Ansys社がシミュレーションソフトウェア「Ansys 2023 R1」をリリース

2023年 2月 6日

Ansys社 2023年1月27日

Ansys社は2023年1月27日、同社製シミュレーションソフトウェアの最新版となる「Ansys 2023 R1」をリリースした。Ansys 2023 R1は、ソフトウェアとサービスの向上が図られており、エンジニアリングシミュレーションが多岐の分野にわたるエンジニアリング部門やR&D部門にもたらす利点がさらに増強・拡大するものとなる。Ansys 2023 R1による性能の向上、分野横断的なワークフローの統合、革新的な機能を活用することで、複雑性や統合の課題を克服し、世界に変革をもたらす次世代製品の設計を加速させることが可能となる。

Ansys社の製品担当シニア・バイス・プレジデントであるShane Emswiler氏は、「シミュレーションを行うことで、マーケットリーダーとなるべく意思決定を迅速に自信を持って行うことができ、設計チームが正しい方向に進むことができます。より高い精度、合理化されたワークフロー、クラウドの拡張性など、当社の最新のテクノロジーの向上は、エンジニアのより大きな成功に貢献します」と述べる。

シミュレーション性能の向上

構造解析用製品群では、より予測精度が高く、効率的で、カスタマイズ可能なシミュレーション解析を可能にする新機能が導入された。例えば、Ansys Mechanicalの新機能では、AI/MLを活用して、シミュレーションの実行に必要な時間と計算量を決定することができる。

また、Ansys 2023 R1では、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)によりハードウェア容量の制限を克服し、GPUを活用して強化されたソルバー・アルゴリズムを採用することで、大規模かつ高忠実度のシミュレーションをより効率的に実行できるようになっている。

数値流体力学(CFD)ソフトウェアであるAnsys FluentのマルチGPUソルバーのフルリリースでは、幅広い用途で複数のGPUの能力を引き出し、解析時間と総消費電力が大幅に削減されている。今回のフルリリースでは、化学種輸送、非スティッフな反応流、ラージエディシミュレーション(LES)の数値計算機能が強化された。

Ansys Gateway powered by AWSで は、開発者、設計者、エンジニアが、どこからでも、ほぼ全てのデバイスで 、ウェブブラウザーを使用して、AnsysシミュレーションとCAD/CAEプロジェクト全体を管理できるようになっている。今回の新たなリリースでは、設計者が仮想マシンやHPCクラスターの作成やサイズ変更が迅速にできるのに加え、AWSクラウドのサブスクリプションや柔軟なシングルサインオン機能によって、設計チームの社内環境へのアクセスが効率化されている。

ワークフローの統合と自動化

Ansys 2023 R1では、材料、シミュレーションプロセスならびにデータ管理(SPDM)、最適化、MBSEの機能をベースに、インテリジェントなワークフロー自動化とコラボレーションをサポートし、エンジニアリングの効率向上を実現している。Ansys Connect製品群は、ユーザーエクスペリエンスの向上、新しい統合機能、使いやすさという特長を持ち、さまざまな部門のエンジニアが最新のプロセス、ツール、データに容易にアクセスできるようになっている。

日立産業制御ソリューションズのMBSEデザインセンター長である橋本岳男氏は、「AnsysシミュレーションツールとMBSEの統合によって設計プロセス全体が可視化され、開発コストの削減、エンジニアリング効率の向上、イノベーションの推進、そして競争力のある製品の設計が可能になると考えています。Ansysのツールと日立産業制御ソリューションズのMBSEに特化したエンジニアリングにより、自動車分野における自動運転技術の開発を支援し、よりコネクテッドな社会に関するお客様の製造上の課題の解決に貢献していきます」と述べる。

また、シミュレーションツールチェーンを最適化するAnsys optiSLangをワンクリックするだけで、最適な設計を見いだすための検討が即座に実行されるため、設計検討の効率を迅速に高めることができる。同じ最適化アルゴリズムは、Ansys ModelCenterのMBSEでのトレードオフ分析でも用いられている。Fluentのユーザーは、optiSLangによる最適化に加え、Ansys MinervaのSPDMソリューションを用いたスマートなコラボレーションやデータ管理も利用できる。

製品開発プロセス全般における革新

半導体業界では、TSMC社のパワーインテグリティ、シグナルインテグリティ、熱信頼性向けの3DbloxリファレンスフローにANSYS RedHawk-SCとRedHawk-SC Electrothermalが含まれており、Ansys社は3D-ICマルチフィジックスにおける業界トップの地位を継続して確立している。RedHawk-SC Electrothermalの新しい熱解析手法は、複雑な設計をより効率的に処理できるようにメモリーの使用量を半減している。Ansys PowerArtistの新たなRTL電力予測機能により、新しい性能と予測精度の向上が実現できる。RedHawk-SCのデータベースのサイズが30%削減したことで、複雑な設計をより効率的に解決できるようになり、RedHawk-SCの過渡現象のシミュレーションが2倍速くなったことで解析までの時間が短縮されている。

Ansys Grantaは、材料エコデータとクラウド上で利用可能なツールを備えており、より費用対効果の高い持続可能な製品のための材料選択を最適化することが可能となっている。

Ansys Electronicsでは、個々の3D部品セルを並列に適合させることで、大きさが有限のアンテナアレイのシミュレーションを高速化することが可能となった。この優れた技術は業界内でも他に例を見ないもので、衛星通信、自動車レーダー、航空宇宙用途のアンテナを設計を支えるものとなる。

Kymeta社のエンジニアリング担当バイスプレジデントであるPaul Klassen氏は次のように述べている。「Kymeta社では、衛星通信と携帯ブロードバンド通信を世界で展開するために革新的な製品を開発していますが、マイクロエレクトロニクスから熱機械構造まで、新しいアンテナやハードウェア機器の技術導入を可能にするうえでAnsysが重要な役割を担っています。私たちは、Mechanical、Fluent、HFSSの豊富なツールセットを使用して最適な設計を検討し、GrantaとSherlockを製品開発プロセスに取り入れて、産業、商業、民生アプリケーションでの厳しい振動や熱環境に対する設計の最適化を図っています」

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