3DEXPERIENCE CATIAのパラメトリック設計+テンプレート化で、1,900枚の3Dモデル+2D図面を約2日で生成

旭ビルウォール株式会社

執行役員 プロポーザル本部 本部長 岩嵜康明氏(右)
プロポーザル本部フロントエンジニアリング部 淡路広喜氏

事業内容
GRC / GRG / FRP(繊維補強建材)の設計・施工・コンサルティング、ファサードエンジニアリング、ガラスエンジニアリングほか
従業員数
165名(2025年12月現在)
サイト
https://www.agb.co.jp/

導入事例の概要

旭ビルウォール株式会社(以下、AGB)は「建物の顔」であるファサードに特化したエンジニアリング企業である。建築主や設計者のデザインを、構造・性能・施工性を満たした建築ファサードとして実現することを使命とするとともに、GRCをはじめ、FRPやGRGといったガラス繊維補強建材、ガラス、金属、石材など、多様な素材による部材の設計・製作・施工を一貫して手掛ける専門工事会社でもある。

プロジェクトごとに材料や形状、設計要件が異なるため、活用するデジタルツールも多様である。そのため新たなソフトウェア活用法の創出も積極的に進めている。ここでは、昨年同社が導入した「3DEXPERIENCE CATIA」(以下、CATIA)の実際の活用手法について、某改修工事を例にプロポーザル本部本部長の岩嵜康明氏と実務を担当した淡路広喜氏にお話を伺った。

導入システム

特殊な素材と複雑化が進むファサード

「私が本部長を務めるプロポーザル本部は、この4月に発足した新しい部署です。建築主様や設計事務所様より、プロジェクトの初期段階から参画させて頂き、設計や要件定義、リスク分析を行い、課題を早期に整理し解決策を提案することがミッションです」(岩嵜氏)。

同社にはフルオーダーのファサード案件が数多く寄せられる。そして、こうしたフルオーダー案件への対応では、最初期の事業企画段階で顧客である建築主や設計者、デザイナーから「この素材を外装材として使えるのか?」と問われることも多い。

一般的なファサード素材は石やガラス、金属、タイルなどだが、これらも条件次第で「本当に使えるか」検証が必要になり、最近はデザイン上の必要から「通常は建材として使われない材料を」と求められることさえある。

「実際、最近はこうした市場ニーズが拡大しつつあるようです。また、材料は従来の材料でもその形状を3次元的にひねったり、曲げたりしてデザインを複雑化する傾向がみられます」(岩嵜氏)。

こうした高度な要望に対応するため、AGBではプロポーザル本部とモノづくりセンターが連携し、強度試験や耐候性試験などを通じて実現性を迅速に検証している。初期検討から実現可能なデザインの方向性を導き出し、概算コストや施工性、メンテナンス性まで検討し、ファサードプロジェクト全体のスキームを構築するのである。そして昨年、そうしたファサードプロジェクトの一つでCATIAが実務で使われ、新たな活用法も生み出されたのである。

ここからは、実際にCATIAを使用した淡路氏にも加わっていただき詳細を語っていただこう。

「麻布台ヒルズ」AGBが手掛けたファサードの一例(本記事で紹介するCATIA活用案件とは別プロジェクト写真)

曲面ファサードという難題に応えるために

「竣工前の物件なので正式名称は伏せますが、そのプロジェクトは東京・銀座地区で現在も建設が進行している地上8階の複合ビルの改修工事です。物件としては1~4階が商業テナントで、5~8階までオフィスという商業ビル。私たちに設計依頼があったのは、2024年後半のことでした」(岩嵜氏)。

ファサード作りを行うAGBにとって改修工事は特段珍しいものではないが、岩嵜氏は当初からこれを難度の高いプロジェクトだと捉えていた。

「ファサードの改修では、前提となる基本的な制約が幾つかあります。中でも重要なのは、まず重量制限。そして道路境界までの距離の問題です。当然、今回もこの二つの設置条件を満たす必要がありました」(岩嵜氏)。

しかも、先方から提示されたファサードのデザインは、極めてユニークかつ難度の高いものだった。そもそもこの物件では、既存建物の外壁は、平面的には一方向のみに曲率を持つスプラインとなっていた。そのため既存外壁面と境界の間も、場所により距離が異なっていた。

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この続きは・・・・・・

  • 曲面状の既存外壁に対し、全て長さの異なるルーバーをどのように設計したのか。
  • 手作業では膨大な工数が発生する難題に、CATIAでどう挑んだのか。
  • 最終段階の大幅な設計変更でも、1,900枚の図面を短期間で更新できた理由とは。

デザイナーはこの変則的な特徴を生かし、ルーバーの奥行きを最大限から最小限まで徐々に変えていくデザインを構想していた。そうすることで通常のアルミルーバーにはない、より奥行きのあるプロポーションを生み出そうと考えたのである。

