MachineWorks社がCNCシミュレーションソフトウェア「MachineWorks 8.5」を発表
2023年 5月 8日
MachineWorks社 2023年4月26日
MachineWorks社は2023年4月26日、同社製CNCシミュレーション・検証ソフトウェアの最新版「MachineWorks v8.5」のリリースを発表した。
主な新機能・機能強化一覧
- 偏心ターニングのサポート
- EGLレンダリングインターフェイスのサポート
- 多軸加工における削り残しやガウジングの輪郭生成の改良
- 公差に基づいた工具とホルダーのプロファイルの作成と最適化
- 切削力の解析と送り速度の最適化のための新たな切削情報
- 停止状態にある(回転していない)複合工具による切削加工
新機能:偏心ターニングのサポート
偏芯ターニングおよび楕円ターニングとは、高速回転する素材に対して、工具を旋盤の回転に合わせて旋盤面に沿って高速で出し入れし、非円筒形状を加工する操作を表す。その典型的な使用例がカムシャフトの加工で、軸外円筒形や非円筒形状をストック上に作成するために偏心ターニングが使用される。
LinuxでのOpenGLのサポートならびにEGLによるWaylandのサポートの強化
EGLはKhronos GroupによるAPIで、OpenGL、OpenGL ES、OpenVGなどのDirect3DレンダリングAPIのオペレーティングシステムバインディングを提供する。MachineWorks 8.5からは、機能豊富だが複雑なXWindowsの代替として開発されたWaylandウィンドウシステムをサポートしている。XWindowsウィンドウシステムでもOpenGLを継続してフルサポートする。Waylandは、広く利用されているQt開発プラットフォームで採用されており、MachineWorks 8.5からは、Qtでアプリケーションを開発するユーザーがEGLとOpenGLを使用してWaylandでMachineWorksのシミュレーションをレンダリングできるようになっている。
ガウジングやアンダーカットの輪郭作成機能の強化
改良された輪郭を生成する新しいアルゴリズムが追加された。既存のアルゴリズムは、プロセス中のストックと設計部品の定期的なサンプリングに基づくものであったが、新しいアルゴリズムは、全く異なる手法を使用したものとなっている。
新しい輪郭作成機能により、多軸加工の結果が大幅に改善される。さらに、削り残し加工などの下流アルゴリズムにインプットする正確な輪郭を作成するためには高いサンプル密度が通常必要となるが、それと比較してパフォーマンスも改善される。
工具やホルダーの作成に必要なプロファイルの作成と最適化
MachineWorksの工具やホルダーは、通常2Dの断面プロファイルで定義されるが、意図せぬ些細な凹みなどの小さなフィーチャーは、シミュレーションのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性がある。そのため、アプリケーションで指定された公差に基づいてMachineWorksで最適に使用できるプロファイルを自動的に作成する新機能が追加された。この機能では、次のような複数の最適化を行うことができ、アプリケーションから任意に制御可能となっている。
- ほぼ水平・ほぼ垂直なエッジを水平または垂直にスナップ
- 公差範囲内で同一直線上にあるプロファイルセグメントをマージ
- 小さな凹部分を凸包に置き換え
- 公差に基づき小さな円弧を削除
- 大きな円弧を公差に応じて直線セグメントに置き換え
この新機能は、予期せぬパフォーマンス問題の可能性を低減するだけでなく、MachineWorks 8.4でリリースされた安全なホルダープロファイルの計算機能を利用して計算したツールホルダーのプロファイルの改良に役立つ。
カットクエリでの交差プロファイルへのアクセス
MachineWorksはこれまでも、各カットで除去された材料の体積を表す閉じた多角形の境界ソリッドを取得して分析するオプションなど、切削力の解析に適したジオメトリ情報を幅広く提供している。MachineWorks 8.5からは既存のオプションが拡張され、切削のスイープボリュームとインプロセスソリッドの交差の2Dプロファイルが提供される。切削加工の種類に応じて、シルエット、プロファイル、スピンプロファイルのいずれかとなる。
停止状態の複合フライス工具による切削
複合フライス工具は、複数のバウンダリーメッシュモデルを組み合わせることで作成されるが、この工具には停止状態と回転状態がある。後者は回転軸に対して回転対称であるが、前者は回転対称ではない。従来は、切削加工ができるのは工具が回転している状態にある時に限定されていた。MachineWorks 8.5からは、特定の状況下で「停止状態」の複合工具を切削加工に使用することもできるようになった。切削中の工具の回転量と移動量は、独立して定義することが可能となっている。
その他の追加・修正点:
加工中以外の一般的なプリミティブのボリュームクエリ
ポリゴンメッシュで定義されたツールやホルダーのハードクラッシュ公差の指定
ガベージコレクションの拡張:加工セッションがスリープモードになった場合にレンダーキャッシュをパージする機能
C++ const correctnessとの互換性を高めるためにANSI C APIに新しいタイプが追加
基盤となるレンダラーとプラットフォーム固有のレンダラーをサポートするコードとを分離するためにレンダリングライブラリのアーキテクチャを変更
XWindowsの不要な依存関係を一部削除