Autodesk Architecture、Engineering & Construction Collection(以下、AEC Collection)は、建設業向けのソリューションパッケージです。設計だけでなく幅広い業務で使用できるソフトウェアが含まれています。本セミナーで紹介されたAutoCADからAEC Collectionへのステップアップ方法や活用方法をレポートします。
【保存版】今さら聞けないBIM/CIM導入の進め方 -乗り遅れないための準備と手順を徹底解説
2026年 1月29日
建設業

「2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させる」-国土交通省が掲げたこの目標の期限がいよいよ目前に迫っています。それを実現するための手段となるBIM/CIMの活用は、今や建設・土木業界において避けて通れない「必須の要件」となりました。
2023年度から「BIM/CIM原則適用」が本格化したことで、3次元データの活用は、これまで以上に迅速な対応が求められています。こうした変化の中で、「周囲は既に対応を始めているが、自社は何から手をつければいいのか……」と、焦りを感じている方も多いのではないでしょうか。
BIM/CIMの導入を成功させるためには、いきなりツールを使いこなそうとするのではなく、正しい「順序」で準備を進めることが大切です。本記事では、初めて導入を検討する方に向けて、BIM/CIM導入を成功させるために不可欠な五つのステップを分かりやすく解説します。今からでも遅くない、周りに遅れを取らない一歩を踏み出すためのガイドとしてぜひご活用ください。
Civil 3Dを中心にAutoCADからAEC Collectionへのステップアップ方法や活用方法をご紹介

なぜ今、BIM/CIM導入が必要なのか?
現在の建設・土木業界において、BIM/CIMへの対応は「将来的な課題」ではなく「直近の最優先事項」へと変化しました。
まずは、なぜこれほどまでに導入が急がれているのか、その背景とBIM/CIMの定義を整理しておきましょう。
国土交通省のBIM/CIM原則適用の背景
BIM/CIM導入が加速している最大の要因は、国土交通省が進める「原則適用」の動きです。国は建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させる「i-Construction」を掲げており、その中核としてBIM/CIMを推進しています。
当初、公共事業における原則適用の目標は2025年とされていましたが、普及への強い意志により2年前倒しされ、2023年度(令和5年度)から小規模を除く全ての直轄業務・工事においてBIM/CIM原則適用が義務化されました。この義務化の背景には、次のような深刻な社会的課題があります。
深刻な人手不足への対応
少子高齢化による熟練技術者の不足を補い、限られた時間で高い生産性を実現するため。
働き方改革の推進
2024年4月から適用された残業時間の上限規制に対応し、業務の効率化を図るため。
インフラ老朽化とプロジェクトの複雑化
効率的な維持管理体制の構築や、都市再開発などの高度な計画・管理を可能にするため。
未対応であることへの直接的な罰則はありませんが、公共工事の受注においてBIM/CIM活用が「必須の要件」となりつつある今、対応能力の有無が企業の競争力を左右する大きな境界線となっています。
BIM/CIMとは
BIM/CIM(ビム・シム)とは、「Building / Construction Information Modeling, Management」の略称です。以前は建築分野を「BIM」、土木分野を「CIM」と呼び分けていましたが、現在は「BIM/CIM」として名称が統一されています。
この取り組みの核となるのは、調査・設計・施工・維持管理という建設プロセスの各段階において、「機械判読可能なデジタルデータ」を受け渡し、活用することで省人化や生産性向上につなげることです。
従来の2次元図面では、各工程で独立していたデータ管理では情報の断絶が起きやすく、合意形成やミスの発見に時間を要していました。BIM/CIMを導入し、情報をデジタル化して一元管理することで、次のようなメリットが期待できます。
情報のスムーズな引き継ぎ
設計段階で作成したデジタルデータを施工、維持管理までシームレスに引き継ぐことで、データの再入力を防ぎ、一連の建設システムの業務効率を高めます。
合意形成の迅速化
3Dモデルとして可視化することで、2次元図面より完成イメージを正確に共有でき、発注者や地元住民との合意形成が迅速になります。
品質向上と手戻りの削減
3次元上で構造物の整合性や部品同士のぶつかり(干渉)を事前に確認できるため、設計ミスや現場での手戻りを未然に防ぐことができます。
