Keysight Technologies社が量子ビット設計用の電磁気設計・シミュレーションツール「QuantumPro」を発表

2024年 3月 4日

Keysight Technologies社 2024年2月28日

Keysight Technologies社は2024年2月28日、超伝導量子ビットをベースとした量子コンピューターの作成に特化した、電子設計自動化(EDA)業界初の電磁気(EM)設計とシミュレーションの統合ツールおよびワークフローである「QuantumPro」を発表した。QuantumProでは、回路図設計、レイアウト作成、電磁気(EM)解析、非線形回路のシミュレーション、量子パラメータ抽出からなる五つの基本機能が設計・検証ツールの「Advanced Design System(ADS)2024」プラットフォームにまとめられている。

これまで、マイクロ波技術者が量子設計に取り組むには限界があった。超伝導量子ビットの開発には、通常、コストのかかる長い設計サイクルが必要であり、複数のポイントツールを使いこなすことも困難であった。

QuantumProは、ADSプラットフォーム内において従来のマイクロ波出力を容易に調整可能な量子パラメータに変換することで、量子工学とマイクロ波工学の領域を統合する。技術者は量子回路の微調整を容易に行えるようになり、チップやシステムの市場投入までの時間が短縮される。

設計・シミュレーションソリューションである「QuantumPro」の主な特徴を以下紹介する。

モーメント法(MOM)をベースとした費用対効果の高い電磁気シミュレーションアプローチにより、量子チップの開発を加速。非線形回路ソルバーによって、量子チップの電力依存性の広範な解析を実現する。

MOMでは、フルボリュームの電界を解くのではなく、金属表面の電流のみを解くため、計算コストが大幅に削減される。コシミュレーションとパラメトリック解析により、量子ビットと共振器のシームレスなチューニングが可能になる。

非線形回路設計環境(ハーモニックバランスとXパラメータ)を使用して、量子システムの出力チェーンの重要なブロックであり、読み出しの忠実度を向上させる量子アンプの設計を簡素化。高調波バランスソルバーは、ジョセフソン接合がわずか数個から数千個に至るまでの増幅器の設計に対応し、ゲインプロファイル、ゲインリップル、混合積、量子効率、ゲイン圧縮をはじめとする増幅器の性能の詳細な解析を提供する。ADSは、サーキュレータなどほかのブロックとカスケード接続したときのアンプの動作の検証をサポートしており、アンプ全体の機能を徹底的に調べることができる。

ADSの量子レイアウト・コンポーネント・ライブラリでは、トランスモンやCPW(Co-Planar Waveguide)メアンダライン共振器など、よく使用される量子設計が数多く登録されており、ADSのレイアウト環境から量子チップの作成が容易に。チップの各形状はパラメータ化されたオブジェクトとして表現されるため、調整や最適化が容易に行える。ライブラリ内のCPWコンポーネントにはエアブリッジが内蔵されており、CPWコモンモードの伝搬を防ぐうえで重要な役割を果たす。

2019年設立のQilimanjaro Quantum Tech社は、自社の量子コンピューターへのクラウドアクセスの提供を計画している企業で、QuantumProを早期導入した。同社は、チップとアルゴリズムを共同設計して量子ビットの脆弱性の壁を回避することで、市場投入までの期間が短い、アプリケーションに特化したアナログ量子コンピューターを開発している。Qilimanjaro社は、超伝導量子ビットに基づく量子コンピューティングの今般の技術開発を活用し、顧客の量子的優位性を引き出すアナログ量子プロセッサーを開発した。そのポテンシャルをフルに発揮するため、アナログ量子チップは、長コヒーレンス超伝導フラックス量子ビット、純粋量子相互作用、高密度量子ビット接続と組み合わされ、計算能力が向上している。また、Qilimanjaro社の量子アプローチにより、ゲートベースのシステムで要求されるエラー訂正が回避できる。

Qilimanjaro社CEOのAlbert Solana氏は、次のように述べている。「私たちは、確立された原理を活用した、マイクロ波技術者向けの量子ビットEDAソリューションを探していました。KeysightのQuantumProを選択した理由は、設計入力からレイアウト、解析、抽出までの完全なワークフローを提供してくれるからです。QuantumProは使いやすく、これから開発するチップに必要なものを全て提供してくれます」。

Keysight EDAの新興市場担当シニアディレクターであるChris Mueth氏は、次のように述べている。「QuantumProは、超伝導量子ビット開発のための完全なワークフローを提供するEDA業界初の電磁気設計環境です。このツールは、周波数領域および固有モード用の有限要素法(FEM)と周波数領域解析用のMOMの両方にまたがる3D電磁界シミュレーターを通じて高い精度を提供します。周波数領域と固有モードのソリューションから量子パラメータを自動抽出し、内蔵のPythonスクリプトで最適化を容易に行えます。また、QuantumProで運動インダクタンスのモデリング用のEMワークフローが向上できます」。

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