイドライン(案)』を読んでみると、第1章 総則の中で「BIM / CIM活用ガイドライン(案) 共通編を参照すること」と記載されていて、従来の共通編の内容は『BIM / CIM活用ガイドライン(案)』に移行・再編されていることが分かります。

ちなみに、『CIM導入ガイドライン(案)』第1編 共通編の全131ページのうち、参考資料として掲載されている『BIM / CIM活用ガイドライン(案)』共通編が120ページを占めており、この中にBIM / CIM活用の目的、活用の流れ、各段階における活用などがまとめられています。

BIM / CIMモデルの考え方、分類、詳細度

では、ここから『CIM導入ガイドライン(案)』令和2年3月版の改訂のポイントをご紹介します。

BIM / CIMモデルとは、対象構造物等の形状を表す「3次元モデル」と「属性情報」「参考資料」を組み合わせたものを指すと定義されました。

『CIM導入ガイドライン(案)』第1編 共通編の参考資料の13ページに下図が掲載されていますが、図内の「参考資料」は従来のBIM / CIMモデルの考え方には含まれていませんでした。

例えば、橋台モデルでコンクリートや基礎は3次元モデルで作製するが、鉄筋は3Dモデルを作製せずに2次元図面を「参考資料」として添付する、といったBIM / CIMモデルを補足する図面などの資料が「参考資料」に当たります。

属性情報

また、属性情報については数量に関する属性情報は『土木工事数量算出要領(案)』、そのほかの属性情報は『CIM導入ガイドライン(案)』の各分野編を参考に付与する、と明記されました。新規策定された『土木工事数量算出要領(案)に基づくBIM / CIMモデル作成の手引き(案)』にその手順や留意事項が解説されていますので、あわせて確認するとよいでしょう。

BIM / CIMモデルの分類

BIM / CIMモデルの分類は次の6分類の定義に変更されました。従来の「広域地形モデル」は「地形モデル」に統合され、縮尺の違いによる類型に変更されました。

  • 地形モデル
  • 地質・土質モデル
  • 線形モデル
  • 土工形状モデル
  • 構造物モデル
  • 統合モデル

Level of Detail(形状の詳細度)

BIM / CIMモデルのLevel of Detail(形状の詳細度)は工種ごとの詳細度が各分野編で定義され、地質・土質モデルには詳細度を適用しない、と規定されました。また、今後の試行を通じてLevel of Information(情報の詳細度)、Level of Development(展開度)などについて検討していくとも記載されています。

設計成果物要件の明確化(属性情報、詳細度の整理)

BIM / CIMモデルを作成する場合の属性情報・詳細度の目安について、設計業務等共通仕様省に示される設計成果物をBIM / CIMモデルとする場合の要件が明記されました。下図は橋梁設計成果物一覧表ですが、右側の赤字部分が今回追加された要件です。

この凡例を見ると、設計成果物をCIMモデルとしない場合は2次元図面等を参照情報として付与すること、と規定されていることも確認できます。

その他の改訂点

『CIM導入ガイドライン(案)』の第2編以降では「砂防編」「港湾編」が新規策定、「機械設備編」が素案から拡充・改訂されました。ほかの各分野編は通常どおり改訂されていますが、来年度以降「土木工事設計業務等共通仕様書」の記載にあわせて改訂が実施されるようです。

最後に第1編 共通編については、ここまでご紹介した内容以外の改訂ポイントを下表に記載しますので、参考になさってください。

第1章 総論
ページ目次(参考資料)改定ポイント
161.1.3 BIM / CIMの活用効果「フロントローディング」と「コンカレントエンジニアリング」が活用効果に記載された
302.4 地理座標系・単位BIM / CIMモデルの地理座標系は世界測地系(測地成果2011)、投影座標系は平面直角座標系を使用し、単系系はm(メートル)に統一された
342.6 BIM / CIMを活用する環境ハードウェアソフトウェアの準備、情報共有システムの活用が記載された
433.5 維持管理における活用維持管理段階でGISを情報基盤としてBIM / CIMモデルを一括管理する活用イメージが記載された
454 BIM / CIM活用の流れ標準的なプロセスが図示され、発注準備から納品までの各フェーズの解説が追加された
525.2 将来の目指す姿Society 5.0に向けてDegital Twinの実現を目指す、との記載が追加された
第2章 測量
ページ目次(参考資料)改定ポイント
541.1.1 地形モデル計測手法の守備範囲と特徴表5に航空レーザ測深、マルチビーム測深が追加された
第3章 地質・土質モデル
ページ目次(参考資料)改定ポイント
921 地質・土質モデルの作成・活用に関する基本的な考え方地質・土質モデルに対しては「詳細度」を適用しないことが明記された
1236 モデルの照査地質・土質モデルの照査の要点、照査チェックリストの解説が追加された