DigitalEngineering247.comが積層造形市場の見通しを発表

2025年 1月21日

Peerless Media社 2025年1月10日

積層造形業界は成熟と進化を遂げており、新型コロナ禍、政治や経済の変動などの世界的な嵐を乗り切れることが証明されてきた。この1年において、業界では合併や統合が発生する一方、技術により新たな用途が生まれ、以前は積層造形(AM)分野を多く利用していなかった業界の成長につながった。

数字だけを見れば、少なくとも3Dプリント市場では継続的な成長が見込まれているように思われる。IDTechEx社の最新レポート「3D Printing and Additive Manufacturing 2024-2034:Technology and Market Outlook」(3Dプリントと積層造形 2024~2034:技術と市場の展望)によると、3Dプリント市場の2024年から2034年の年平均成長率は11%で、2034年までに490億ドル(約7兆6400万円)に達すると予想されている(3Dプリンターと3Dプリント材料の売上に基づく数字)。

さらに、Protolabs社が実施した調査では、3Dプリント市場は2028年末までに571億ドル(約8兆9千万円)に達すると予測されている。また、回答者の82%が3Dプリントは大幅なコスト削減に役立つと回答しており、77%が3Dプリントが最も大きな影響を与えるのは医療業界であると指摘していることも明らかになった。

このように公表された報告書だけでなく、DigitalEngineering247.comは複数の大手企業や業界アナリストにも接触し、近い将来ならびに遠い将来の積層造形の見通しについての展望を入手した。

積層造形の将来の暗い点と明るい点

「2025年に向けて、3Dプリント業界のかつての有望な展望は影を潜めているようです」とMaterialise社の最高技術責任者(CTO)であるBart Van der Schueren氏は指摘する。「投資は鈍化し、新興のスタートアップ企業の数は減少し、上場企業の多くは利益の獲得に苦労しています。私たちの業界は成長を続けているものの、収益が黒字になっている企業はほんの一握りにすぎません」。

このような悲観的な見通しの一方で、同氏は3Dプリントの利用方法が変化すると予想している。「3Dプリントは、それ単体で産業変革を推進することはできませんが、新しい方法で成長する機会を提供することはできます。3Dプリントは映画の脇役のようなもので、筋書きには欠かせないものの、あくまで世界は主役を中心に回っているのです。従来の方法がリードし続ける一方で、3Dプリントは効率性と柔軟性を高めることで、重要な脇役の役割を果たすことができます」。

同氏は、「この技術は、革新と実用化の分岐点に立っています」と付け加え、技術革新から広範な産業利用への移行に焦点を当てるべきだと示唆する。

Siemens社の積層造形ソフトウェアプログラム担当副社長であるAaron Frankel氏は、積層造形産業は転換期にあり、将来が期待できると見ている。「積層造形は、期待が膨らむ誇大広告の時期から、潜在的な可能性を秘めた初期の成熟期へと移行しつつあります」と同氏は語る。

その一方で、同氏は積層造形のビジネス上の課題について次のように言及した。「私が目の当たりにしている潜在的な障害やボトルネックには、技術やアプリ開発の高コスト、予想よりも遅れている採用率、サプライチェーンの開拓の遅れ、的を絞った投資、ならびに、機械OEMやソフトウェア、ソリューション契約プロバイダーの継続的な統合などがあります」。

一方、Wohlers Associates社のアドバイザリーサービス・マーケットインテリジェンス責任者であるTerry Wohlers氏は、積層造形の継続的な課題として時間とコストを挙げている。「積層造形の課題は、(a)材料とシステムのコスト削減、(b)認定と認証にかかる時間と高コスト、(c)業界標準の開発と採用にかかる時間です。プロセス、材料、設計の認定と認証により採用が遅れています」。

nTop社CEOのBradley Rothenberg氏は、積層造形は現在は課題があるにもかかわらず、そのトンネルの先には光があると見ている。「エンジニアリングチームは、新製品の市場投入までの時間を短縮しなければならないというかつてないプレッシャーに直面していますが、積層造形は従来の製造方法において時間がかかっていた金型製作を必要としないため、その未来は明るいと言えます。業界を問わず、製品設計の設計、開発、検証の迅速化を実現するためにコンピュテーショナルデザインが採用されています」。