「しかし、このデザインを実際のファサードに反映させるには、色々難しい問題がありました。特に承認申請図を描き進める中で一つの大きな課題が見えてきました。当初、製品図は全部2D上で描く計画でしたが、そのままだと図面制作がとんでもない作業量になると分かったのです」

「曲面状の既存外壁に一つ一つ長さが異なるルーバーをセットする

承認申請図とは「これで作ってよいか?」依頼主に確認するための施工図だが、ファサード自体はルーバーとパネルという二つの部品で構成されるので、まず個々の製品図が必要だった。

通常、この製品図は2Dの手描きだが、特殊なデザインのためパネルを千鳥状に配置する必要があり、かなり手間がかかる。さらにルーバーも曲線状に配置するため、躯体との関係も場所により変わり、固定する下地鉄骨との関係も1本1本違ってくるのだ。

「つまり、微妙に異なるルーバーとパネルの大量の図面を一つ一つ手描きしなければならないわけですが……気合いだけで描くには多すぎます。そこで思いついたのがCATIAです。CATIAのパラメトリック設計とテンプレート化により自動化できないか、と」(淡路氏)。

CATIAで作成したモデルは会議やプレゼンでも使用

パラメトリック設計とテンプレート化

パラメトリック設計とは、寸法やパラメータを使い設計データを数値でコントロールし、再利用できる雛形モデル(パラメトリックモデル)を構築するもので、CATIAが得意とする設計手法の一つ。またテンプレート化とは、共通する部品構造やパラメトリックな寸法、制約情報を雛形として登録。規格化したベースモデルに数値を入れ必要なモデルを自動生成できる。

「つまりルーバーのパラメトリックモデル(ルーバーマスター)を一つ作り、同様にパネルマスターも作ってユニットマスターを作成すれば、別の数値を入れるだけで異なるルーバーモデルを自動作成できるし、3Dモデルから2D図面まで連動します」(淡路氏)。

  • 自動作成した採番付き3Dレイアウト

  • パネルごとの形状の異なり

同じ機能を持つ3D CADは他にもあったが、比べるとやはり使うべきはCATIAだった。

「なぜなら他社の3D CADでは、物件ごとにいちいちプログラムを組み直す必要があり、今回のような案件では手間がかかり過ぎます。CATIAなら3Dモデルを2D図面に連動できますからね」(淡路氏)。

そもそもファサードのパラメトリックモデルは1回作って完了ではなく、完成後も多くの変更が発生する。途中で変えるべき点に気づいたり、顧客の要望などによる変更も数多く発生する。従来はその度に大きな手間をかけて3Dモデルと2D図面を個別に直すことも多く、結果として2D / 3Dの不整合が生じることもあった。

しかし、CATIAならばモデルからExcelへパラメータを出力でき、そのExcelの数値を変更してモデルに戻せば、変更は全て自動的に3Dモデルへ反映される。最終的なパラメータの確定後に2D図面を出力すれば不整合も起こらないのである。

「実際、今回のプロジェクトでも数回変更がありました。特に最終段階で全3Dデータ+2D図面の再作成が必要になる修正が発生しましたが、2日で3Dデータと1,900枚に及ぶ2D図面を修正できたのはCATIAのテンプレート機能を活用したからこそ。効果をしっかり確認できたと思っています」(淡路氏)。

その言葉どおり、大塚商会の全面的な協力のもと、淡路氏はCATIAを駆使してルーバーとパネルのパラメトリックモデルに取り組み、ユニットマスターを完成。さらに自動作成したレイアウトに、Excel連動の変更ツールを用いて各部材を一括配置。度々の変更にも細かく対応しながら図面に仕上げていった。──総計2カ月の取り組みを終えプロジェクトは既に淡路氏の手を離れた。

「CATIA導入の直後だったこともあり、今回は私にとってCATIA試用のモデルプロジェクトだったとも言えます。建築では複数部材の取り合いや納まりの調整が多く、CATIAで設計モデルから実際に製造に使われる図面まで一貫して作成するのは、非常に大きなチャレンジでした。私も十分使いきれず、CATIA本来のパフォーマンスを引き出しきれない面もありました。しかし、2D / 3Dを連動し膨大な量の図面を一気に生成できるCATIAはやはり魅力的です。今回の取り組みを通じて、CATIAは単なる3D CADではなく、設計・製造・施工をつなぐファサードエンジニアリングのプラットフォームとして大きな可能性を持っていると感じています。特に、形状変更や設計変更が頻繁に発生するフルオーダーのファサード実務において、設計情報を一元管理しながら製造図面まで一貫して展開できることは、今後の業務の進め方を大きく変える可能性があります。今後も大塚商会と協力しながら、CATIAの機能を最大限に生かせる領域を探り、その価値をさらに高めていきたいと考えています」(淡路氏)。