つまり、BIM/CIMとは「デジタルデータを活用して建設プロセスそのものを最適化する、建設DXの根幹」と言えるのです。BIM/CIMの基礎について、さらに詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。
BIM/CIM導入を成功に導く具体的な5ステップ
BIM/CIM導入を成功させるには、いきなり全社導入するのではなく、段階を踏んで着実に定着させることが重要です。以下の五つの手順に沿って、自社に最適な導入プロセスを進めましょう。

STEP1:課題の特定と導入目的の設定
まずは、「なぜBIM/CIMを導入するのか」を明確にします。「他社が導入しているから...」という曖昧な動機では、投資に見合った効果が得られません。自社の現状業務における課題を洗い出し、「どの業務の課題を解決したいのか」を設定しましょう。
例えば「複雑な箇所の干渉チェックを自動で行いたい」「発注者への説明を分かりやすくしたい」など、現場の具体的な課題を解決する手段として活用の目的を絞り込むことが重要です。目的が定まることで、必要な機材やソフトの仕様も自ずと見えてきます。
STEP2:実務に適したツールの選定と環境の構築
決定した目的に適したツールを選定します。BIM/CIMでは、3Dモデルの作成・編集、数量算出、施工計画検討、合意形成など、さまざまな用途があります。設計業務が中心か、施工計画や現場活用まで行いたいのかによって、最適なソフトは異なります。
ハードウェアの整備も重要です。3次元モデルは大量のデータを扱うため、一般的な事務用PCではスペック不足です。高性能なCPU(Core i7やCore i9など)やメモリ(32GB以上推奨)、専用のグラフィックボードを搭載したワークステーションを準備しましょう。また、共有サーバーやクラウドストレージなど、大容量データをストレスなく扱える環境も同時に整えます。
STEP3:社内体制と運用ルールを整備する
環境が整い始めたら、次に着手すべきは「組織としての動かし方」を決めることです。BIM/CIMは一部の得意な担当者だけに依存するのではなく、チームとして動ける状態を作ることが成功の近道となります。
推進チームの作成とコアメンバーの選定
設計、施工、IT部門など、さまざまな部署からメンバーを集めます。中でも技術的なスキルだけでなく、業務フロー全体を把握し、社内の各部門と調整できるリーダーとして選定します。全体の戦略立案や教育計画を統括するマネージャーと、プロジェクトごとのデータ管理や他社との連携を調整するコーディネーターを配置することで、役割を明確にすることが重要です。
社内ガイドラインの作成
誰が作成しても同じ品質のデータが得られるよう、モデルの作成基準、レイヤー構成、ファイル名の付け方、データの保存・共有方法などを文書化し、統一します。
外部連携フォーマットの定義
社内だけでなく、協力会社や発注者とのデータ受け渡し方法や使用するファイル形式をあらかじめ明確にしておくことで、不整合による手戻りを防ぎます。
STEP4:小規模なパイロット運用による実証
最初から全ての業務を一度にBIM/CIM化するのではなく、まずは特定のプロジェクトや一部の工程から試行的に導入します。
BIM/CIMの原則適用では、詳細設計や工事において必ず実施すべき「義務項目」と、より高度な活用を目指して目的等に応じ選定される「推奨項目」が定められています。まずはこれらに対し、自社の体制でどう対応すべきかを検証することがこのステップの目的です。
対象には、比較的規模が小さく、納期に余裕のあるプロジェクトを選定しましょう。発注者が示した「出来上がりイメージの確認(義務項目)」や「鉄筋の干渉チェック(推奨項目)」といった活用目的に対し、実際の作業時間や課題を詳細に記録します。発注者との協議を重ねながら、義務項目を確実にこなした上で、自社の現場で本当に役立つ活用ノウハウを積み上げていくことが大切です。
STEP5:全社展開と継続的な人材育成
パイロット運用で得られたノウハウを基に、BIM/CIMの適用範囲を全社へと拡大させていきます。一度に全てを切り替えるのではなく、部署やプロジェクトの種類に応じて段階的に広げていくことで、現場の混乱を最小限に抑えることが可能です。
こうした内製化を進めるためには、一過性の研修で終わらせない継続的な教育支援が欠かせません。操作研修はもちろんのこと、最新の技術動向をキャッチアップするための外部セミナーへの参加や、社内勉強会を通じた事例共有の場を定期的に設けるようにしましょう。
また、実務を通じて得た成功事例や課題の解決策を、社内マニュアルへ反映させる仕組みづくりも重要です。マニュアルを定期的に見直し、常に最新の情報に更新し続けることで、組織全体としてのBIM/CIMを使いこなす力をより確かなものへと高めていくことができます。