Protolabs社の3DPグローバル製品ディレクターであるRyan Kees氏は、次のようにコメントしている。「最終用途品の生産に3Dプリントを利用するお客様が増えています。ほんの数年前までは、このようなことはありませんでした。業界では、企業が特定のニーズに対応する新素材を導入してイノベーションを推進しています。その一方で、困難な課題の解決に積層造形が役立つ分野を見出す製品開発者が多くなっています」。

しかし、同氏は積層造形の障害についても言葉を濁さず口にしており、「従来の製造と比較した場合、価格設定が法外なこともあります」と述べる。「積層製造の最適な利用に関する教育全般においても、課題は続いています。例えば、積層製造には対象となる用途があり、積層製造があらゆる製造ニーズを解決できるという幻想は間違っています。業界全体から見ると、OEMメーカーやプリンターメーカーの過飽和状態も、特定の技術に最適なアプリケーションを特定することを困難にしています」。

注目すべき積層造形のトレンド

Siemens社のFrankel氏は、材料の革新、自動化とAIの統合、カスタマイズとパーソナライゼーション、持続可能性に注目している。「積層製造が成熟するにつれて、用途の開発と導入が進み、AIとの統合が深まり、持続可能でローカライズされ、高度にカスタマイズされた製造のサポートが強化されると予想しています」と同氏は述べる。

これについて、Protolabs社のKees氏は、AIはまだ始まったばかりだと指摘する。「AIは、テクノロジーやその能力に企業や個人が慣れていくにつれて、さらに急速に普及する可能性があります」。

ソフトウェア面では、Materialise社のVan der Schueren社が次のように述べている。「今後は、3Dプリントソフトウェアのプロバイダーが技術を公開し、ユーザーがカスタムワークフローを作成したり、特定の生産需要に対応するためにハードウェア設定をより細かく制御できるようになることが予想されます。これにより、ユーザーは、効率、品質、コスト、スピードなど、自らの優先事項を選択できるようになります」。

Van der Schueren氏はまた、製造業において将来の3Dプリント導入の障壁が取り除かれることも想定している。

「多くの企業は、3Dプリントを製造工程に組み込むための社内知識や専門知識がまだ不足しています」と同氏は語る。「製造業者がこれらの懸念に対処できるようになるかどうかは、3Dプリント技術のプロバイダー次第です。製造業での採用を可能にするには、3Dプリントコミュニティ内の協力が不可欠です。私たちの業界が団結して、標準を定義し、採用プロセスを簡素化し、複雑さを排除し、3Dプリントを費用対効果が高く、かつ利用しやすいものにする必要があります」。

Wohlers氏は業界全体を眺めたうえで、積層造形の現状を確立された業界になぞらえている。「自動車産業(例:内燃機関から完全電動化への移行)と同様に、積層造形も今後何十年もかけて成熟していくでしょう。システム、材料、アプリケーションのさらなる改善が期待されます。特に航空宇宙、ヘルスケア、自動車、エネルギーの分野では、資格認定、認証、業界標準が採用に役立っていくと思われます。これにより、成熟とイノベーションが促進されるでしょう」と同氏は示唆する。

同氏はまた、積層製造分野における中国の動きを注視することも述べている。「中国は、生産やその他の用途における積層造形の開発と導入に既に追いついており、おそらくそれを凌駕しています」。

nTop社のRothenberg氏はまた、コラボレーションが今後より大きな役割を果たすと予想する。

これについて、同氏は、nTop社の顧客が積層造形用の設計に情報を提供し、最適化するために物理学データを利用することが増えていることを例として紹介している。「Cloudfluid、Hexagon、Intactのような企業は、シミュレーションツールを直接nTopに統合しており、MaterialiseやAutodeskとの統合により、メッシュを使用せずに、より速く、より高い精度で高性能設計を製造できるようになっています」。

産業界における3Dプリントのさらなる拡大

Van der Schueren氏は、3Dプリントの可能性がヘルスケア、特にカスタマイズされた医療機器の開発にも広がると予想している。航空宇宙では、飛行に不可欠でないコンポーネントを開発するための3Dプリントの「機会が増える」と同氏はみており、また、注目すべき分野としてモビリティを挙げている。

「電車、トラック、船舶にまでおよぶモビリティでは、これまで3Dプリントの主な用途はプロトタイピングでしたが、それにとどまらず、エネルギー効率の高いドライブトレインやエンジンの開発をサポートし、より持続可能な輸送ソリューションへの道を開くことができます」。

