電気系CADの技術とノウハウを生かした新事業が、SOLIDWORKS Electricalでさらなるフィールド拡大へ

株式会社マグトロニクス

事業内容
電子機器および通信機器とこれらの周辺機器の製造販売業務、電子機器および通信機器とこれらの部品ならびに材料などの輸出入業務ほか
従業員数
450名(2024年4月現在)
サイト
https://www.magtronics.co.jp/

導入事例の概要

株式会社マグトロニクス(以下、マグトロニクス)は、制御盤からケーブル・ハーネス、基板、ユニットなどの電子機器・通信機器を開発製造する電子機器製造会社である。顧客は工作機械からロボット、半導体製造装置、精密機器まで総数80社を超える。

この広範なフィールドで技術を蓄積した同社は、約8年前から2024年にリリースした新事業「制御盤DXアシスト」の礎となる3D電気CADを利用した設計支援サービスの展開を開始した。これは、3D電気CADの導入~研修まで顧客企業の設計製造現場をワンストップでサポートする新サービス。そして、同社はこの新事業を強力に推し進める推進剤として新たにSOLIDWORKS Electricalを導入した。

ここでは、この最新3D電気CAD導入の背景と狙いについて、新事業を主導する同社の青木誠氏と包啓鵬氏にお話を伺った。

制御盤DXアシスト(株式会社マグトロニクス)

導入システム

DX化が遅れていた電気設計分野

「きっかけは2011年にドイツが提唱したインダストリー4.0……いわゆる第四次産業革命の流れでした」

そう語り始めたのは、マグトロニクスで商品・サービス企画担当で副本部長を務める青木誠氏である。青木氏は、今回の制御盤DXアシストの取り組みをけん引する立場にある。

「これに呼応して日本でもSociety 5.0が始まり、さらに現在はDX──デジタル・トランスフォーメーションという指針が示されて、製造業の世界でも大手メーカーを中心にDX化が急速に進み始めています。設計分野においては、特に3D CAD化という形でDX化の流れが進んでいますが、最も3D CAD化の取り組みが遅れていたのが電気設計の分野です」

青木氏によれば、元々わが国の製造業界において、電気設計は機械設計に比べて決定優先度が高いとはいえず、電気系CAD化が進みづらかった。実際、装置メーカーなどでは機械設計部門のCAD化が優先され、電気設計は、機械設計用CADで電気回路図を描くようなことも多々あったと言う。

ところが近年、DX化と共にようやく電気系CADへの注目が高まり始めたのである。

経営企画本部 品質保証、商品・サービス企画担当
副本部長 青木誠氏

「しかし、長年後回しにしていた電気系CADの導入ノウハウを持つ会社は少なく、いざ導入しようにも製品選びにも困る所がほとんどで、そうした事情は多くのCADベンダーにとっても同様でした。そのため当社に支援を求める声が届いたわけです」

制御盤を中心に各種電子機器の受託設計&製造で半世紀近い歴史を持つマグトロニクスは、電気系CADもいち早く導入・活用してきた。結果、電気系CADに関わる高度な技術と豊富なノウハウが蓄積されていた。それを知るCADベンダーや発注元から、設計支援や導入・活用サポートを頼まれるようになったのは当然だったかもしれない。

個々のお客様に最適な電気系CADを選ぶ

「約5年前にエンジニアリング・ソリューション本部という事業部を立ち上げ、この電気設計に特化した支援サービスを新たな事業の柱の一つとすべく取り組んでいます。その頃からさまざまな装置メーカー様から依頼されることも増え、実績を伸ばしてきました」

現在では、逆にこれまで取引がなかった会社が、設計支援をきっかけに製品製作まで請け負ったかたちで同社工場の新しい顧客となるケースも増えていた。だが、他方では事業規模の急速な拡大に伴い、マグトロニクス自身も新たな3D電気CAD──SOLIDWORKS Electricalを拡充する必要が高まっていたのである。

展示用にSOLIDWORKS Electricalで電気設計し、社内工場で製作した制御盤

「実は、それまで私たちはSOLIDWORKSとは異なる電気系CADを使っていましたが、徐々に多くの顧客からSOLIDWORKSを望む声が聞こえてきたのです」(青木氏)。

マグトロニクスが作る制御盤やハーネス、ケーブルの顧客企業は大小80社余もある。そして、その多くは既に機械系CADを導入済みで、しかもその多くがSOLIDWORKSユーザーだった。そうした企業が求める電気系CADは、SOLIDWORKSで作った設計データがそのまま使える電気系CAD──すなわちSOLIDWORKS Electricalなのである。

「設計支援でも導入支援でも、お客様に最適な電気系CADを選ぶべきなのは当然です。私たちはすぐ、SOLIDWORKS Electricalのライセンスを増やすことにしたのです」(青木氏)。

  • SOLIDWORKS Electricalを用いた電気設計

  • SOLIDWORKS Electricalの電気設計画面

では、長年さまざまな電気系CADに触れてきた同社の技術者たちは、このSOLIDWORKS Electricalをどのような3D電気CADと捉えていたのだろうか?