導入前に知っておきたい!よくある失敗パターンと対策
BIM/CIM導入は、単にソフトを新しくするだけではなく、これまでの業務フローを変える大きな転換です。準備不足のまま進めてしまうと、現場に過度な負担がかかり、途中で挫折してしまう恐れがあります。ここでは、特によくある失敗例と、それを防ぐための考え方を整理しました。
活用目的が曖昧なまま導入し、作業工数が増大してしまう
「原則適用だから」と、目的が曖昧なまま3Dモデルの作成を優先してしまうケースです。現状の2D CADによる業務体制で効率化が完了している場合、無理にBIM/CIMへ切り替えると、かえって設計作業やデータ入力が二度手間になり、現場の負担だけが増大してしまいます。
いきなり全ての工程を切り替えるのではなく、まずは「干渉チェックによる手戻り防止」や「3Dモデルを活用した視覚的な説明」など、自社が最もメリットを実感しやすい部分に絞って活用しましょう。導入によって「どの業務の、どの課題を解決したいか」を定義することが、生産性向上を実感するための鍵となります。
社内ルールが定まっておらず、データの互換性や連携に支障が出る
社内で共通のルールを決めずに進めると、作成者ごとにデータの質がバラバラになります。その結果、他部署や協力会社とデータを共有した際に修正や確認の手間が膨大になり、デジタル化のメリットである「スムーズな連携」が損なわれてしまいます。
自社に合った「社内ガイドライン」の策定が解決への近道です。一度に完璧なルールを作るのではなく、実務を通じて得た知見を反映させながら、使いやすいマニュアルへとブラッシュアップし続けることが大切です。
人材・教育時間が不足し、特定の担当者以外が使いこなせない
人員が限られている中小企業ほど、日常業務に追われてOJTや教育の時間を確保できず、特定の人材にノウハウが依存しがちです。その結果、担当者の不在で業務が止まったり、会社全体に活用が広がらなかったりする事態を招きます。
全てを自社リソースだけで解決しようとせず、導入初期や繁忙期にはアウトソーシング(BPO)を活用しましょう。モデリング実務を外部に委託しつつ、社内スタッフはデータの活用やチェック業務といった本質的な管理業務に集中することで、無理のない内製化を進めることができます。また、ベンダーが提供するオンライン講習などを活用し、継続的にスキルアップできる仕組みを整えることも有効です。
BIM/CIM導入にはAutodesk製品を
BIM/CIM導入において、Autodesk製品は業界標準のプラットフォームとして多くの実績があります。ここでは、BIM/CIM導入に欠かせない主要なAutodesk製品とその役割をご紹介します。
| お勧めAutodesk製品 | 主要な活用シーン | 製品詳細 |
|---|---|---|
| Autodesk Civil 3D | 3次元モデル作成、土工設計、出来形管理 | 土木設計の標準ツール。地形作成や道路線形、土量計算に強み |
| Autodesk Revit | 構造物モデリング(橋梁・トンネル等) | 建物や構造物の詳細設計に最適。属性情報の付与や図面連動が容易 |
| Autodesk Navisworks | 施工計画、干渉チェック、データ統合 | 異なるソフトで作ったモデルを統合。4Dシミュレーションや干渉確認に利用 |
| Autodesk ReCap | 3次元計測、点群データの活用 | レーザースキャナー等の点群データを編集・加工し、設計データへ連携 |
| Autodesk InfraWorks | 事業計画、データ統合、合意形成 | 広域な地形モデルを素早く構築。現況の可視化やプレゼンに最適 |
| Autodesk Construction Cloud | 情報共有、共通データ環境(CDE) | クラウド上で最新図面やモデルを共有。関係者間のスムーズな連携を実現 |
まとめ:BIM/CIMは「一歩ずつ」使いこなして自社の強みに
2026年以降、BIM/CIMは建設・土木業界において当たり前の基準になっていきます。導入を成功させる一番の近道は、一度に全てをシステム化しようとするのではなく、今回ご紹介した五つのステップを参考に、自社のペースで着実に定着させていくことです。
「何から手をつければいいのか」「今のやり方で合っているのか」といった不安は、どの企業様も抱えているものです。最初から全てを自社だけで抱え込まず、外部の力を借りながら無理のない内製化を目指すことが、最終的な生産性向上に繋がります。
大塚商会では、ソフトウェアの選定からPCの導入、人材育成の支援、無料相談会まで、BIM/CIM導入をトータルでサポートしています。BIM/CIMの導入を検討されている方や、今の運用をより良くしたいとお考えの方は、ぜひお気軽に大塚商会へご相談ください。