Wohlers氏は、建設業界における成長の可能性を指摘している。「建設業界は革新の機が熟しているという見方もありますが、アディティブ・コンストラクション(AC)により、業界がまだ模索を始めたばかりの新しいアイデアと機会がもたらされます。建設業界は現在、ACが真の価値をもたらす方法を見つけ、適用しようとしています。それが建築物の美観であれ、構造的なものやその他のものであれ、業界は、ACを興味深く、実行可能なものにするための『スイートスポット』を見極めるでしょう」と同氏は述べる。

M&Aは今後も続く

3Dプリントの将来においては、M&Aが依然として活発な役割を果たすことが予想される。

その要因のひとつは、3Dプリントのコストが高く、潜在的な用途が限られていることだとVan der Schueren氏は指摘する。「買収によって規模を拡大することで、企業はこうしたコストを削減し、3Dプリントをより幅広い生産用途で実行可能にすることができます」と同氏は語る。

さらに同氏は、「統合によって企業は業務を合理化し、収益性を向上させ、継続的なイノベーションを支える持続可能な成長を確保することができます。このような環境において、収益性の低い企業は安定への道として買収を模索するかもしれません」。

Van der Schueren氏は、M&Aがその役割を果たす一方で、業界は3Dプリントの利用拡大に継続して注力しなければならないと述べる。「M&Aだけに集中するのではなく、3Dプリント技術の普及と用途拡大を優先すべきです」。

Wohlers氏もこれに同意見で、積層造形業界の企業は今後縮小していく可能性を示している。「これまで30年以上にわたって、世界中で何千もの積層造形企業が誕生してきましたが、創業者やオーナーの多くはM&Aによる撤退を考えるようになっていくと思われます」と同氏は予測する。

Protolab社のKees氏も、「OEM分野には多くのプレーヤーが存在し、特にスタートアップ企業への投資資金が枯渇しているため、統合は今後も続くでしょう」と述べる。

最適設計技術の展望に関する調査結果

DigitalEngineering247.comが実施した2024年のテクノロジー展望の調査では、220名の回答者が製品設計と開発に最も影響を与えると思われるものについて意見を交わした。積層造形と3Dプリントに特化した調査結果をいくつか紹介すると、今回の回答者の42%が積層造形関連の技術をある程度知っていることが明らかになった(これに次いで、「非常によく知っている」36%、「聞いたことはあるがあまり知らない」17%、「まったく知らないまたは聞いたことがない」5%と言う結果になっている)。

今後5年間に製品開発に最も大きな影響を与えると予想される技術について、積層造形(34%)は、AI/機械学習(64%)、シミュレーションソフトウェア(43%)、高性能コンピューティング/クラウドコンピューティング(36%)に次いで4位にランクインしている。

この調査では、読者の意見を聞くスペースも設けられ、「積層造形/3Dプリントについてどのような印象を持っているか?製品設計や開発にどのような影響を与えると思うか?」との質問が行われた。

その結果、匿名の回答として以下が寄せられている。

「積層造形はAIとともに次の大きなフロンティアです。当社ではまだあまり利用していませんが、時間が経てば、私の職場でも当たり前のように使われるようになると思います」

「積層造形は最高です。印刷されたプロトタイプや製品は、1回限りしか使われない「ワンオフ」のものであることが多いので、神の贈り物としか言いようがありません」

「積層造形(3Dプリント)は、研究室に魔法の杖があるようなものです。デジタル設計から物理的なオブジェクトを作成することができ、プロトタイプや小規模生産をより迅速かつ柔軟にすることができます」

「3Dプリントは日に日に良くなっています。最終的には、誰かがソフトウェアにAIを組み込んで、(映画「ターミネーター」に出てきた)スカイネットが現実になるのではないかと思います」

製品設計や開発で積層製造や3Dプリントをどのように、またなぜ使用しているかという質問に対しては、ボトルやパッケージのデザイン、小型部品、社内工具、バンパーパッドやグリッパー、デリケートな商品を出荷するためのコンテナ、治具や固定具、アルミ鋳造形状の部品、ヒューマンインターフェイス検証用の物理的プロトタイプなどの例が挙げられた。

積層製造や3Dプリントの利用目的の内訳は、プロトタイピング(82%)、テスト(68%)、最終用途部品(48%)、その他の用途が19%となっている。

最後に、回答者の49%は、積層造形や3Dプリントがデザインエンジニアリングに革命をもたらすことについて「非常にそう思う」と回答しており(「どちらでもない」と回答したのは48%)、「そう思わない」と回答したのはわずか4%にとどまった。

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