「やはりメカ設計でSOLIDWORKSが多く使われているだけに、機械設計側の設計データとの連動性は非常に優れています。この点はとても大きなメリットですね」と答えたのは青木氏だ。同氏によれば「アイコンやツールバーなどの画面構成も分かりやすく、取っ掛かりやすいのが良いですね」という。

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この続きは・・・・・・

  • SOLIDWORKS Electricalが技術者たちに高く評価された理由
  • SOLIDWORKS Electricalを軸に事業を推進しつつ、多様なCADに対応することで顧客ニーズに応える、マグトロニクスの事業戦略

エンジニアリング・ソリューション本部 ソリューションサービス部 デザインサポート課
主幹技師 包啓鵬氏

「確かにインターフェイス全体が、とても動かしやすい感じなんです。実際、詳しい説明を聞かなくても、アイコンだけ見れば何となく意味が伝わってくる……直感的に操作できるんですね」

実は、同僚の技術者たちも長年2D CADを使っていたが、SOLIDWORKS Electricalの拡充で本格的に3Dの世界へ踏み出すことになった。

「3Dは全く異なる世界ですから普通は嫌がる人もいますが、今回は不思議と拒否反応が少なく普及もスムーズでした。これは導入支援を行っていくうえでも大きなメリットです」(青木氏)。

3D設計だからできる! 省スペース化

現在マグトロニクスは、SOLIDWORKS Electricalを起爆剤に制御盤DXアシスト事業の展開を加速している。SOLIDWORKSユーザーの顧客開拓は順調に進んでいるが、さらにその他のさまざまな電気系CADも導入して、対応フィールドを広げていく計画だ。

これを担当するソリューションサービス部の技術者は8人だが、彼らはそれぞれ複数の電気系CADの操作を習得していく方針だ。そうやって取り扱うCADの種類を増やしていっても、自分たちがやることは基本変わらない──と青木氏は語る。「選定・導入支援でいえば、お客様がそのCADでどういうことをしたいか? 何を実現したいか? をきちんと伺い、それに一番適したCADを最適な活用方法と共にお勧めしていきたいですね」

もちろんそれは多くのCADベンダーや販売代理店も行っていることだが、マグトロニクスは、長年にわたり電気系CADユーザーとして設計・製造の現場でCADとCADデータを活用してきた豊富な経験がある。つまり、本当の意味で設計・製造の立場に立ってCAD製品を選び、提案できるのである。

「お客様の設計担当の方たちはもちろん、生産に携わる方のお話も伺いたいですね」と青木氏は言う。お客様の設計~生産全体をトータルに捉えて提案したいと考えているのである。

右:SOLIDWORKS Electricalで電気設計した制御盤 左:制御盤3Dレイアウト制御盤

制御盤設計の世界も省スペース化の流れが急速に進みつつあり、制御盤内部の機器レイアウトや配線も従来のような2次元ではなく、Z軸の奥行き方向に空間を確保して機器を並べる3次元設計が欠かせなくなった。

そして、この課題に対応し効果を出せるのが、電気系CADで唯一ともいえる「3D CADと連携できる」SOLIDWORKS Electricalなのだ。このツールがあったからこそ、こうした設計が効率良くできるようになったといえる。

「だからこそ、私たちのお客様には、単純にSOLIDWORKS Electricalを導入してマニュアルどおりに使うだけで満足してほしくありません。目指すべきは、それを使って作った設計データを幅広く活用して『いかにものづくり全体の効率を向上させるか?』というところにあるのですから。お客様の工場には工場ごとに『得意な製作手法』などの特徴があるでしょう。私たちもそういった製造現場の特徴まで理解したうえで、一番適した、一番生かせる出力ができるように考え、提案していくつもりです。そして、もちろんSOLIDWORKS Electricalには機能面も精度面もさらなる進化を期待しています!」

  • 制御盤中板の作業工程

  • 制御盤工事の様子